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98 水泳リレー


 次の日は早朝訓練に神馬兄弟が参加してデッキの周りを走っていた。


 私が手を振ると神馬君のお兄様は、まるで忍者のようにバク転をしてその後から神馬君が側転をし出した。


 凄い!!!


 スポーツ万能!


 これはモテます。


 将来楽しみ!


 いろんな恋のドラマが見られそう。脳内妄想が爆発しそうだ。


 神馬君のお兄様はさわやかスポーツマン系だから女たらしにはならないと思うし、なって欲しくはないなぁ~~。


 そう言えば神馬君のお兄様は女の子達がうるさくて図書室に避難しているんだった。


 へへっ!今度取材させてもらおうかな、ふふふ……


 ランニングが終わってタオルと冷たい飲み物を持って行ってあげる。これからジムでトレーニングして午後はプールで泳ぐんだって。


 「龍一郎様もバク転とか出来るの」

 「やって欲しい?」


 私が頷くと、軽々とバク転をしてくれた。凄い。私は一生かかっても出来そうにない。”教えてあげようか”と笑いながら言う龍一郎君に全力で遠慮させてもらった。


 龍一郎君に言われると冗談には聞こえない。おまけにスパルタに違いない。身の危険を感じる。


 「愛梨花ちゃん、午後からプールだよ。泳げるの?」

 

 タオルで汗をふきながら神馬君のお兄様に聞かれると虎太郎君が口を開いた。


 「愛梨花ちゃんは泳げないよ。地上でも転ぶのに水中なんて沈むぞ」


 私が持ってきた蜂蜜入りアイスレモンティーを飲みながら失礼なことを言う。だけど事実だから言い返せない。


 ぐっ、悔しい。握りしめた拳に力が入った。


 「へぇ~~そうなの?」


 私が頷くとポンと手を私の頭に置いた。


 「じゃぁ、教えてあげるよ。駿も僕が教えたんだ」


 虎太郎君の隣にいた神馬君が、えっ!と言いながら顔を上げて、私に向かって首を振る。


 「アニキはオレをプールに突き落としただけじゃないか」


 あきれたようにお兄様に言うと、やめた方が良いよと目で合図を送ってきた。


 げっ、いきなりプールに突き落とされるのは勘弁して欲しい。


 それは龍一郎君に負けず劣らずスパルタです。ライオンが崖から子供を突き落とすのと変わらない気がする。


 戸惑いながら目線を空中にさまよわせているとポンポンと頭を叩かれた。


 「愛梨花ちゃんにはそんな事はしないよ」


 見上げれば優しく微笑まれて頬が熱くなった。神馬君のお兄様はクールで格好良くてそんな風に見つめられると、何だか恥ずかしい……


 「愛梨花ちゃんにはまだ無理だな。ところで、敬は泳ぎには自身があるんだな。後で僕と競争しよう」


 ポンと龍一郎君は神馬君のお兄様の肩に手を置く。


 珍しく龍一郎君が神馬君のお兄様に挑戦的だ。いつもは年下には一歩引いて優しいのに。


 何となくトゲトゲした雰囲気で居づらい。周りに目をやると、向こうでクルーと打ち合わせをしている高島が、何やら視線をこちらに投げてくる。何だろう?


 私と目が合うと、こちらに向かって来た。


 「高島、何かあったの?」


 私の問いに頷くと、龍一郎君に話しかける。


 「船のイベントで小学生の水泳リレーがあるみたいです。参加しないかと言われたのですが」

 「下のデッキのプールで行われるんだよね」


 龍一郎君はタオルを置くと少し考えるように腕を組んだ。


 「リレーは自由形?」


 神馬君のお兄様が聞く。


 「得意種目で良いそうです」


 龍一郎君が組んでいた腕をほどくとポンと私の頭に手を置いた。どうする?って事かな。


 「私見てみたい!応援するからねっ!」


 運動会で1番好きな種目はリレーだ。もちろん応援での話だけどね。皆のリレーも是非みたい。


 キラキラした目で龍一郎君の返答を待っていた。


 「敬、得意種目は?」

 「僕はどれでも大丈夫だ。駿は自由形かな」


 神馬君のお兄様が、ポンポンと神馬君の肩を叩く。神馬君は”ああ”と短く返答した。


 「虎太郎は平泳ぎだな」


 龍一郎君に言われて虎太郎君も頷いている。


 うわぁ~~何だか楽しみ!


 4人とも学校を代表するようなスポーツ選手だもの。でもチームに1年生が2人は不利になるのかな?


 負けてもドンマイ。男の子達は目を輝かせて打ち合わせをしていた。真剣な雰囲気が良いわ!


 1度に四組しかレースが出来なかったから午前中は予選で、午後14時からが本番となった。全部で八チームタイムを計って上位四チームが決勝進出となる。


 夏休みだから子供達もたくさん乗船していたんだね。皆の活躍が見られるのは、とても楽しみ。


 11時になり予選のため皆で下のデッキに集合した。男女混合のチームで殆どが小学校高学年だ。多分1年生は虎太郎君と神馬君だけみたいだ。1番小さい神馬君に声をかけた。


 「頑張ってね」


 神馬君はうさんくさそうに私を見る。”お前俺の実力を知らないな”なんて声が聞こえてきそうだ。


 「ああ」


 短く答えるとにやりと笑った神馬君。全然様になってないから、お子ちゃまは!


 仕方ないから親指を立ててサムアップしてあげた。


 スタートは神馬君、2番手が神馬君のお兄様、虎太郎君と続いてアンカーは龍一郎君だ。


 遊びとは言え皆、真剣でいつもとは違う雰囲気がカッコイイ。


 ピィッ~~~!!!


 スタートの笛が鳴り響いた。


 



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