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41 聞いてないんですけど!


 お祖父様達とのんびりと温泉三昧をして昨日家に帰ってきた。


 1週間も滞在しちゃった。


 すっかりやつれたお父様、何故かイライラしたお母様。相変わらず我関せずのお兄様に迎えられた。


 何だか我が家の方が気を遣うよ。


 お祖父様には何も言えないからイライラがこっちに来るんだなぁ~~ヤレヤレ。


 ちなみに東郷寺兄弟と虎太郎君とはすっかり仲良くなった。


 元々西園寺家と東郷寺家は交流があったみたいで、虎太郎君は東郷寺家の兄弟を呼び捨てにしていた。


 龍一郎君は私達よりずっと大人で背も高くてスラッとしている。このまま行けばモテモテの未来が待っている。いや、すでにそうかも。


 そんな龍一郎君の言葉や仕草に妙に恥ずかしくなってしまう時があるんだ。


 11歳の子供になんてことだ、32歳なんだからしっかりせねば。


 空気読まない虎太郎君の存在に助かっている。


 幼稚園児の面倒を見るのは大変だと思っていてごめんなさい。


 少し優しくしようと思う。


 虎太郎君と手をつなぐのも慣れてき。ただアメリカンなハグはそろそろ控えても良いんじゃないか?


 私は温泉とエステのおかげでお肌はつるつる。


 虎太郎君のお母様も東郷寺兄弟のお母様も美容には詳しくて”ずっとご一緒したい”と言ったら凄く喜んでくれました。


 お二人とも”娘がいないので嬉しいわ”と口をそろえておっしゃっていた。


 「愛梨花ちゃんはどんな人が好みかしら」


 なんて女子トークまで出てきて楽しかった。


 「強くて優しい人」


 5歳の私に好みを聞かれても答えに困ってしまうけど、恋バナは楽しい。


 お母様方の好みを知りたい。


 お二人とも絶対にモテモテだったんじゃないかと思うんだ!


 「あら、やっっぱり筋肉は大事よね」


 奥様方は顔を見合わせて頷いていらっしゃいました。


 次の日から男の子3人が早朝から高島にしごかれていた。浜辺の走り込みに、空手の形まで……


 むむむっ? 私のせいか???


 また女子会しましょうとお約束もしました。


 うちのお母様は来るかなぁ~


 東郷寺家、西園寺家、月光院家、日本を揺るがせるぐらいの三家が一緒になって地震の対処したら物事がスムーズに進んだみたい。


 これからは協力関係を築くために、毎年皆でお正月を過ごそうと約束をしてたみたいだ。


 お祖父様が言い出しっぺなんですけどね。上手くいくのかなぁ?


 大丈夫か、お父様。出遅れていますよ!


 そんなこんなで明日からはもう幼稚園が始まります。



       ♢     ♢     ♢



 「愛梨花ちゃん今年もよろしく。元気だった?」

 「あけましておめでとう。すみれちゃんこそ元気だった?少し日に焼けた?」

 「そうなの。ビーチでお姉ちゃん達とシュノーケリング教わったりしたんだ」

 「すみれちゃん泳げるの?凄いね」


 お教室に入るとすぐにすみれちゃんと冬休みトークで盛り上がった。

 

 さっそくお土産も交換。すみれちゃんからはコアラのキーホルダーをもらった。


 私が上げたのは龍神様の魔よけのキーホルダーすみれちゃんのは紫色にしたの。翔君のは緑色。


 「愛梨花ちゃんひさしぶり」


 虎太郎君が来るなりぎゅうっとハグして挨拶をする。すみれちゃんが驚いて固まった。


 「虎太郎君おはよう。挨拶は日本式にしてくれる?」


 虎太郎君を押しのけながら言うと隣で翔君が手で口を押さえて笑っている。


 「すみれちゃんあけましておめでとう」


 虎太郎君はそう言うとちゃんとお辞儀をした。よしよしそれでこそ我が日本だよ。


 「2人とも今年もよろしく。あの挨拶、愛梨花ちゃん限定だと思うよ」

 

 すれ違いざまに耳元でささやきながらハワイ土産のプルメリアのストラップをくれた。


 何ですと!聞き捨てならぬ。


 ちゃんと教育せねば。万が一小学校でもされたら大変。


 って言うか、すでに葵ちゃん始め数人の女の子達視線が飛んで来てるんですけど。


 由々しき事態だ!そんな事を考えていると、次々と子供達が虎太郎君と翔君に声をかけている。


 さすがセレブな幼稚園で年末年始は海外で過ごした子が多いみたいだ。


 お土産を渡しに来ているんだ。あっという間に人だかりが出来た。


 あら、君達、人気者なんですね、今さらだけど。


 誰も来ない私達の周り。教室の中に他にも静かに座っている子がチラホラいる。


 すみれちゃんと顔を見合わせた。すみれちゃんが肩をすくめている。


 ああ、いつもの光景なんだね。そして私は嫌われていたのかな、今は腫れ物扱い?


 卒園まで静かに過ごせればそれでいいかな?


 幼稚園の帰りにうちの車に虎太郎君が乗ってきた。高島も自然な動作で車のドアを開けている。どう言うこと?


 「あっ、これからよろしく」


 虎太郎君が高島に挨拶をする。


 「こちらこそ」


 高島はそれだけ言うと車を出した。


 「どうしてうちに来るの?」

 「高島先生に空手習う事になった」

 「高島に?先生って?」

 「一応師範持っているので。何故か西園寺の奥様から頼まれました」


 高島とバックミラーで目が合った。高島は苦笑していた。


 「あっ、龍一郎達も習うらしいよ」

 「東郷寺の奥様からも頼まれました」


 高島が間髪入れずに答える。


 「おやつ一緒に食べようね」


 虎太郎君が嬉しそうに私の手を握った。


 聞いていないんですけど!

 




 

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