25 デンジャラス!!!
龍一郎君に連れられて一緒にリフトにのった。
空の上を散歩しているみたいで楽しい。
手がかじかんで上手くバーをつかめなかったので、隣の龍一郎君が肩を抱き寄せて支えてくれた。
頂上まで行くと空気がリンと澄んで冷たかった。頬が痛い。
眼下に町が広がり、山々の木々は雪をかぶっていてアニメーションの世界みたいだ。
「綺麗……」
景色に見とれていると、龍一郎君や雪二郎君がそりを準備して大人達はスキーで先に行く。
あれよあれよという間に虎太郎君に手を引かれて2人でそりに乗っていた。
しまった!
龍一郎君が心配そうに声をかけてくる。
「まだ愛梨花ちゃんと2人は危ないよ!」
虎太郎君が言う事を聞くわけは無い。
「皆の後をついて行くから大丈夫だ」
雪二郎君と翔君が2人乗り、龍一郎君が1人乗り、私と虎太郎君だ。
雪二郎君のそりを先頭に、龍一郎君が私達のそりを挟んで最後になった。
そりのコースはなだらかに作られていて所々に休憩ができるようになっている。
基本リフトと平行にコースは走っているらしい。
そりはサンタさんが乗るソリを小さくしたような形で、前の座席にはハンドルもある。
虎太郎君がはしゃいでいる。大丈夫かなぁ。
虎太郎君の背にくっついて、いざ出発。
滑り台を滑っていくように身体が風を切っていく。
2人とも体重が軽いからそんなにスピードも出なくて前のそりと距離が開いていった。
しばらく行くと雪の吹きだまりに翔君達のそりが突っ込んで止まっていた。
あらら!大丈夫?
後ろから龍一郎君が止まって私達に止まるように叫んでる。
「虎太郎君、止まらないと」
「ブレーキあるのか?」
慌てたように虎太郎君が聞いてきた。
オイオイ、虎太郎君そこ聞いてなかったの?
「止まれないならなるべくゆっくりに行こうね、たぶん一本道だよ」
慌てさせないように私が言うと、虎太郎君も落ち着いたみたいで頷いた。
そのうちに止まれるだろうしね。
しかし私の考えが甘かった。いつの間にか林道の方に入ってしまっていたんだ。
どんどん見えなくなるリフト!
もしかして反対側に来ているんじゃ無い!
「虎太郎君止まって、ハンドルを横に向けて」
私が指示を出して、やっと止まったと思ったら林の中!
聞いてないんですけど!
「ここで待つか?」
虎太郎君が不安そうに周りを見渡している。
昼間とは言え林の中は薄暗い。
クマは冬眠中だよね?
「虎太郎君何か持っている?」
私のポケットの中から出てきたのはハンカチとティッシュペーパー、あめ玉3個。
虎太郎君はハンカチだけ。
あめ玉を2個虎太郎君に上げた。お姉さんだからね私。
虎太郎君は嬉しそうに口に入れた。
落ち着いたかな?迷ったときは動かないのが鉄則。
しかし、何も持っていないしここじゃ寒いよ。
少し向こうに煙が見えるから監視小屋でもあるかも知れない。
どこで道が分かれていたんだ?
昨夜降った新雪で道が分かれていたのに気がつかなかった。
来た道を振り返るがたぶんずっと上の方だ。
「向こうに煙が見えるから行ってみない?」
虎太郎君はそりから立ち上がると私の手を取った。
「立てるか?」
意外に優しい。紳士だね。立ち上がると2人でそりを脇に置いた。
ここからは平地になるし木々の間を行くからそりは邪魔になる。
2人で手をつなぎ、昨夜積もった雪にズボズボはまりながら、何とか進んでいく。
丸太小屋が見えてきた。
窓から明かりが漏れている。人がいるね。
助かった?
ヘンゼルとグレーテルを思い出す。
はっ?思考が5歳よりになってきている?
童話じゃ無いけど魔女が住んでいるとやばいから用心しないといけない。
虎太郎君の手を引っ張った。
「どうした?」
「悪い人だといけないから用心しないと」
薪たくさん置いてある窓の下まで行く。
カーテンが閉まっているから中の様子はわからない。
これからどうしようかと、虎太郎君と顔を見合わせたその時、雪を踏む車輪の音がした。
「誰か来るよ」
虎太郎君に言われて、積み上げられた薪の影に隠れた。そっと様子をうかがう。
車から降りてきた男を見て驚いた!
思わずヒッ!と悲鳴が出そうになって慌てて口を手で押さえた。
昨日のグレーのパーカー男!
虎太郎君が心配そうに顔を覗き込んで来る。
「愛梨花ちゃん?!」
虎太郎君の耳に口を寄せてささやく。
「あの人悪い人よ!ここは悪人のアジトだわ」
そこで虎太郎君の顔が輝いた。何故?
「スパイ映画みたいだな」
違うから、映画じゃ無いから。リアル!危険!
ダメだ!所詮、幼稚園児に何を言っても無駄だ。32歳、大人の私が考えないとね。
捕まえるか、通報する、そして速やかにここを離れる。これが理想なんだけど……
迷子なんだよね、私達!
しかも何も持っていないし……
皆で私達を探してくれているはず。
ソロソロ見つけてくれても良いんじゃ無い?
「ヘッ、ヘックション!!!」
隣で虎太郎君が大きなくしゃみをした。慌てて虎太郎君の口を両手で押さえた。
まっ、まずい!!!中まで聞こえた?
虎太郎君を連れて急いで家の脇に行く。
じゃっと音がしてカーテンが開いた。
窓が開くとこちらを見ている。
やばい、目が合った!?
一瞬のうちに考えを巡らせた。
逃げると怪しいし、懐に飛び込むしか無いか。
私は立ち上がると窓の男に声をかけてた。
グレーのパーカー男じゃない。細面のメガネだ。
「すみませんお手洗い借りられますか?」
「お前達どこから来たんだ」
私は来た方と反対側を指した。どうせわかりゃしない。
「向こう」
「迷子か?」
「違います、帰れるんで」
そう言うとお辞儀をして虎太郎君と手をつないだ。
「トイレは良いのか?」
「やっぱり、我慢できます」
「待って、オレのことは知ってるか?」
目を細めてわからない振りをした。
「幼稚園の先生ですか?」
虎太郎君が何も喋らないことを祈ってつないだ手にぎゅうっと力を入れた。
「あっ、こいつ前のことは覚えていないんだ」
「しっ!行こう」
虎太郎君の手を引っ張った。
玄関のドアが開いてグレーのパーカー男が出てきた。
「警察の無線で子供2人が迷子になったからここいら一帯捜索が入るらしい」
「こいつらか?」
「どうします?」
「まずいな顔を見られてるからな」
グレーのパーカー男が私と虎太郎の手を掴む。
「何するの?」
「警察に色々言われるとまずいんだ」
「迷子じゃ無いって言ってるでしょ!」
「なら、お迎えが来るまで中で待ってろ」
もみ合っては見たものの5歳ではジタバタするぐらいで、玄関に入る前にあめ玉とハンカチを落とすのがやっとだった。
いきなり乱暴に連れてこられたから、虎太郎君は状況が良く飲み込めていなくてぽかんとしている。
大丈夫お姉様が付いているから。
でもどうしよう。
いつも読んで頂いてありがとうございます。
週に2回は更新出来たらと思っています。
前の話のつたないところを時々直しています。主に改行とか誤字脱字になります。ご容赦下さい。
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