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37 もしかしたら? 


 皆でいちごのクレープシュゼットをおやつにしました。穴だらけなのはバレなかったみたい。ふぅ~~


 お祖父様達と東郷寺様のご両親は温泉に入るそう。高島も東郷寺家の運転手さんと打ち合わせするみたいだ。


 お夕飯まではちょっとヒマにになっちゃった。


 子供達はお部屋で遊んでいてねと言われてもね。大人が一緒じゃない時はお外に出たらダメだって。色々あったから仕方ないか。


 龍一郎君と雪二郎君とお部屋のリビングルームでパズルをしながらお話をしていた。


 「愛梨花ちゃんはご両親が来なくて寂しくないの?」


 龍一郎君に聞かれた。


 あっ、そうだよね。普通そう思うよね。お祖父様達からは聞いていなかったんだ。


 もしかして私のために秘密にしていたのかな?


 「あのう、実は病気で色々忘れてしまったので両親のことも東郷寺様の音楽会の頃からしか記憶に無くて寂しいとか思った事が無いので……変ですよね」


 曖昧に笑うしかなかった。


 本当に覚えてないから寂しいとかないし、中身32歳なんでとは言えないよね。


 龍一郎君も雪二郎君も驚いたみたいでしまったというように、お互いの顔を見合わせていた。


 「変でごめんなさい」


 慌てて私が言うと


 「ごめん。無神経なことを聞いて」


 二人で頭を下げる。皆優しい。そんなことを言わせるつもりは無かった。


 「一緒にいてくれて凄く楽しいし嬉しいので、これからのことを忘れなければ良いなと思っています。それに以前は悪い子だったみたいで……」


 私が言い終わらないうちに龍一郎君に引き寄せられた。


 「本当にごめん。これからもよろしく」


 龍一郎君がぎゅうっとハグをしてくれた。龍一郎君が離れると、雪二郎君もぎゅうっとハグしてくれた。


 何だか恥ずかしい。


 「てへへ」


 笑ってごまかした。何となく気まずくなって私は持っていたノートにお絵かきを始めた。

 龍一郎君と雪二郎君はこちらを気にしながらパズルをしている。


 虎太郎君が早く来ないかな、何だか待ち遠しくなってきた。


 虎太郎君はこんな時もマイペースだから助かる。空気読まないから。


 飛行機はもう着いたんだろうか?


 ん?飛行場?お正月?


 このワードに何か引っかかる。何だったけ?


 はっ、とっして顔をあげた。思い出したお正月にハイジャックがあった。


 サアーッと血の気が引いた。まずい巻き込まれるかも……


 巻き込まれたら私のせいだ。写真送ったからだ。泣きたくなってきた。


 おまけにそれに手こずっている時にとどめの地震があったんだ。全てが後手に回って被害が大きくなった。

 月光院家と西園寺家の管轄地域だった。それで被害を受けて伊集院家がのし上がってきたはずだ。


 いつだった?たしか夜、お正月の夜で皆逃げ遅れたんだ。


 昨日は大丈夫だった。後、お正月って今日か明日?


 ハイジャックや地震が来るかはわからないけど、伊集院家が大きな顔をするのはイヤだ。昨日の事が頭をよぎった。


 こうしている場合じゃない。お祖父様に言わなきゃ。


 ノートをパンと閉じると龍一郎君と目が合った。


 「愛梨花ちゃん?顔真っ青だよ。どうしたの?」

 「虎太郎君は今どこ?電話できる?」

 「多分もう車でこちらに向かっているはずだよ」


 龍一郎君は携帯電話を取り出すと西園寺様に電話をしてくれた。


 「龍一郎です。今年もよろしくお願いいたします。愛梨花ちゃんが心配していて、今かわります」

 「もしもし愛梨花です。あけましておめでとうございます。あの今どこですか?」

 ”ああ愛梨花ちゃん。今年もよろしく。後1時間で着くよ。”

 ”父様、愛梨花ちゃんから電話なの?僕にかわってよ!”


 後ろの方から虎太郎君の声が聞こえる。良かった巻き込まれていなかった。そう言えばハイジャックは夜にさしかかっていたはず、段々と思い出してきた。とにかく時間が無いから虎太郎君の相手はしていられないよ。


 「おじさまちょっと待って下さい。かわらないで聞いてくれますか?」

 ”ん?どうしたんだい”

 「ハイジャック情報入ってますか?」

 ”おや愛梨花ちゃんはスパイごっこが好きなのかな?”

 「違います。龍一郎君にかわりますね」


 龍一郎君に電話を返した。


 おじさまじゃ話にならない。取りあえず虎太郎君が無事なのは確認できたから後はお祖父様に言わなきゃ。


 電話を切った龍一郎君がこちらに来て私の手を取った。


 「手が冷たい」

 「お祖父様の所に行かなきゃ」


 確かお風呂に行ってるはずだ。私は立ち上がると急いで部屋を出ようとした。


 「待って、一緒に行く。雪二郎、父様か母様が帰ってきたらお祖父様の所に行ったと伝えて」


 私の手を掴んだまま一緒に部屋を出る。龍一郎君の案内で大浴場まで来た。迷わなかった。ありがたい。躊躇なく男湯に飛び込んだ。


 丁度お風呂場から上がってきた一糸まとわぬお祖父様と遭遇。


 お祖父様は飛び込んできた私を見ると急いで腰にバスタオルを巻いた。


 そんな事に構ってはいられない。一大事なんだから。


 後ろで龍一郎君が苦笑している。


 「愛梨花!どうした!」

 「大変なの」


 そう言うと濡れるのも構わずに、お祖父様に飛びついた。


 東郷寺のお祖父様もお風呂場から出てきて私を見ると驚いて急いでバスタオルを腰に巻いた。


 お祖父様達乙女じゃないんだから気にしすぎです。私5歳だからね!


 「お祖父様ハイジャックがあって地震が来るの。ここじゃないけど牡蠣の養殖がダメになる。造船所も危ないから急いで避難させて」

 お祖父様は東郷寺様と顔を合わせた。


 「龍一郎、先に部屋に戻ってなさい」


 東郷寺のお祖父様が言うと龍一郎君は片手をあげて”後でね”と言って出ていった。


 龍一郎君がいなくなるとお祖父様が小声で聞いてきた。


 「夢で見たのか?」


 黙って頷いた。お祖父様達は着替えると別の部屋へ移動した。秘密の会合みたいだ。


 そこで知っている事を説明した。


 ハイジャックがあった、お正月の夜、20時25分に地震が来る。津波は来ないけど火事が起こる事。今日か明日かはわからないこと。場所は造船所があって牡蠣の養殖をしていて、月光院家と西園寺家がかかわっている地方である事。それだけ言うとお祖父様達は場所も大体わかったみたいだった。


 「今日だとしたらあまり時間がないな。西園寺家の方は頼めるか」


 東郷寺のお祖父様が頷いた。


 お祖父様は寺森に電話をすると次々と指示を出していく。


 東郷寺のお祖父様はこちらに向かってる虎太郎君のお父様と手分けして進めているみたいだ。


 ”信用のある先からの情報を得た”なんて言ってる。


 もしかして、私の事?


 「ハイジャックは19時到着の中東からの便かこれは政府に任せるしかないな」


 お祖父様は政府にもつてがあるみたいでハイジャックと地震の情報を渡していた。


 西園寺様は信じてくれなかった。しかたがないんだけど幼稚園児だからね。私がふくれているとお祖父様が私の頭を撫でた。


 地震起きないかもしれない。その可能性もある。良いのかな?私の言う事を鵜呑みにしてしまって。


 「お祖父様地震起きない事もあるかも」

 「心配しなくて良い。備えあれば憂いなし」


 東郷寺のお祖父様も頷いた。


 出来る事はしたんだ”人知を尽くして天命を待つ”のみ。


 「そろそろ虎太郎君が来るんじゃないかな?」


 東郷寺のお祖父様が時計を見た。


 「部屋に戻ろう」

 「虎太郎君が来たらパフェ食べるの」

 「そうだね。夕飯食べてからだよ」


 お祖父様が抱き上げてくれた。お祖父様のポカポカの体温が気持ちよかった。


 部屋に戻ると真っ先に龍一郎君が駆け寄ってきた。


 「愛梨花ちゃん大丈夫?顔色は少し良くなったね」


 そう言って私の頬を撫でるから何だか恥ずかしかった。


 小学生の男の子ってこんなに優しいのか?前世では騒がしいイメージしかなかった。教育のたまものなんだろうか?取りあえずお祖父様にくっついてごまかした。


 「父さん、西園寺が着いたから先に打ち合わせに行ってきます」


 奥の部屋から龍一郎君のお父様が携帯電話片手に持ちながら出ていらっしゃった。すれ違いざまに東郷寺のお祖父様に小声で何かを伝えていた。東郷寺のお祖父様の顔が険しくなってお祖父様に目配せをしている。


 ハイジャック情報が入ったんだ。


 東郷寺様は一連の事件から警察と連携を取っているから情報が早い。


 あ~~~いよいよ来るんだ。大丈夫なの?

 




 

 

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