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第25話

ホムラ視点です。

「この先にお勧めの武器屋があるんだ。最近は輸入物も多いが、そこの店では店長が鍛冶もしていてな、…。」

私の3歩前を歩く団長(たいちょう)はすこぶる機嫌がよさそうだ。



遠征から帰還して早1週間。

今日は7日間の休暇の1日目。


今までまとまったお休みってなかったから、街に来ることがほとんど出来なかった。

だから今日は欲しいものは全部買うつもり。


…だと言うのに、なぜか団長もついてきてしまった。

しかも、街の案内もしてやる、って。


頼んでない。

…いやそんなこと面と向かって言えないけどさ。

厚意で言ってくれてるのに断るのは失礼だしね。


実は下着とかも見に行こうと思ってたから、どうしようかなって思ってる。

また今度にしたいけど、少ない枚数で回してたから結構ぼろぼろなんだよね…。


さすがにそこまでついてきたりしないよね?



というか今日は武器は買いませんよー?




騎士団の厩舎から歩いてきて大体街のつくりはわかった。


王様がいる王宮を中心に、南北に町並みが広がっている。

学院や騎士団本部は、王宮から南西の方角にあって、貴族街がある北東とは逆の方角にある。

王宮から離れてるっていっても、歩いて20分とか30分とか結構近いんだけど。


そこから南に歩いていくといろんな店が軒を連ねる商店街に続く。

大通りは商店街で、その裏は住宅街になるんだけど、その大通りは街の入り口まで続くんだ。


ちなみに街をでて、さらに南へ歩いていくとバルテッタ王国最大の港町、ファブールがある。

このファブールはバルテッタの海の玄関口と呼ばれていて…何かを彷彿させる謳い文句だよね。

まあこれ以上は団長から聞かされた歴史の授業みたいになるからやめよう。




それで今はというと…。


「ちょ、ちょっとたいちょう!商店街はあっちですよ…っ!」

団長は私が着いてきているのを気にしながら、細い路地裏をずんずん進んでいく。


商店街の入り口辺りから横道に逸れて、人気の少ない路地を歩いていく。

団長の足取りは確かで、そのお店には行き慣れているようだった。


「こっちに俺の贔屓にしている店があるんだ。そこの店主が隣国の鍛冶師なんだがこれまたいい仕事をするんだよ!それでな、…。」

団長は非常に上機嫌である。なかなか行くことができないためか、久々に武器屋に行けるのが嬉しいらしい。



そして私の話は聞いていない。



「はぁ…。」

これは何を言っても無駄っぽいな…。

私は歩きながら肩を落とした。


少しの間付き合うしかないだろう。

帰り道を覚えておけば後から放っておいても大丈夫だろうし。


「そんなに気を落とすな。あともう少しで着くから。」

この人は私のテンションが下がっている理由がわかって言っているのだろうか。


「騎士団のでは…。」

3歩前を歩く団長が何か言ったが、私は聞こえなくて、え、と聞き返した。


「たいちょう?」

前を歩く団長の顔を覗き見ようとしたけど、身長差のせいでよく見えなかった。

でも、眉尻が下がっているように見えたのは勘違いではないと思う。


団長何か困ってる?

そう思って団長の顔(がある辺り)を見続けたが、それに対する返答はなかった。


「騎士団で使っているものではホムラの体格に合わないだろう。…だから新しい武器を依頼しておいたんだ。隣国“ヤマの国”で作っている武器。《カタナ》を。」



「!!」



「その《カタナ》は細く、剣先が歪曲している。細い分、今使っているものよりも軽い。もちろんそれ相応の重みはあるのだが。剣先が歪曲しているのは殺傷能力を高めるためだ。…ホムラにそのようなことをさせるつもりはないが。それで…」


よくよく見ると団長の頬が少し赤い気がする。話すスピードも速いし。

どうやら団長は困っているわけではなく、照れているようだ。

まあ確かにいつも部下に怒鳴ってばっかりだしね。


「軽いから扱いやすいだろう。ホムラは(パワー)より(スピード)だから、突剣(レイピア)より向いてると思ってな。」

突きには力が必要ということで、斬りを重視したカタナの方が使いやすいだろう、ということらしい。



それにしても、と思う。

ファンタジックな世界なのにカタナやヤマの国というのは、どういうことだろう。

横文字ばかりの名称が多いのに、この二つはやけに日本語っぽい。


「カタナ…ヤマの国…。」

カタナは聞いたことがある。

無論、刀のことだろう。説明も私がイメージしているものと同じみたいだし。


ヤマの国とは一体何を指しているのか。

単純に言えば山のことかもしれないが――。


「ホムラ?」

団長が振り向く。


「ヤマの国…ヤマ…。…ヤマト?もしかしたら…。」

もしかしたら、山、ではなく大和では??


「ホムラ?おい、着いたぞ。」

反応の薄さに痺れを切らしたのか、とうとう肩を揺さぶられた。


「あわわわ…ぁっ。」

力強すぎます。団長。

ぶんぶんと肩を揺さぶられ、顔を上げるとそこには…。

「…ふつー…てかなんか寂れてる?」


団長が連れてきてくれた刀鍛冶のお店は、裏路地の奥にある寂れた民家の一角にあった。

なんていうか裏攻略っていうのかな、特殊アイテムとかがおいてありそうな感じ?


隠し武器とかありそう。


「仕方ないだろ。量産品と違って一点ものっつったら、こういうところにあるもんだろ。」

何故か団長は拗ねたように言った。

私の感想がお気に召さなかったらしい。


男の人って変なところで子供みたいになるなぁ。

団長もそうだけど、あの魔術師団長のレイジさんも。


「そうなのかもしれませんけど…私武器買いに来たわけじゃないんですけど…。」

そもそもの話ですが。

お買い物メモとかもちゃんと用意したんですよー。


「入るぞ。」

そう言って団長は扉を押し開けた。


ってまた聞いてないし。




「来たか。」

時が止まったように静かな店内で、カウンターの奥から店長らしき男が顔を覗かせた。

なんていうか、まさに親方って感じ。


頭にはタオルというか鉢巻をまいて、オーバーオールの上半身だけ脱いだ状態のおじさんがいる。

なんだろ…親方とか親分とか呼ばれてそう。


店内は薄暗くて、埃をかぶったような臭いがする。ちょっと臭い。

ただ、武器屋なのに武器は見当たらなかった。


「ああ。できてるか?」


なんか会話が慣れてるって感じがする。

ツウの会話って感じ?すごー。


「使うのはその嬢ちゃんか。…今微調整してくるからちょっと待ってな。」

そう言うと、親方(勝手に命名)はどこかへ消えてしまった。


さっき目が合ってちょっと怖かった。

思わず団長の後ろに隠れると、それに気づいた団長に苦笑された。


「あの人は昔から無口らしいんだ。そんなに恐れなくても大丈夫だ。今もホムラの姿を見て、剣の調整をしてくれてるんだよ。」


そうかもしれないけど…目が危ない人だったよ!?

無口ってレベルじゃないよ!?


「顔立ちが違うせいかもしれないな。ヤマの国の人たちはバルテッタの人とは少々違うというし。」

団長はそういうと、カウンターに戻ってきた親方に向かって、ほら、と言った。


「…っ!!」

そう言われてよく見てみれば、彼の顔は日本人特有の彫りの浅いのっぺりとした顔立ちだった。


ヤマの国、カタナ、日本人特有の顔立ち。

その国には何か必ず手がかりがあると思った。

というか探してくれって言わんばかりの情報だなー。


「それに俺の父もヤマの国の出身なんだ。そのせいか髪の毛が黒いしな。…ホムラ?」

考え事のせいで続きは聞こえなかった。


こんなところに手がかりがあるとは思わなかったが、心が少し晴れた。

希望が見える。

なんかやる気出てきた。訓練がんばろ。



とりあえず今の目標は魔術を身につけることと、剣を振れるようになることだな。

うしっ。



とりあえず剣を持たせたかったのです。

やっぱりイメージは忍者。


…忍者は刀持ってなくね?はスルーの方向でお願いします。

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