第11話
すみません、ミスりました…。
なんにも考えず投稿してしまうもので…。
ホムラ視点です。
「ホムラ、5月10日の闘技大会だが、お前は出場免除になった。一応休暇扱いだが、大会は見に来いよ。」
団長に今朝、そう言われた。
ハツカ村で私が拾われてから、1ヶ月がたった。
どうして1ヶ月、と言い切れるのかというと、暦の数え方も地球のものと一緒だから。
1年12ヶ月365日で4年に1度366日。1日24時間、1時間60分、1分60秒。地球と全く一緒なのだ。
これは、部屋にあったカレンダーとアナログ時計で判明した。
私がハツカ村で団長たちに会ったのは4月3日で、今日は5月3日である。
元の世界でも私の記憶の最後が4月3日だったから、全く同じ日にここに来たということだと思う。
話は戻るが、闘技大会とは5月と11月に行われる、騎士団と併設の学校共同で行われる模擬試合だそう。
剣の腕に覚えがある者が、トーナメント形式で模擬試合を行い優勝者を決める。
国境警備のものは免除されるが、基本的に騎士団員は全員参加だ。
優勝者は食堂の食券1か月分…て学校行事じゃないんだから。
団長曰く、怠け防止らしい。
よくわからなかったけど、同じ騎士団の中で実力差があっては、貴族や一般市民ましてや王族からも信頼をいただけないから、だそうで。
みんなの向上意欲を刺激するのかな?
そして私は入団したばかりということで免除してもらえるらしい。
ただ、今後の参考になるから絶対見に来い、ということだ。
…うえー、めんどくさ。
サボっちゃ駄目かなぁ?
だって興味ないもん。
見てるくらいなら素振りの練習とかしてた方がいいと思う。
アルベルト団のみんなは応援に来て欲しい、って言ってたけど…。
ハズキさんだけ応援に行こうかな。
ハズキさんは私が入った遠征討伐のアルベルト団の中で唯一の女性――私が入団して女性2人になって嬉しいと言ってくれた――で、私が入団したときから優しくしてくれた女性だ。
長いストレートの黒髪をお持ちで、ポニテがよく似合う美人。めちゃくちゃ美しい。
褒めちぎっても足りません。
雛が親に懐くように、私はハズキさんに頼りっぱなしです。
美人で凛々しくて、繊細なように見えて豪快さも持ち合わせる…素敵過ぎます!!
そんな彼女が「ホムラが来たらがんばっちゃうなぁ」と言ったのです!
なのでハズキさんがでるとこだけ行きましょうかね。
この1ヶ月で異世界生活にも慣れてきたと思う。
慣れたと言ったって、自分ひとりでなんて生活できないし、騎士という職業がなければ住むところもままならない。
親が守ってくれるような世界などではなく、自分で自分を守らなきゃいけない。
でも、そのことに対して腹を括ることはできたのではないかと思う。
だが、それこそが、今の自分を苛んでいるといっていい。
今まで忙しすぎて、考える暇がほとんどなかったのに、生活に慣れて自分の時間ができるとどうしても考えてしまう。
“本当に家に帰ることができるのか”
言いようのない不安。
どうしようなく泣きたくなる。喚いて、叫んで、暴れたくなる。
1ヶ月も経てば、そんなことをしても帰れないのだと、理性がそれを押し留めるのだが。
一番初めに――あのハツカ村で――それができれば、今の苦しみはもう少し軽いものだったのかもしれない。
だがあのときは、夢であると、ただの幻であってほしい、とどこか希望を持っていたのだ。
そんな希望も魔獣に会ってなくなってしまったが。
だから、私には訓練が終わったあと、一人きりの部屋で声を押し殺して泣くしかない。
そして、たぶん団長はそれに気づいている。
私は実は泣いても、痕が顔に残りにくい。赤みはあっても腫れはひどくならないのだ。
それなのに、団長だけはどこか気遣いを感じる。泣き声を聞かれてるわけではない、と信じたい。
それだったら恥ずかしすぎる。
闘技大会に来るように言ったのは、これに対する気遣いも含まれているんじゃないだろうか。
一人で抱え込むな、みたいな。
でも、一人で観戦してたらそれこそ考え込んでしまいそうだ。
てか自分の弱さに将来への不安しか感じられないんじゃないかと思うんだけど…。
木刀を振りながら、そんなことを考えていた。
私がいるのは、訓練棟の隅のほう。屋外の訓練場で中央部に比べて木が生え茂る場所だ。
執務や会議をするための騎士団の厩舎の横に、訓練施設がある訓練棟がある。
なんだか学校の体育館みたいなんだけど、そこから外へも出られる。
少し広い広場があり、その奥は森が広がっている。
ちなみに騎士団の厩舎の反対側の隣には学校がある。
今まで、腕力がつくまで何も振らせてもらえなかったが、つい最近木刀を渡され、これで素振りするようにと団長に言われた。
ぶんぶんと振っていると、いきなり後ろから話しかけられた。
「まだ、きついか。」
唐突に真後ろから聞こえた声に驚き、振り向いた。
「!!…た、たいちょう…。驚かさないでくださいよ。」
団長は、私の後ろに立っており、腕を組み、木に背を預けていた。
驚愕の顔で振り向いた私に目を丸くした団長は、ふっと息を吐いた。
「すまない。驚かせるつもりじゃなかった。」
驚いた所為で余計に息が上がってしまった。
額の汗をぬぐい、ふう、と息を整える。
「どうかしたんですか?」
今日は、みんな休暇だったため一人で訓練している。
「いや…真に迫った顔をしていたからな。思いつめているんじゃないか?」
団長の顔は私を心配している顔だった。
そんなに思いつめていただろうか。
まぁ、思考がネガティブな方向になっていたことは否めない。
「すみません。なんだか…。」
なんだか、なんだろう。
いろいろ渦巻いていて何とも形容し難い。
不安、疑問、恐怖、少しだけ安堵。
考え込んでしまった私を団長はじっと見ていたがしばらくすると、私の頭にぽん、と手をのせた。
「無理にまとめる必要はない。話したいときに話せる分だけでいい。」
団長はこのぐるぐるした思いを解っているんだと思う。
単純に故郷を失くして悲しんでいる、ってだけじゃなくて、知らない場所で知らない人と過ごすストレスとか、将来の不安とか。
…もしかしたら異世界という不安定な世界で、押しつぶされそうになっていることすらわかっているのかもしれない。
普段はどんなときでも容赦なく「ホムラーーッ!!!」と怒鳴る団長だが、やはり部下思いのいい団長だ。
いい上司の鏡なんじゃないだろうか。
私はそんな団長の優しさに唇を噛み締めて、意思とは無関係に出てこようとする嗚咽を堪えるしかなかった。
団長は部下思いです。
かっこいい上司に憧れますね。




