第9話「孤高の戦士!デカマラシアンの沈黙!!」
デカマラマスター秘密基地。
「仲間が二人になったんだから、次は三人目だな!」
殿岡は朝から張り切っていた。
「目指せ、最強の戦隊! いつか全員で巨大ロボに乗って、必殺技を決めるんだ!」
岡部はコーヒーを飲みながら、冷静に告げた。
「その前に、昨日壊した訓練用の壁を直せ」
「まだ言ってるんですか!?」
「修理費の請求書を見てから言え!」
奥はモニターに映る映像を切り替えた。
「ところで、昨日の戦闘現場付近で気になる人物が目撃されている」
画面には、ビルの屋上に立つ一人の青年が映っていた。戦闘を遠くから眺め、誰にも話しかけずに立ち去った男だ。
マスターが映像を見つめる。
「……波多江か」
レッドが振り返った。
「知っているんですか、マスター!?」
「名前だけではない。あの男は、昔から一人で戦うことを選んできた」
ネイビーが腕を組む。
「へえ。相当な腕前なんですか?」
「腕前だけなら、若い戦士の中でも並外れている。だが……」
マスターは少し間を置いた。
「誰かと協力することを、ひどく嫌っている」
レッドは拳を握った。
「だったら、俺たちが仲間の良さを教えてあげればいいんですね!」
ネイビーが苦笑する。
「殿岡、そう簡単にいくかなあ」
「やってみなきゃ分かりません!」
マスターは小さく息を吐いた。
「……無理に引き入れようとするな。波多江には波多江の考えがある」
しかしレッドは、すでに映像の場所を確認していた。
「よし! 探しに行きましょう!」
「話を聞いていたか?」
「はい! 無理やりじゃなくて、話し合いです!」
「本当に分かっているのか……」
マスターのため息が基地に響いた。
そのころ、街の郊外にある廃工場では、肛門騎士団の怪人が作戦の準備を進めていた。
今回の怪人は、ケツアナキツネ。
鋭い爪と素早い動きを持ち、地面に偽の足跡を残して敵を翻弄する能力を備えている。
「ケケケッ! 今日こそデカマラどもをまとめて始末してやる!」
その様子を通信越しに眺めていたレーションは、淡々と告げた。
「今回の目標は、デカマラレッドとデカマラネイビーの分断です。二人が互いを助けようとすれば、その隙を突きなさい」
「了解!」
「なお、失敗した場合の言い訳は不要です。君たちの言い訳を聞く時間は、僕の人生には存在しませんので」
通信が切れた。
怪人は部下たちを見渡した。
「……あいつ、味方にも容赦ねえな」
「聞こえていますよ」
通信機からレーションの声が戻ってきた。
「ひっ! 申し訳ありません!」
「まったく。雑種のくせに、独り言まで一流のつもりですか」
通信が再び切れる。
怪人は肩を震わせた。
「絶対いつか、あいつにも化けて出てやる……!」
その日の午後。
レッドとネイビーは、波多江が目撃された廃工場付近を訪れていた。
「ここにいるはずなんだけどなあ……」
レッドが周囲を見回していると、背後から声がした。
「何の用だ」
振り返ると、そこには例の青年が立っていた。
無表情で、こちらを警戒するような目をしている。
レッドは笑顔で近づいた。
「あなたが波多江さんですか? 俺、殿岡っていいます! デカマラレッドです!」
「知っている」
「えっ、知ってるんですか!?」
「目立つからな」
ネイビーが思わず吹き出した。
「ははっ、まあ確かに!」
レッドは少し恥ずかしそうに頭をかいた。
「それで、今日はお願いがあって……。俺たちと一緒に戦ってくれませんか?」
波多江は即答した。
「断る」
「は、早い!」
「俺は一人で十分だ。足手まといはいらない」
ネイビーが穏やかに話しかける。
「まあまあ。仲間がいれば、助け合えることもあるだろ?」
「助け合い?」
波多江は冷たい視線を向けた。
「他人の判断を待つくらいなら、自分で動いたほうが早い。連携を気にして攻撃の機会を逃すくらいなら、一人で敵を倒す」
レッドは食い下がった。
「でも、一人では守れない人もいるはずです!」
「なら、守れる範囲で守ればいい」
波多江は背を向けた。
「俺は俺のやり方で戦う。お前たちも勝手にしろ」
「待ってください!」
レッドが追いかけようとした、その瞬間だった。
廃工場の壁が爆発した。
ドゴォォォン!!
「ケケケケッ! 見つけたぞ、デカマラども!」
ケツアナキツネが姿を現した。
「仲間探しとはご苦労なことだな! だが、仲良しごっこはここまでだ!」
波多江は怪人を一瞥した。
「……邪魔だ」
「なにぃ!?」
怪人が飛びかかる。
次の瞬間、波多江の姿が消えた。
ドガッ!!
一撃。
怪人は吹き飛び、工場の壁に叩きつけられた。
レッドは目を丸くした。
「はっや……!」
ネイビーも真剣な表情になった。
「なるほど。確かにすごいな」
波多江は右手の中指にはめたリングを光らせた。
両手の中指を立て、交差させる。
「デカマラチェンジ」
青白い光が彼を包み込んだ。
「蒼天の孤高なる裁き手……デカマラシアン」
その姿を見た怪人が後ずさった。
「お、お前は……!」
シアンは何も答えない。
ただ、静かに歩み寄った。
怪人は焦り、爪を振り回す。
「くそっ! ケツアナキツネ・乱爪乱舞!!」
無数の斬撃が襲いかかる。
しかしシアンは、ほとんど動かなかった。
攻撃が届く直前、最小限の動きでかわし、怪人の懐に入り込む。
ドゴッ!!
鋭い一撃が怪人の腹部に決まった。
「ぐおっ!?」
シアンは間髪入れずに敵の武器を弾き飛ばす。
レッドが思わず叫んだ。
「すごい! 俺たちも加勢を――」
「来るな」
シアンの声が響いた。
「俺一人で十分だ」
怪人は最後の力を振り絞って立ち上がった。
「ふ、ふざけるな! ならば、これでどうだ!」
ケツアナキツネが地面を叩くと、無数の偽の足跡が周囲に広がった。
「どれが本物か分かるまい! 全方向から襲ってやる!」
レッドは周囲を見回した。
「くそっ、どれが本体だ!?」
ネイビーも身構えた。
「波多江! 無理に一人で――」
その瞬間、シアンが静かに目を閉じた。
偽の足音が響き渡る。
だが、彼は動じない。
そして一瞬だけ、視線を右へ向けた。
次の瞬間。
シアンの姿が消えた。
「なっ――!?」
怪人の背後に現れたシアンが、巨大なモーニングスターを振り抜いた。
「蒼天無双・サイレントジャッジ」
言葉は、それだけだった。
轟音とともに怪人が吹き飛ぶ。
「ケツアナァァァァ!!」
怪人は爆発し、地面に倒れた。
だが、いつものように暗黒エネルギーが降り注ぎ、怪人は巨大化した。
「まだだ! 巨大化した俺に勝てると思うなぁぁぁ!」
巨大なケツアナキツネが廃工場を破壊し始めた。
レッドはすぐに叫んだ。
「デカライナー・1号、出撃!!」
ネイビーも海へ向かって手を掲げた。
「デカサブマリン、発進!!」
二機が出現し、巨大怪人に立ち向かう。
だが、怪人は素早い動きで二機を翻弄した。
「くそっ、動きが速すぎる!」
「殿岡、挟み込むぞ!」
「了解!」
二機が連携して攻撃を仕掛けるが、怪人は寸前でかわした。
そのとき、シアンが変身したまま巨大怪人を見上げた。
「……遅い」
彼はリングを掲げた。
遠くの空から、巨大なジェット機が轟音とともに飛来する。
「な、なんだあれ!?」
レッドが驚く。
シアンは淡々と告げた。
「デカジェット」
巨大な戦闘機は音速に近い速度で怪人の周囲を旋回し、敵の逃げ道を塞いだ。
「なにぃ!? 俺の動きが読まれているだと!?」
デカジェットが急降下し、怪人を地面へ押し戻す。
「今だ!」
ネイビーの声に合わせ、デカライナー・1号が正面から突撃した。
「デカライナー・フルスロットル!!」
続いて、デカサブマリンが敵の足元を崩す。
「蒼海轟砕・ネイビーノヴァ!!」
最後に、デカジェットが急旋回し、敵の頭部へ強烈な一撃を叩き込んだ。
巨大怪人は大爆発を起こした。
戦闘が終わると、シアンはデカジェットを帰還させ、変身を解いた。
レッドは目を輝かせて駆け寄った。
「すごいです、波多江さん! やっぱり俺たちと一緒に――」
「断る」
「まだ何も言ってないのに!?」
「言うことは分かっている」
波多江は背を向けた。
「俺は誰とも組まない。今日の戦闘も、お前たちを助けるためにやったわけじゃない」
ネイビーが尋ねた。
「じゃあ、どうして俺たちと同じ敵と戦ってるんだ?」
波多江は少しだけ足を止めた。
「……敵が気に入らない。それだけだ」
そして歩き出した。
レッドは追いかけようとしたが、ネイビーがそっと肩に手を置いた。
「今は追わなくていい」
「でも……」
「一緒に戦う気がない相手を、無理やり仲間にはできないさ」
ネイビーは遠ざかる背中を見つめた。
「それでも、あいつは悪い奴じゃないと思うけどな」
秘密基地に戻ったレッドたちは、マスターに戦闘の報告をした。
「波多江が動いたか……」
マスターは静かに目を閉じた。
「彼は誰よりも強い。しかし、誰よりも他人を遠ざけている」
レッドはうつむいた。
「俺、あの人の力になりたいです。でも、どうすればいいのか……」
マスターは答えた。
「焦るな。仲間とは、こちらの都合で作るものではない。相手が手を伸ばす時まで、待つことも必要だ」
レッドは深くうなずいた。
その夜、肛門騎士団の基地では、レーションがシアンの戦闘データを確認していた。
「……デカマラシアン。個人戦闘能力は極めて高い。だが、他者との協力を拒絶する傾向がある」
部下が尋ねる。
「レーション様、彼を仲間から引き離せば、さらに弱体化できるのでは?」
レーションは薄く笑った。
「君にしては、少しはまともなことを言いますね」
部下の顔がわずかに明るくなった。
しかし、レーションは続けた。
「もっとも、君の発想ではそこまでが限界でしょう。僕なら、彼の孤独そのものを武器にします」
彼はシアンの映像を拡大した。
「人間は、信頼する相手がいなければ裏切られる心配もない。そう考える者は、他人を信じることを恐れているだけです」
レーションは眼鏡を直した。
「……さて。その考えを、どこまで利用できるでしょうね」
一方、廃工場を離れた波多江は、夜の街を一人で歩いていた。
スマートフォンには、レッドたちが怪人を倒したニュースが流れている。
波多江は画面を消した。
「仲間……か」
彼は空を見上げた。
「俺には必要ない」
そう言いながらも、彼の足はほんの一瞬だけ止まった。
そして再び、誰もいない夜道へと消えていった。
第9話・完。
次回、第10話「疑惑の配信者!ヤッタカイの罠!!」
街中で怪しい配信が始まり、デカマラ戦隊への疑惑が広がっていく!
その裏で暗躍するヤッタカイ。そして、彼の配信を見つめるイエローの姿が……。
次回も、全開バリバリで行くぜ!!
読んでくれて感謝!!
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