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ハッピーホラー  作者: 天使 かえで
第一章

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綺麗な思い出

 仕事でちょっと失敗した。


 仕事終わりの疲れた体で写真をみている。少し色褪せてはいるものの、写真の中の自分は今の自分とは違い、いい笑顔で笑っている。


 なぜ今、そんな昔の写真を引っ張り出して見ているかと言うと、最新のAIを使った画像加工アプリを試したかったからだ。


 読み込んだ写真をAIが画像処理を行なって鮮明な写真に戻してくれる。色褪せたり染みや傷があったりちぎれた部分があっても補修もしてくれる。


 幼少期に父に手を引かれ動物園を歩いている写真、高校生で無駄にワルぶってた写真、大学で出会った彼女と一緒に旅行に行ってる写真。今見ると全てが懐かしく思える。


 それらの写真をアプリに取り込み、画面の加工ボタンをタップする。数十秒ほど暗い画面に加工中の文字が表示されたあと、修復された画像が現れた。

 色は鮮やかさを取り戻し、もしかしたらもとの画像よりも詳細に写っているかと思ってしまうくらい細やかさのある画像だった。


 見るだけで当時の綺麗な思い出が自分をつつみ込んでくれるように思えた。


「すごいな、これ。そうそう、このとき楽しかったの思い出した」


 どの写真を見ても当時の気持ちを思い出せる、そんな素敵な画像に仕上げてくれている。


 私はこのアプリがとても気に入った。


 現実の暗いニュースや芸能人のどうでもいいスキャンダルなんて見るより心が洗われるようだった。


 画像を加工する際にどんな状況だったか文字入力しておくとAIが自動で判断して動画にもしてくれた。


 過去の自分を見て元気を取り戻せているような気がした。

 

 運動会で1位になる小学生の自分。合唱コンクールのステージの中央でソロパートを任されている自分。大学試験の合格発表を前に胴上げされている自分。結婚式で彼女と誓いのキスをしている自分。


 過去の自分はそれだけやってきたんじゃないか。何をしょぼくれている暇があるのかと鼓舞されているようだった。


 現実の部屋を見渡してみる。


 テーブルの上やその周りにはコンビニ弁当を食べた跡や空のペットボトルが散らかっている。シンクには使ったままの洗い物。ゴミ箱には溢れたゴミたち。


 みんな、みんな、みんな汚い。


 そうだ写真に撮ればいいんだよ。


 スマホを部屋に構えてパシャリ。そして画像加工してみる。


 ほら、俺の部屋ってこんなに綺麗。

 

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