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スキル【迷宮管理者】に目覚めた俺氏、スレ民たちとめちゃくちゃに発展させるw  作者: もかの


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第40話 屈強なオフ会なんてやだ!!

 ワイバーンの背中に乗り、ダンジョン科長とサボリニキがいない隙に管理室を抜け出した俺は、一直線にスレ民のもとに飛んでいった。


 くははは、さすがはゲームの世界でもめっちゃ厄介なワイバーン。

 あまりの速さで、ジェットコースター乗ってる時に変顔する奴みたいになってしまって、めっちゃくちゃ恥ずいぜ……っ!


 強風に耐えつつなんとか地上を見つめていると、気まぐれで作った広場に不自然に人だかりができているのを見つけた。


 ……いや、待て?

 俺のスレ民たちがあんなに多くいるわけなくないか?


 スレタイ『おぅおぇ』だぞ?


 うーむ…………違ったらどうしよ。

 陰キャ代表の俺としてはスレ民と会うだけでもめっちゃ緊張してるのに、その上本当に知らない人とかだったら死んじゃうが?


 ──と、俺がフェルマーの最終定理を解くような考察をしていると…………


「──……ょぉぉぉぉおおおおお!!! スレ主いいいいい!!」

「どわっはあああああ!? 誰だお前えええええええええええ!!!」


 ドンッッッ!!!


「いっっってええええええ!! なんでだよおおおおおおぉぉぉぉぉ……………──────」


 ドオォォォン……


 ありえんくらい上空にいるはずなのになんか下から飛んできた(多分)生命体を、俺はワイバーンに指示を出して地面に送り返した。


 ……ここまで勢いでやっちゃった。


 ナニカを殴り落とした地面を見ると、例の人だかりの少し隣にドラ〇ンボールの戦闘後のようなクレーターが出来ていた。

 なんなら、その中心に人らしきものが倒れているように見える。


 …………スゥ……


「……俺は──正しいッ!!」

「まったく正しくないが!?」

「きゃああああああ亡霊いいいいいい!!」


 ブオオオオォォォ!!!


「ぐぎゃあああああああ!!」

「なんなんだよお前えええええええ!!」


 ドンッッッ!!!

 ドオォォォン……


 この高さから落としたのに一瞬で帰ってきたナニカを、俺は「人間じゃない」と判断して、今度はファイアブレスで丸焦げにした後に地面に叩きつけた。


 結局ナニカが何だったか分からないが、人間の心を持ち合わせている俺は弔いをするために地上に降り立つ。


 先ほど確認したクレーターのあたりには砂埃が舞っていて、その中がどうなっているかはよく分からない。


「お、おいスレ主…………」


 すると、近くの人だかりから1人の男性が俺に話しかけてく…………


 待って?


「えっ、お前スレ民なんか?」

「うっそだろスレ主? 知らずにここまで来たのか?」

「いや最初はここかとおもったぞ? ただ、俺がこんなに人が集まるほど人気な訳ないじゃん?」

「違うな? お前が思っている以上に人気な?」

「そ、そんなプロポーズみたいな……っ!」

「このダンジョンメイキングってのは」

「スレ主がコンテンツに負けただと」


 この行間をしっかりと読んだいじり方……間違いねえ、本物のスレ民だ……!

 あっ、やっばぁ………………エンカ気持ちよ!


「い、いやそれよりスレ主……」

「なんだよ。俺がコンテンツに負けた話より大事な話があってたまるか!!」

「あいつバカニキ……」

「……えっ」


 スレ民──スレ民Aと仮称しよう──が震えながら指を指す先は、俺がナニカを叩きつけてできた砂埃の中であった。


 えぇー……いやいや……。


「アイツ人間じゃないぞ?」

「なんつー事言いだしてんだよお前!! 俺たちが思っても言わなかったことを……!!」

「おいちょっと一言余計かもだぞ?」


 さすがは俺のスレ民だぜ……性格まで似てる。

 …………じゃなくって!!


「……マジでバカニキなん?」

「あぁ……アイツ、『おう!? あれスレ主じゃね!? ちょっと会ってくるわ!』って言ったかと思えばぶっ飛んでいったんだ」

「やっぱり人間じゃないかも」

「……確かに? 俺の勘違いだったかもしれねぇ」


 おいスレ民Aもえげつなく酷くないか?


 とかなんとか話していると、砂埃の中からドンッという爆発したかのような音が聞こえてきた。

 そして砂埃が一気に晴れると、その中にあったクレーターの中心で、まるでル〇ィのように右拳を地面につけたヒト(?)がいた。


「スレ主いいいいいい!! 会いたかったぞ!!」

「俺はそこまでだったけど」

「えっ嘘だろ?」


 今の口ぶりからも一瞬で理解した。

 こいつがバカニキか……。


「すまねぇ。火で炙ってしまって」

「今の言い方だと地面に叩きつけたことは謝ってない気がするが、いいってことよ!! 火に炙られるのに耐える練習は何回もしたからな!」

「火に炙られるのに耐える練習は何回もしたからな? え、今なんて言った?」

「おかしいな。俺にはちゃんと言葉を反芻できてたように聞こえたけど……?」


 おかしいな。

 俺には人間が火に耐える訓練をするのがまるで必然とでも言いたげなように聞こえたんだけど?


 あっ……分かったわ。


「これだからバカは……」

「えっ、シンプルな罵倒マジで?」


 あと、そうだ。

 バカニキ、あまりにもドラ〇ンボールの住人すぎて忘れそうになっていたが、15歳の少年すぎてマジで可愛い。


 いやもう、孫。

 25歳ワイ、もう15歳を孫に感じる。

 いやこれほんとにほんとなんだって。


「お前かわいいな」

「待て待て待て、怖いってスレ主……っ! バカって言ったかと思えば今度はなんなんだよ……! ありがとなっ!!」


 ツッコミつつも素直に感謝を伝えるバカニキに、老若男女のスレ民たちは一同に涙した。

 これが若いってやつか…………


「──……スレ主いいいいい!!! 何勝手に抜き出してんだよおおおおおッ!!!」

「やっべバレた」


 楽しい楽しいオフ会をしていると、上空からサボリニキのお怒りの声が聞こえてきた。


 てかもう来たのか?

 え、北海道に行ってたんじゃなかったっけ?


「……あと、何爆発起こしてるんだよおおおお!! みんな驚いてるでしょうがああああああ!!!」

「……待て待て待て待て、なんでスレ主じゃなくて俺に魔法が飛んできてぐはああああああああ!!」


 風魔法で俺たちの上空まで飛んできたサボリニキは、クレーターの中にいる唯一の人を見つけ、「そんなことをするのはスレ主以外いない」と判断して風魔法のお仕置きを放ってきた。


 当然、そこにいたのはバカニキだったので、まぁ俺の身代わりになってくるたわけだが。


「すまんバカニキ」


 俺がそう言う。

 そして、空から降りてきて魔法を放つ相手を間違えたことに気がついたサボリニキも、


「ごめんねバカニキ」


 そう言った。


 これが、俺たち『おぅおぇ』民初の全員集合オフ会となった。


 ──しかし、こんなに楽しそうな状況でも、今は『日本全国スタンピード』の真っ只中。



「GAIYAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

「きゃああああああ!!!!」



 楽しいだけの時間は、そう長くは続かない。


「今の声……魔物!?」

「なんでダンジョンの中に……!?」


 どういうことだ……?


 明らかに俺の魔物たちじゃない。

 ということは……外から入ってきたのか?

 まさか、日本全国に設置した入り口を遡って。


「バカニキ」

「おうよ。サボリニキ、俺はいつでもいいぜ」

「僕のスピードについてこられるかな?」


 サボリニキとバカニキが短く通話すると、ドンッという衝撃が発生し、次の瞬間には2人の姿は無かった。


 ダンジョン科長からボソッと聞いた、サボリニキが実はめちゃくちゃ強いという話。

 そして、冒険者専門学校の最強すぎた異端児。


「……めっちゃ緊急事態ではあるんだけど、なんか安心するな」


 ひとまず魔物の討伐を2人に任せた俺は、『無名のダンジョン』の2次元マップを開く。


「「「おぉ…………」」」

「やめて? そんな初心者みたいな反応するの」


 生の管理者ボード見たからって、そんな反応されると恥ずかしくなっちゃうじゃん。


 ともかく。

 サブメニューを開き、敵対心を持っている者の位置を赤い点で表示するように変更する。


 すると、マップの数カ所が一気に赤く染まった。

 そこをこれまでに学んだ『とにかく触って確かめろ』精神でタップしてみると、侵入経路が表示された。



──────────


侵入経路

大阪府大阪市天王寺区

座標(34.662856,135.518944)


──────────



「あっ! 私が出入り口セットしたのも天王寺区でしたよ!」


 管理者ボードをスレ民に見せながらいじっていると、1人の女性が名乗り出てきてくれる。


「敬語女性だと?」

「スレ主ちょっと黙っててください」

「あ、はい」

「詳しい場所とか分かんないし、そもそも座標を読み取れないんで合ってるかは分かりませんが、たぶん出入り口を使ってきたんでしょうね……」


 やっべ、女さんにも俺の扱い方が知られている。

 ……この言い方するとちょっと興奮してきたな。


「しかし、そうなるとかなり厄介だな……」


 ダンジョンの出入り口は封鎖することができない。

 もし封鎖すれば、今地上でスタンピードの鎮圧をしてくれている冒険者たちの避難先、回復先がなくなってしまい、逆に中からの援護ができなくなってしまう。


 つまり、これはもう速攻で対処していくしかないってことになるな……。


 しかしそうなると、現状『無名のダンジョン』内で応戦することができるバカニキとサボリニキ、あとは帰ってくればダンジョン科長だけという絶望的状況になってしまうかもしれない。


 ……いや、最強の3人ではあるんだけど、持久戦的な意味で絶望的かもしれない。


 とすれば、あの()()がうまく進まなくなってしまうな…………。


 突如として訪れた最大の難関に俺が頭を悩ませている────と。


「やれやれ……俺たちが力を貸すときが来たようだな」


 スレ民Aがおもむろに伸びをしながらそう言った。

 そう言われたら……ちょっと……


「いや別に……」

「あ、スレ主ここ強がりポイントじゃない」

「えっ」

「お前会話を進ませない天才だろ」

「そんな褒めんなよ」

「貶してんだよ」

「なら『褒めてねーよ』でいいじゃん……」

「コホンッッッ!!!」


 スレ民Aが大きな咳払いで会話を終わらせる。

 ごめんて。


「俺たち、サボリニキたちと違って何の役にも立ててねーじゃん?」

「いや、そんなことないけど……」

「えっ……しゅき」

「は? きっも」

「俺そろそろ切れてもいいんだと思うんだけど」


 やはりスレ民。

 リアルでも相性が良すぎるぜ。


「まぁだから、俺たちもちょっと本気を出す頃かなって」

「何ができるというのだ、その間合いから!」


 俺の渾身のボケを無視して、スレ民たちは懐から一枚のカードを取り出した。

 金の者もいれば銀の者もいる。


 ……って!


「冒険者証明証じゃねえか!? は? お前ら強すぎね!?」


 冒険者証明証はその色で強さが分かる。

 白金、金、銀…………の順に強い。


 白金は世界でもほんの一握りしかおらず、金でもかなりの上位冒険者。


「……え、何お前らこっわ」

「そもそもな? こんな辺境のスレに来るやつなんか、普通のダンジョンに飽きた奴らなんよ」

「やべぇ、納得いく答えを出すなよ」

「そんなことある?」


 ともかく、これで魔物問題は余裕で解決ということになる。

 ……屈強なオフ会なんてやだなんだけど、この際仕方ない……のか?


 あとは……『日本全国スタンピード』の主犯を見つけるだけだ。




 一方その頃、ケンヤはというと。


「……暇である」


 めちゃくちゃに暇していた。


 というのも、サボリニキが感情のまま適当に荒らしですぐに去っていったことで、新しい魔物たちからは「あいつが最強の魔法使いなのか……?」と恐れられ、全く攻められないからだ。


「『無名のダンジョン』で頑張ってもらってるのに、なんか俺だけ申し訳無いな……」


『無名のダンジョン』の中ではめちゃくちゃオフ会していたことなど知らないケンヤは、申し訳なさそうに頭を抱えていたのだった。

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