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皇妃ドナテラと皇太后ゼノビアの追想

以前ドミオン公爵が話していた事件の聞き込みです。


それで、此度はどのような要件でしょうか?


………ああ、あの令嬢のことですか。


第一印象は、品の無い田舎娘という感じだったでしょうかね。殿下はそれが物珍しかったのか、興味本位から彼女に声をかけて次第に傾倒していきましたけど。


苦言はしなかったのか、ですか?


一度だけしましたね。『ほかの貴族から殿下の品位を疑われてしまいますよ』と。

そうしたら彼、沸騰した鍋のように怒鳴り散らしまして………やれ『彼女をイジメるな』だの『嫉妬は見苦しいぞ』など、私がした話からズレた点から反論していましたね。私どころか従者や護衛の方々の苦言にも耳を貸しませんでしたよ。

まあですが、当時はほうっておいても問題ないと判断されましたね。


お義母様………現皇太后様が黙っていないだろうと思いましたから。


当時のお義母様は宮廷内の謀略に関して辣腕を振るっていました。私の実家である公爵家との繋がりも、一重にお義母様の尽力あってのものでしたのよ。

陛下の問題行動は影を通して彼女の耳にも入っていましたし、当然のことながら王城に呼び出されて説教されたそうです。


だというのに……陛下は『冷たい婚約者よりも優しく思いやりのある彼女こそが自分の運命の人だ』と耳を貸さなかったのですよ。

当時の陛下が皇太子の地位にいられたのは、後ろ盾に私の実家があったからだというのを全く理解していませんでした。


それでどうなったか、ですか?


大した価値もない下級貴族が王太子を籠絡しようとしたのですから、お義母様が何もしないわけがないでしょう?

まず王家の影に彼女のことを調べさせたところ、その本性は裏表が激しいうえに重度の妄想癖を患っていたそうです。ますます利用価値がないと判断されたお義母様は、陛下にその醜い本性を見せましたの。そうしたら案の定、陛下は愛する令嬢がただの張りぼてだった事実に意気消沈してしまいましたわ。

さらにダメ押しとばかりに、彼女の実家である男爵家にお義母様直々に命令が下され、男爵は即座に娘を学園から退学させたそうですよ。

これで一安心したかと思ったのですが………まさか卒業パーティーで、彼女が乱入してくるとは思いもしませんでしたわ。


彼女から何か言われたか、ですか?

そうですね……もう30年も前ですから、細かいところまでは……。


あ、ですが。

確か彼女、私と二人きりになった時に『なんでしなりお通りに動かないのよ!?』とか『あんたテンセイシャでしょ!?』などと聞いたことのない言語を度々口にしていましたね。

それが何か?


………そうですか。

私の話は以上になります。

ではご機嫌よう。












侍女長、紅茶のおかわりをお願い。

………あら?


なんでティーカップが二つあるのかしら。
















ファレイノル元男爵令嬢についての報告を聞いた時、正直不快に思いましたね。

愚息がどこの馬の骨とも知らない令嬢に入れ込んでいるなど、公爵家を不快にさせるのが火を見るより明らかでしたから。


なのですぐさま愚息を呼び出して皇太子としての身の振り方を考えなさいと窘めましたが、あろうことか私に反抗しましてね。

『優しい』だの『運命』だのバカバカしいことばかりを口にして、皇族の婚約を無下にしていたのですよ。一体皇太子教育で何を学んできたのだか!

おまけにその娘、愚息以外の殿方にも言い寄っていたというのですから、その時は愚息のあまりの聞き分けのなさに、つい頬を扇子で叩いてしまったほどでしたの。


しかしそれでも愚息はあの愚女に入れ込むのを止めなかったので、そこまでいうならばと彼女がほかの令息と懇意にしているところを物陰から見せてやりましたの。


そうしたらあの子は青ざめて震えまして、数日ほど食事が喉を通さず学園を休むことになりました。

全く、上辺だけの態度しか見ないからそうなるのですよ。

以降は逆に愚女を憎悪するようになってしまいましたが、まあこれに関しては怪我の功名と思っておきましょう。


なのにあの娘は尚の事息子にしつこくつきまとってきまして、私は男爵を呼び出して娘の退学を命じました。

男爵は娘の愚行を今の今まで知らなかったようで、必死に謝罪をしていましたからそれ以上のお咎めはしませんでしたよ。




これで一安心かと思いましたが………まさか刃物を持ってパーティーに乱入するなど、誰が想像できたことでしょうか!

もしドナテラの肌に傷一つでもついていたらと思うと、心臓が止まりそうでしたよ。

あの愚女め、どこまでこの私を侮辱すれば気がすむのかしら!?


だから今後同じことをする輩が現れないようにと、他の貴族への見せしめとして火あぶりにしましたよ。

身の程知らずに相応しい最期でしたわ。



気になる言葉?



そうね……確か法定で私を指差しながら「名前もないもぶが勝手なことしないで」と宣っていましたね。

意味は理解できませんでしたが、私に対する侮辱であることはなんとなく察しました。



ああ全く、どんな教育を受ければああなるのやら…








よく『公爵家の後ろ盾を得るために必死の思いで結んだ婚約を台無しにした息子にブチギレる王妃』を見かけますけど、だったら息子がやらかす前に妨害なりなんなりしたらいいのではないかと思ってしまいます…

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