第3話 魔法少女、些天意。
「魔法少女なのか?」
不敵な笑みを浮かべ、些天意は瞼を閉じた。
「ふっふっふ! ならばとくと見るがいい! この些天意様のまじ~っくぱぅわぁ~を!」
「・・・」
俺は半口あけた。
些天意は目を開け、口をとがらせる。
「ちょっち反応薄くない? ちゃんとついてきてくれないと、あたしがただの変な人でおわっちゃうんですけど~」
このテンションについてこいってことか・・・?
なかなか酷なことを言ってくれる。
だが、女の子一人に恥をかかすってのは男が廃るってもんだ。
「すまん。目覚めたばかりなのに、なんでこんなにテンション高いんだろうって呆気にとられただけだ。次はまかせろ!」
「ならいくわよ! むぁづぃくぁるぅ~」
両手を天にのばして、些天意は瞼を閉じた。
俺は体を震わせ、些天意を凝視する。
「な、なにがはじまるっていうんだ! こやつ、まさかこの世界を滅亡させる気なのか!」
テーブルにいる|アーティフィカルインテリジェンス《AI》美少女メイドロボのノアは、湯飲みに入ったハイオクをすすっていた。
「マスターもノリがいいやら、人がいいやら、はぁ」
テレビからこっちに目を向けて、ノアは溜息をついた。
「恐れおののくがいいわ! 平和でゆだったゆとりどもよ! ふっはっはっは!」
些天意が瞼を開ける。
その双眸には朱の六亡星が輝いていた。
「なんだ! その眼!」
俺は目を見開いて、些天意の眼を見る。
ノアが瞬間で俺に駆けより、かばうよう俺の前に立った。
「ノア!」
「マスター、さがってください!」
些天意は朱の六亡星を宿す双眸を、チラッとテーブルに目を向けた後、両手を前につきだす。
「がははは~! 地球を爆発させてやる~。ふっはっはっは!」
些天意の前方に、握りこぶしサイズの電気が発生する。
電気の塊から守るように、俺はノアに覆いかぶさった。
「マスター!」
必死な声を出して、ノアは俺をどけようとするが、俺はノアを動けないよう強く抱きしめる。
「どっかーん!」
俺は目をかたくつむり、ノアの体をさらに力強く抱きしめた。
ことん。
俺の背後で、陶器が落ちる音がした。
「・・・」
「・・・」
俺は固唾を飲んだ。
部屋には些天意の腹からだした高笑いがするだけで、何かが壊れた音は聞こえてこない。
俺はノアに覆いかぶさったまま、動かなかった。
「あ~もう! おれくんよ。無危害だし、こっちを見ちくりや」
俺は体を起し、些天意を見た。
「さっきのはなんだったんだ・・・」
「ぱんぱかぱーん!」
些天意の眼から、朱の六亡星はなくなっていた。
満面の笑顔をうかべ、些天意は湯飲みをガシッとにぎっている。
「その湯飲みは私のです」
「ノア、湯飲みをこっちに持ってきたのか?」
「否定。湯飲みはテーブルに置いてきました」
「ふっはっはっは! テーブルを見るがいい!」
湯飲みを持った些天意は、ビシッとテーブルを指さした。
俺とノアは振りかえって、テーブルを見る。
「・・・ノアの湯飲みが置いてある」
「どうじゃ~すごいじゃろ~! ふっはっはっは!」
腰に手を当てて、些天意は笑っている。
湯飲みが二つになったっていうのか?
「些天意、これはどうなってんだ?」
「見てのとおり~コップを~増やしたんだよ~。すごいっしょ~?」
「いや、でも、こんなことって・・・」
「疑うならさわって調べてみんさいよー」
口をとがらせた些天意は瞼を閉じ、目を開いた。
その双眸には朱の六亡星が輝いている。
「な!」
「しらべてみんろ~」
些天意が湯飲みを離すと、湯飲みはホバリングして、ゆっくりと俺に近づいてくる。まるでオバケが湯飲みを動かしているようだ。
俺は宙に浮いた湯飲みを取った。
「どうよ~あんちゃん。そのコップにおかしなとこあっかいの~」
「さわった感じ、ノアがいつも使っている湯飲みだ・・・」
湯飲みを色々な角度から見てみる。
「とーころがどっこい!」
些天意が大げさな身振りで、指を鳴らす!
その瞬間、俺の手の中にあった湯飲みは電気をはじけさせて、消えた。
手もとには湯飲みの破片ひとつない。
文字通り、湯飲みは、影も形も無くなっていた。
俺は些天意をおそるおそる見る。
「・・・お前はさっきから何をやっているんだ?」
双眸に朱の六亡星を宿した女は、不敵に笑う。
「ただの、魔法よ」




