24 サンタさんからプレゼント?
クリスマスの日、子供達が、朝起きて1番にすることはクリスマスツリーの下のプレゼントを開ける事だ。
ちなみに私は、前世でも今世でも1度もしたことは無い。
何故知っているかと言えば映画で見たのだ。
ここは人の家だしプレゼントが来るわけも無く期待もせずにリビングルームのクリスマスツリーを見ていた。
龍一郎君達の家はどうなんだろう?そんな疑問があったからだ。
クリスマスツリーの下で雪二郎君が手招きしていた。
「メリークリスマス!」
私が言うと雪二郎君が笑った。
「クリスマスプレゼントが置いてあるよ!」
「私に?」
「サンタさん来たね」
そう言ってウインクされた。小学生なのにスマート!
見るとミルクティー色の大きなテディベアが置いてあった。
私宛?誰から?
「サンタさんは、私がここにいるって知らないと思うわ」
不思議に思ってテディベアの頭を撫でていると、龍一郎君がやって来てテディベアの首に巻いてあるピンク色のリボンを指した。
「愛梨花ちゃんへってカードが書いてある」
テディベアを抱き上げてカードを取る。確かに私の名前が書いてあった。
テディベアのフワフワの毛並みが頬に優しい。
前世ではぬいぐるみなんて縁が無かった。買って貰った覚えは無い。鞄に付けるマスコットぐらいだったな。
妹にハウスダストのアレルギーがあったから家にはそう言う物は無かった。
「気に入った?」
龍一郎君と雪二郎君が私の顔を色を伺っている。
そうか、これは2人からのプレゼント。嬉しい!テディベアをぎゅうっと抱きしめた。
「うん!嬉しい!」
そう言って笑うと2人も安心したように笑った。ありがとう。
「朝食を食べたら裏山で虎太郎君と翔君と待ち合わせているよ。そりをしたいんだって」
雪二郎君が自分宛のプレゼントを探しながら私に言う。サンタさんから何を貰ったのかな?
「午後はサプライズの打ち合わせしよう」
そう言いながら、龍一郎君は包みから双眼鏡を取り出した。おどけてこちらを見る。
近すぎるでしょ!
雪二郎君はプラネタリウムセットだ。夜一緒に見ようねだって!嬉しい!
2人はまだサンタさんを信じているのかな?
♢ ♢ ♢
「愛梨花ちゃん、サンタさんからプレゼント来た?」
向こうで虎太郎君と翔君が手を振りながら叫んでいる。
2人ともニット帽子にゴーグルをしてスキーヤーみたいないでたちだ。いっちょ前に。
東郷寺家の裏山は立派なスキー場だった。
ちゃんとリフトまである。プライベートスキー場って感じだ。
裏山って言うから、小さな丘をそりで滑るイメージだった私は来た事をかなり後悔している。
セレブをあなどるなってことね。
大きなため息を1つついた。
(帰りたい)
前世でも、たぶん今世も運動は苦手だ。スキーなんてやったことは無い。
そしてここには信頼できる親しい大人がいない。
虎太郎君の両親に翔太君のお父様。東郷寺兄弟だ。
お祖父様達はお留守番で高島は駐車場だ。そりはしない。
と言うことは、自力で何とかしないといけない。
(帰ろう)
そう思って反対側にむかって歩き出したら、龍一郎君が追いかけてきた。
「どうしたの?」
「用事を思い出したの」
振り向かずに答えると龍一郎君が膝をついて私の顔を覗き込んだ。
「スキー場は初めて?」
目をそらして頷く。
「リフトで上まで行ってリフトで帰ってこれるよ。頂上からは町が一望できるんだよ」
見晴らしが良いのか、それはみたい。何とかなるかな?
「滑らなくても良いの?」
私が聞くと龍一郎君は笑いながら私の頭をポンポンと叩いた。
「大丈夫だ」
「皆行ってしまわない?」
「一緒にいるよ」
向こうで虎太郎君と翔君が心配そうにこちらを伺っている。
ええい、大人なんだから怖くない。ぐっと奥歯をかみしめた。
仕方が無い行くとするか、私だけ帰ると雰囲気悪くなりそうだから。
「そり、たのしみ」
顔を上げて龍一郎君に言う。棒読みになったのは許して欲しい。きっと寒いからだ。
頬の筋肉がこわばっているのも寒いからだ。
「それは良かった」
龍一郎君は笑いをこらえながら手を引いてくれた。肩が震えてたぞ。
「愛梨花ちゃん、2人乗りのそりがあるから一緒に滑ろうよ」
虎太郎君が嬉しそうに手に持ったそりを見せてくれた。
曖昧に頷いた。出来れば翔君と乗ってくれ。
大人になると子供の頃みたいに冒険心が無くなるんだよ!
心の中で言い訳をする。




