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孤独な義弟を癒した私に幸せが待っていました  作者: 深山心春


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21 心を込めて

 ロゼはひとり、ソラリスの服を仕立てていた。一針一針心を込めて縫っていく。

 時刻はもう日付を回っている。それでもロゼは手を止めようとはしなかった。

 ソラリスがレアルに行ってしまう日はもうすぐ近づいていて、少しでも早く仕上げたかったのだ。

「……痛」

 急ぐあまり指を針で刺してしまって、ロゼはため息をつく。見れば指の腹に、赤く血が膨らんで滲んでいる。人差し指を唇にあてがった。少しじんじんと痺れている。

 その間に襟周りの刺繍はどうしようか、と考える。刺繍の本を見て、パターンをいくつか見た。

あまり豪奢にはせず、すっきりとしたデザインにしようと思う。色は何色にしようか、と考える。

 青? 黄色? それとも、ソラリスの瞳に併せて紫にしようか。いい考えだと思って、ロゼは紫の刺繍糸があるかを調べる。襟元と袖周りならなんとかなりそうな位の刺繍糸があってほっとする。では、1枚布は何色にしよう……そこまで考えて、ロゼはため息をついた。

 ソラリスの出立は急速に決まり、時間もあまり残されていない。毎日、ソラリスに持たせたいものなどで荷造りを手伝っているが、ソラリスが本当にいなくなってしまうという実感は、少しずつ少しずつ、ロゼの心を侵食して行った。

 考えると寂しいから、ロゼは荷造りや着るものを仕立てる。心が紛れるから。

 指を見ればもう血は止まっていた。

 ロゼはまた黙々と手を動かして、ソラリスの為の衣装をつくる。

 喜んてくれたら良いな、時々は服を見て思い出してくれたら良いな。元気でいてくれますように、寂しい思いなどしませんように。嫌な思いなどしませんように。

 最後は祈りに近い気持ちで、心を込めて縫い続けた。

 やがて空が白み始めているのにロゼは気づいた。小鳥の囀りも微かに聞こえてくる。

 もう、こんな時間なのかとびっくりする。

 疲労は確かに重くたまっていて、少しだけ寝ようと、針と糸を片付けると、ロゼはそのままそこに横になった。寝台へ行くのも億劫だった。

 やがてすぐに、すやすやと寝息が聞こえてくる。

 ロゼは、心身ともに疲弊していた。

     



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