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おせっかい令嬢はハッピーエンドを目指します!~転生先は現代に似た異世界!?~  作者: 星降る夜
第1章

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71 お祖父様


 愛梨花が狙われた。


 何故目を付けられた?


 国際問題も絡んでいるから調べるのには少し時間が掛るだろう。


 次男の嫁に連絡をすれば、”また愛梨花が何か問題でも起こしましたか”とこちらの話も聞かずにまくし立てた。あげくには”お祖父様が保護者になったのだからそちらにお任せします”とまで言われた。


 あれが本当に母親なのかとあきれるばかりだ。もうこちらからは連絡はしてやらん。


 東郷寺、東郷寺の息子、西園寺の息子の4人で警察を出た時には、日付が変わっていた。長い1日だった。東郷寺の息子も西園寺の息子も良く育っている。


 我が家の息子は言うもがな、ぼんくら揃いだ。母親の愛情が重要だったのではないかと最近は思う。


 特に次男が愛梨花に女性といるところを見せたのは許せなかった。あんな小さな子供にだ、信じられん。


 愛梨花はあれ以来次男を毛嫌いしていた。当然であろう。


 あんな小さな子に”他の女の人と仲良くした人は嫌!”とまで言われておった。己の愚行を顧みるのじゃな。


 皆で東郷寺の屋敷に戻れば、寝ている愛しい孫の姿を見つめ、過ぎ去った日々を思い出した。年を取ったのかも知れないな。


 学生時代の事だ。


 高校までは男子校だった。高校を卒業と同時にお見合いをして婚約が整った。


 最も婚約自体は家同士の取り決めで、すでに決まっていた。お見合いは形だけの顔合わせだ。本人には拒否権など無く、それは相手も一緒だった。


 私の妻となる女性は月光院家の支流となる家系で、向こうとしては念願の本家との縁組みだ。この機会を逃すはずも無くお相手はもちろんご家族揃って乗り気だ。


 私の事など置物とさしてかわらないのだろう。顔も性格もどうでも良いのだ。家柄さえあれば……


 そんな私の大学生活は、人生の中でたぶん唯一息抜きの出来る時間なんだろう。同い年の東郷寺、一つ下の西園寺、同じ様な家柄にあり直ぐに意気投合した。我が家と違うのは婚家にそこまでは制約がない事だろう。


 うらやましくもあったが、元々恋愛などには興味も無かった。皇族の流を引く財閥であり神事を司る家柄故に、学ばなければいけないことも多かったのだ。そんな事にうつつを抜かしているヒマは無い。そう思い込んでいた。


 大学も3年になればみなそれぞれ相手も見つけてデートなどを楽しんでいた。


 気位の高い婚約者とはソリが合わず先が思いやられた。結婚したら毎日顔を付き合わせなければならないと思うと憂鬱だ。せめて今は自由を楽しみたい。


 婚約者とは顔を合わせないまま月日は流れていく。


 彼女とは西園寺の婚約者の友人として初めて会った。可愛らしい人だと思った。小柄で優しく穏やかな性格をしていた。


 親しくなるのにそう時間はかからなかった。話してみればよく似た境遇だった。


 家同士の取り決めで、お互いにすでに婚約者がいた。婚約者とは気があわない事まで同じだ。


 彼女は末っ子だったけれど、兄弟が事故や病気で次々と亡くなり唯一の跡取りとして婿を取らなければならなかった。彼女の両親はもういい年なので早く結婚をするように言われていたのだ。


 大学へ来たのは最後の我が儘だと言っていた。


 お互いが跡取りでなければ良かったと、どれだけ思っただろう。恋愛なんて縁がないと思っていた自分がウソのようだった。


 人の心はわからないものだ。


 知り合って1年が過ぎた頃彼女の父が倒れた。帰らなければならないと言ってきた。わしは軽く考えていたが、彼女には予感があったのだろう。もう大学には戻れないと。わしらが会うことはもはや無いと。


 その日彼女と初めて結ばれた。有頂天になっていたわしは最後などとは思いもしなかった。


 一ヶ月後、彼女が結婚したと友人から聞いた。


 目の前が真っ暗になった。嘘だろう……


 ”またね”と笑って別れたことが昨日のようだ……


 奈落の底に落ちるとは、こう言う事かと思った。目の前の景色から色が抜けて、全てが白黒に見えた。音楽を聴けば全てが雑音にしか思えなかった。


 わかっていたはずだった。わかっていた事だ、彼女との未来はないと。


 それ以来彼女と会うことは無かった。風の噂も耳に入れないようにしていた。縁が無かった。どうにか出来る訳など無かった。


 時折、愛梨花を見ていると、ふと、彼女を思い出す。仕草や発想が似ていたりする。


 わしが、愛おしいと思っているからなのかも知れない。まだ覚えている自分がいた事に驚きを隠せなかった。


 昔のように胸の奥がうずいた。そんな感情が残っていたとは……


 結婚生活は不幸だった。


 家庭は安らぎの場では無かった。


 子供でも出来たら変わるかと思ったが変わらなかった。妻が2人目を産んだ後は寝室も別にした。もう義務は果たした。


 だから3人目など出来るはずは無い。たぶん酔っていたのだとは思う。ある1日だけ目が覚めると妻の部屋だった。妻は酔ったわしが無理矢理したのだと言い張った。何も覚えてはいなかった。


 しかし3人目を授かり女の子が生まれた。早産だった。2ヶ月も早く生まれたのに普通に元気な赤子であった。思えばこの時に気付くべきであった。


 妻は知らないが月光院家には秘密がある。多くあるのだがその一つに血の秘密があった。月光院家の血筋のみしか入れない部屋に、光る石。


 子供達は3歳になるとこの石に触れないとならない。この石を光らせる者だけが月光院家の直系と認識され秘密を共有出来る。


 娘が触っても石は光らなかった。この時にわしの子では無いと確信した。子供はもう3歳になっている。すでに月光院の籍に入っていた。どこかの誰かの子がだ。許される事ではなかった。


 妻はだんまりを決め込んでいたが、事は直ぐに調べがついた。父親となる人物は以前妻とは恋仲であった伊集院家の支流となる家の者だった。彼女もまた不幸な結婚生活ではあったのだ。


 ただ子供には罪が無い。妻の実家(伊集院家)とも話し合い子供が成人するまでは離れに暮らし、その子は妻の実家である伊集院家に嫁がせる事で月光院家とは縁を切ることになった。まだ幼い我が家の子供達から母親を取り上げるのは忍びなかった。


 慰謝料も養育費も無しだ。月光院家からは1円たりとも出さない。


 そう、愛梨花も3歳の時にその石に触っている。間違いなく月光院の血が流れていた。


 愛梨花の夢の話を聞いて、次男を疑ったりもした。母親が違う事はあり得るからだ。正確なことはまだ調査中だ。


 結果はどうあれ、愛梨花を守るためにもわしの籍に入れた。女にだらしない奴には任せられないからな。嫁が将来どう出るかも不安だ。見ていると息子の方ばかりに目をかけている。


 長男も次男も素直には育ったとは思う。ただ次男は女性にはコロッとだまされる。嫁もその手で上手く結婚したのだとは思う。いまだに苦労しているようだがな。


 次男は愛梨花に面白いくらい手の平の上で転がされている。これには笑えた。


 幼稚園児の手の平の上だぞ。


 はっはは……


 愛梨花と話すようになってからは笑いが増え、トラブルも増えた。


 おちおち隠居も出来ん。


 愛梨花を守るためには全力を尽くすつもりだ。


 幸いなことに、東郷寺も西園寺も協力をしてくれている。


 三家の協力など昔は考えられなかった。派閥が違うだのうるさい輩が多かったのだ。


 これも皆、愛梨花が築いてくれた縁なのだろうか。


 孫の世代は面白い。




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