22話 まずは意志を確認しないとはじまらない
「悪いな、呼び出して」
目の前の二人に礼を言う。
今回、赤布旅団に対抗する意思表示をしてくれた高槻と萩浦、
「気にするな」
「俺らも放っておけなかったしな」
と言ってくれた。
口調は気さくで、仲間に接するように話しかけてくれる。
もともと、以前から助っ人で一緒に行動した事がある。
そのため面識はそれなりにある。
それでも親密な間柄という程では無いのだが、今回の一件で今まで以上の連帯感のようなものを感じてくれてるようだ。
「それで、本題に入りたいんだけど、二人とも本気でやるって事でいいんだな?」
「ああ、もちろん」
「腹はくくってる」
言葉に迷いはない。
「それは、それぞれの仲間も同じって事で大丈夫かな?」
「もちろん」
「みんな、『よくやってくれた』って言ってるよ」
「そいつは心強い」
怖じ気づいてる奴もいるとは思っていたが、そういう事なら頼もしい。
「それで、これからの事なんだが、結果をより確実なものにしたい。
だから小細工を一つしておこうと思う」
「なんだ?」
高槻が身を乗り出してくる。
「俺達だけでやっても確実に勝てるとは言い切れない。
返り討ちにあう可能性もある。
そこで、もっと大きな所を引っ張り出したい」
「大きなって…………他の一団をか?」
「そりゃあ、一緒にやってくれるならありがたいが」
そうしたいとは思ってるが、それが難しいのは彼等にも分かっている。
なんだかんだで赤布旅団は数が多い。
十五人というのはこの町で二番目の規模を誇ってる。
他の一団がおおよそ五人や六人というのとは訳が違う。
それに対抗するとなるとあと二つ三つの一団を加えねばならない。
しかし、下手に波風立てれば面倒に巻き込まれる。
高槻と萩浦の二組が立ち上がってるとはいえ、そこに同調する者はなかなかいない。
「誰を引き込むってんだ?」
「もう粗方声をかけ尽くしたんだぞ」
二人は、他に誰がいるんだと思った。
「鋼鉄支隊だ」
その答えに二人は目を丸くする。
「おいおい」
「いくらなんでも、そりゃ無理だろ」
突拍子もない提案に驚き呆れる。
「そりゃ、あそこが動いてくれれば楽勝だけどな」
「わざわざこんな事に首を突っ込むとは思えんぞ」
「だろうね」
ヨシフミもそう思う。
これは小さな町における小さな集団の起こしてる問題にすぎない。
同じ町にいる小規模な一団からすれば、いずれ自分達に面倒が及ぶかもという危惧はある。
しかし、鋼鉄支隊のような大手からすれば、多少騒ぎになってるとしても彼等に被害が及ぶとは考えない。
縄張り争いのような事が起こるとしても、わざわざ鋼鉄支隊に喧嘩をうる事はないからだ。
下手にちょっかいを出せば、二百人以上の冒険者を敵に回す事になる。
質においても上回る相手に喧嘩を売るような馬鹿は滅多にいない。
だからこそ、彼等は無視していられる。
というより、余計な面倒に自ら踏み込もうとは思わないだろう。
利益がないのだ。
もちろん、放置して下手に大規模になり、正面衝突してくるようになっったら厄介である。
だが、そうなってもいない連中にかまってる程暇でもない。
そういった考えは傍で見ていても何となく分かる。
だからこそ、ヨシフミは彼等に利点を提供しようと考えた。
「そこで、二人に相談なんだ。
これはそちらの仲間の賛成も必要だけど」
そう言って考えを二人に告げていく。
聞いた二人は再び驚く事になる。
「いや、それは……」
「さすがにどうかな」
予想外の提案だった。
二人はどうしたものかと考えてしまう。
だがヨシフミは言葉を続ける。
「これで上手くいくかは分からない。
でも、これくらいの条件をつけないと向こうものらないと思う」
それでも引っ張り込めるかは分からない。
だが、土産ももたずに協力を求めても門前払いで終わりになる。
それよりも多少は成功率をあげるにはこれしかなかった。
「そちらとしてもそれほど悪い話しじゃないとは思う。
嫌なら仕方ないけど」
「うーん」
「そいつは何ともな」
二人とも返事を濁した。
すぐには答えられない内容だから当然だろう。
彼等の一存だけで決められる内容ではない。
「でも、返事が欲しい。
明日、あちらさんに会う事になってる。
それまでに賛成か反対かを決めてほしいんだ」
「おいおい、それも随分急な話じゃないか」
「これから決めるって言っても……」
「時間がないんだ」
渋る、というか迷う二人の言葉をヨシフミは遮る。
「時間が経てば経つほど不利になる。
一気に片付けないとどうしようもなくなる。
急ぎすぎなのは分かるけど、それでも決めてほしい」
実際、今は少しでも早く事を進めたかった。
時間をかければ、勢いに乗ってる者達も冷静になる。
そうなった時に、得られる成果よりも受ける損害を気にするようになる。
損失を考慮するのは悪い事では無いが、今そうなってしまうと計画の全てが崩壊する。
だからこそ、急いで次の所に進みたかった。
鋼鉄支隊との会談に。
あわよくば、彼等を話しに引きずりこめるように。
そうなれば損得勘定など吹き飛ぶ。
成功率が圧倒的に高いとなれば、尻込みする要素がなくなる。
そのためにも、彼等の意志がぶれないうちに全てを決めてしまいたかった。
「頼む、決めてきてくれ」
まだ考えあぐねてる高槻と萩浦に、ヨシフミは重ねて要請した。
そして翌日。
「待ってましたよ」
ヨシフミはやってきた者にそう告げる。
相手はその言葉に苦笑する。
「はいはい、前置きはいいよ」
男はそういってヨシフミの前の席に座る。
「それで、わざわざ呼び出したんだから、それなりの話しなんだろうな」
「ええ、たぶん。
期待に添うほどではないかもしれないですが、悪い内容ではないと思います」
「ふーん」
訝しげにヨシフミをみる相手に、さすがに冷や汗がたれそうになる。
だが、ここで尻込みするわけにはいかない。
「その為にも、鋼鉄支隊の建部さんに協力をお願いしたい」
そう言ってこの町にいる鋼鉄支隊を率いる男と向かいあう。
建部ハルオミ。
二十人の仲間を率いる、レベル10の技術を持つ男であった。




