ぼくはただのスライムです
夏休みで暇なのでなるべく投稿できるようにしたいと意気込んでいるポケモントレーナーです。
二話目は一時間後、三話目は二時間後に投稿したいと思います。
――人間がうらやましい。
木の葉のかげに隠れながら、ぼくは冒険者たちを眺めていた。
彼らは集団で固まって、今日はここで野営するのか、
テントを立てながら焚き火を灯す準備をしていた。
男女で役割分担をしている。体力に自負のある男子が薪をあつめ、器用な女子は設営するテントをせっせと組み立てている。
数時間後、彼らは完成した野営所で、笑いながら暖をかこっていた。
きょう討伐した大型モンスターの話。それで近くの街の住人にとても感謝された話。実はメンバーのなかの一人が、ギルドの誰かに片思いをしているという与太話。これから出発する目的地への抱負――さまざまな話に花を咲かせ、彼らは焚き火を消して眠りについた。
ぼくはそれを、ずっとながめていた。
☆
次の日も、ぼくは同じ場所にいた。
冒険者たちが出発するのを見送り、すこし寂しい気分になりながら、空を見上げた。澄んだ青い空の広がる快晴の日だった。でも、ぼくはそれを神に感謝する祈りを捧げることさえできない。
――だって、スライムなんだもの……。
くやしさをまぎらわせるために、青い素肌を葉っぱにこすりつけるように動く。木の上をぬるぬると上り、さっきの冒険者たちが視界に入った。この針葉樹は木の枝いっぽんいっぽんが尖っていて、普通の人間がじかに登ったらまちがいなく傷を負うだろう。しかしこのプルンとした弾力すら、今は恨めしく感じる。
スライムは人語をしゃべれない。
まあ、当然といえば当然なんだけども……。
――こうしてせっかく木の上にのぼっても、
彼らを呼び止める声を出すことはできない。
この晴天を、神に感謝することもできない。
基本的に、なにもできない。
おまけにモンスターのなかでは最弱の部類。ゴブリンやオークよりもぜんぜん弱い。せいぜいあるものといえば、衝撃を受け流すクッション性能に富んだところだろうか。
逆にいえば、その程度である。
「――」
言葉にならないため息がもれる。
なんなら、口さえなえから空気すら吐き出せない。
でもぼくはたまに人間が見せる『タメイキ』をまねして、
なんとなくぐったりしたようなポーズをとってみる。
――人間になりたい。
人のように、友だちがほしい。
人のように、話がしたい。
人のように、喜んでいたい。
強くありたい。
冒険がしたい。
剣を握って戦いたい。
諦めない心がほしい。
そして人のように、恋を知りたい。
ああ。今のぼくには、神さま。
何ひとつとってもできないのです。
「――お母さん、見てみて!」
その声が聞こえたのは、心のなかで神に祈ってからすぐのことだった。
ふわりとした風が、ぼくのゼラチン質の肌を撫ぜていく。
それを吹かせたのは空ではなく――ひとりの少女だった。
その少女はまだ幼い声ではしゃぎながら、小さなほうきにまたがって空を飛びまわっていた。魔女の子どもだろう。人に詳しいぼくは、すぐに分かった。この森の近くには、魔女や魔法使いがつどう小さな集落がある。そこの子どもたちが、たまにこうして魔法の練習に来るのだ。森ならどんな魔法が爆ぜても、気にするものはいない。おまけに危険なモンスターも周辺にはいない。
――この森は、昔から魔女のかっこうの遊び場なのだ。
……ん?
ていうか、待てよ?
「待ちなさい、ローラ」
はしゃいでいる女の子のあとを、母親らしい魔法使いが飛んでくる。蝶のように自由に飛び回る女の子は、「見てみて」とせわしなく――ぼくを指さしていた。




