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「キモいおっさんとはなんだ!
あんたが、ぼ、僕に気がある風に誘ってくるから、それなりに対応してやっていたのに」
チーフ。いや、それは。確かに、勤務中の二人の様子は、見ようによってはイチャイチャしているように見えなくも無かったけど。
ぽかんとしている俺のすぐ前で、朝陽が深々とため息をついた。
「あのさあ、シュウトのおばさん。
うちの兄ちゃんが、金とか学歴で男を見るような女、本気で相手にするわけ無いだろ?
おばさん、カッコ悪いよ。うちの母ちゃんがこんなだったら、俺、泣けるよ。
こんな事、息子の同級生に言われて情けなくないの?
この事はさ、シュウトには言わないでおくから、もうこれっきりこういうのやめなよ」
朝陽のセリフに、シュウトのおばさん、おっと、南塚さんは、顔を真っ赤にして、怒りのせいか小刻みに震えて立っていたが、そのまま無言できびすを返し、バックヤードの方へ行ってしまった。
何とかその日のシフトをこなし、どっと疲れてアパートに戻ると、すでに薄暗く、街灯の点りはじめた近くの路地に朝陽が立っていた。気まずそうにちらりと俺を見てうな垂れる。
その様子に、思わず苦笑がもれた。
「どうした?」
「あの、にいちゃん、ごめん」
はあ、まったく。昼間のバイト先での事を気にして、俺の帰りを待っていたってわけか。
「昼間のことか?」
「うん。なんか、むかついちゃって、つい、言い過ぎたな、って」
うつむく朝陽の言葉の語尾がだんだんと小さく、聞き取れなくなっていった。
「確かに、な。
たとえ正論だったとしても、誰にでも事情はあるし、お前はまだ中学生だし、大人の事に口を出すのは、いい事ではないな。あの言い方は失礼過ぎたし。
でも、ま、実際、朝陽がはっきり言ってくれて助かったし」
「ほんと?」
「ああ、けど、もうやっちゃダメだぞ?
朝陽、飯はどうした?」
「まだ」
「これから用意するからすぐってわけにはいかないけど、うちで食っていくか?」
「いいの?」
「一人で食うのも味気ないしな。家には連絡しておけよ」
うん、と、笑顔になった朝陽と部屋に入り、率先して手伝ってもらって作った晩飯を食った。
ふと、朝陽の箸が止まった。
「ね、兄ちゃん、俺がいろいろ言っちゃったせいで、バイト先で、まずい事になりそう?」
う、それは。一瞬強張って、笑顔を見せ、
「大丈夫だって。きちんと仕事さえしていれば文句なんていわれないし。
兄ちゃん、これでもバイト先に友だち多いし」
と、言った。
それでもさらに不安そうにしている朝陽に、大丈夫だと言い聞かせた。半分は、自分自身に対しても。




