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と、それまで以上に、はっとするくらい外が明るくなり、窓ガラスをびりびりと振動させるほどの雷鳴が響いて、室内が真っ暗になった。また、停電だ。
ソファから身を起こし、手探りでコーヒーのカップをテーブルに置き、その動きのまま、テーブルの上に用意しておいた懐中電灯を手に取って点すと、弟がびくりと振り向き、不安そうに俺を見た。
「すぐ直るだろ。今日はもうテレビは終わりにして寝ようぜ」
俺の言葉に、弟は不満と不安が混ざったような顔で瑞穂を見たが、妹も俺の意見に全面同意といった風に頷いたので、諦めた様に頷いた。
電気は、すぐに復旧した。俺たちはいそいそと歯磨きを済ませてそれぞれの部屋に入り、布団に潜り込んだ。
棗球だけの薄暗闇になると、外の音が一層激しく部屋の中に響いた。いつもよりずっと早い就寝時間。と、ケータイがメールの着信を告げた。
「兄ちゃん、電話?」
「ん、メール、母さんからだ。やっぱり、今日は泊まって来る、ってさ」
「そう」
母親からのメールに、こっちはもう三人とも布団に入った、と、返信をうった。
こんな早い時間に、眠気はやって来ない。いっちや修はどうしているのだろう。嵐の中、何かを諦めるようにしんとした思いで、身動ぎ一つせずにいた。
ギシリ、という、二段ベッドの上段がたてる寝返りの軋みの後、弟が呼びかけてきた。
「兄ちゃん」
「ん、眠れないのか?」
「うん」
起き上がり、体重を移動する気配がする。ミシ、ミシ、というのは、はしごを降りる音だろう。床に降り立ち、ぐるりと回って俺のスペースにきた弟は、枕を抱えていた。
「下で寝ていい?」
無言で奥に詰めてやると、枕を押し込み、布団の中に潜り込んできた。
「せっまいなあ」
俺のワザトラシイ文句に、ふふ、と、楽しそうに笑ってくっ付いてくる。
シングルサイズの二段ベッドは、周りが木の柵に囲まれていて、身長180cmを超す俺は、足を延ばして寝る事すらきつい。狭いのは当たり前だ。
横を向けば、すぐ目の前に弟の顔がある。寝辛い事この上ないが、何かがあるのだろうと思って我慢した。
「母さんたち、大丈夫かな」
「ん、そりゃ、大丈夫に決まってんだろ。
さっき、ホテルにいるってメール来たばっかりだし」
「そうだよね」
「なんだよ、そんな事心配していたのか?」
ヒュオオ、と、風が鳴り、ずしん、と、建物にぶつかって揺らす。
ザア、バチバチ。一層激しさを増したらしい雨が窓に当たっている。騒がしい夜だ。




