77 花嫁修業みたい?
火曜日と金曜日は虎太郎君と龍一郎君が高島に空手を習っている。
その流れでその後はおやつを食べて夕飯をご一緒する。お兄様がお夕飯から合流するの。
これは今年から始まった事で私と虎太郎君が小学校に上がっても引き続き変わらなかった。
ただ夕飯の後にお兄様と龍一郎君の家庭教師が来てお勉強していたのに私と虎太郎君も加わることになった。
そのためにおやつの後直ぐにお勉強になってその後にお夕飯になったから時間が少し遅くなったの。
虎太郎君は空手でしっかり身体を動かした後だから、満腹になると眠くなっちゃうみたい。
お兄様達とのお勉強は、お兄様と少し仲良くなれるような気がして嬉しかった。それにしても龍一郎君の集中力は凄い。あっという間に勉強モードに切り替わって、お兄様も負けじとついていく。
家庭教師の先生は企業の研究員で博士号を持っている人物。メガネをかけたインテリ風な人だ。年齢は30代後半かな?
七三にきっちり分けた髪型が几帳面な感じのする男の人だった。もしかしたら神経質かも。モテないタイプだと見た。
きっと、彼女いないと思う。いつか相談に乗ってあげよう。
そんな不届きなことを考えていた私の前にプリントが配られた。最初は実力テストなんだって。
取りあえずの3教科。英、算、国だね。小学1年生の勉強は正直簡単なんだけれどこの先生の問題は意外と意地悪だった。性格出てるよね。
英語なのにフランス語で答えよなんて英語で聞いていたり、国語なのに百人一首が入っていて意味を聞いてきたり、算数なのに答えのない哲学的な問題って何?”にわとりが先かたまごが先か?”それは算数ですか?思わず答えにそう書いた。
この世界の小学生が侮れない。お兄様達こんなのをやっているんだろうかと正直ビビった。
ヤレヤレ……脳細胞を使ったからお腹がすいた。隣の虎太郎君はもうプリントを終えて先生に提出していた。もしや遅れを取った?あせる気持ちを押し隠して先生にプリントを提出した。
「あの、今日はもう終わりで良いでしょうか?」
私が言うとお兄様があきれたように顔を上げた。
「もう、飽きたのか?」
それには曖昧に笑う。初日ですからお兄様!
「初日だからね。お疲れ様。1年生はいいよ、終わりにして下さい」
神経質そうにプリントの角を揃えていた先生が顔を上げた。
私は頷くと虎太郎君と先にリビングへ行くために書斎を後にする。階段を降りたところで2階の部屋から食器をひっくり返す音がした。あの先生が何かひっくり返したみたいだ。
寺森がスタッフを呼んで2階へ駆け上がっていった。
ドジな先生だね。虎太郎君と顔を見合わせて笑った。
お兄様達とのお勉強は新鮮で楽しかったのだけど、何だか疲れちゃった。お勉強はまだ良いかな?やっぱり体力作りを優先したいな。お祖父様に相談しよう。そう思った1日だった。
数日後、我が家でお夕飯を食べていたお祖父様が私の習い事をどうするか聞いてきた。
今回は長期になるからとお母様がお父様も連れて海外に赴任?してしまったからお祖父様もちょくちょくお夕飯にいらっしゃる。
「お勉強以外で」
私が言うとお祖父様は苦笑いをされた。
「愛梨花は勉強が嫌いか?」
嫌いじゃないけれど、あの意地悪なテストをする先生とは仲良くなれそうな気がしない。
「疲れちゃうから、学校でもお勉強するから、もっと他のことをやりたいの」
私が言うとお祖父様は頷いた。
「そうか、ではそうしよう」
そうして決まった私の習い事は、お絵かき、ヨガ(東郷寺のお母様の所で)フラワーアレンジメント、お茶(西園寺のお母様の所で)ピアノ(雪二郎君龍一郎君と同じ先生)英語、フランス語になった。
何だかたくさんに見えるけれど、お絵かき、ヨガ、ピアノは東郷寺様のお宅で1日で終わってしまう、フラワーアレンジメントとお茶も1日で終わるからそんなに負担はなかった。その日はお夕飯までごちそうになっちゃうんだ。
花嫁修業みたいだ。ふふっ!
後から聞いた話だと、東郷寺のお母様と西園寺のお母様がお二人で色々考えて下さったらしい。自分の子じゃないのにありがたい事です。本当にお二人には感謝しかありません。
そして、龍一郎君のチェックが通りOKになったらしい。何故龍一郎君のチェックが入る?とは思ったけれど、きっと子供の意見も聞きたかったんだと思う。最終的にはお祖父様が決めたんだしね。
お勉強は嫌だと言ったのに外国語は入ってきてた。実はこれは得意なんだ。前世でも外国語は得意だったんだけど、何故か殆どわかるんだ。チートって奴なのかも知れない。
クルーズ船で外国人の会話を聞くまでは気が付かなかった。それから気をつけてみてみると、殆どの言葉が読めた。前世では習った事のない言葉までも……内緒だけどね!
”能ある鷹は爪を隠す”って言うから。
でも出来れば、運動神経が欲しかったなぁ~~~!!!
あの家庭教師の先生からは何故私が来ないのかしつこく聞かれたと虎太郎君が言っていた。やっぱりやめておいて良かった。
その時間を私だけ外国人の先生に語学を習っている。6カ国語を操るバイリンガルの先生だ。
ヘレンさんというその先生はご両親が外交官だったので幼い頃からいろんな国に行っていたとのことだ。ヘレン先生は何となく自分と同じ匂いをかぎ取ったみたいで色々な国の言葉で話しかけてきた。
”あなたに教えることはないわね”とまで言われてしまった。そこで何故か先生が今はまっている太極拳を色々な国の言葉で教えくれる事になった。これが中々楽しかった。身体にも良さそうだしね。そのうちにお祖父様にも教えてあげようと思った。
時々龍一郎君や虎太郎君が私達の部屋を覗いているなんて知らなかった。
何をやっているんだ?と思っていたらしい……




