第7話 勇者のピンチ。
俺は逃げた。
この勇者と一緒にいたら、何かの拍子で、うっかり倒しかねない。
「逃げるな!」
そんなに弱くて、よく言うよ。
しばらく時間を潰して、また、勇者がいる村にやって来た。
木に隠れて、村の様子を伺う。
すると、勇者が村人たちに囲まれていた。
「村がめちゃくちゃになったのは、勇者が弱いせいだ!」
「もっと強くなるために、厳しい修行でもしろ!」
「壊れた建物はどうしてくれるの!?」
勇者が村人たちから責られていた。
村人たちは殺気立っていて、手には凶器が持たれている。
「・・・・・・」
勇者は黙って、無抵抗に立っているだけだ。
ガン。
勇者の頭に石が当たる。
額から血が流れた。
しかし、勇者は黙ったまま、無抵抗に立っている。
じりじりと、村人たちが凶器を手に、勇者に近づいていく。
「・・・マジか」
勇者が村人たちに殺されそうになっていた。
「死んで償ええええうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃうひゃ!!!」
村人の1人が、勇者に死神みたいな大きなカマを振り下ろした。
あーもう!
ガキン。
「え?」
勇者は大きく目を見開く。
俺は超高速移動し、勇者に振り下ろされる死神みたいな大きなカマを腕で受けた。
腕は切れてない。
だって、防御力∞だから。
勘弁してくれよ。
内心ため息をついていると、村人がしりもちをついて、俺を見ていた。
「にゃ、何者だ! どこから現れた!?」
俺は無視して、勇者を見た。
「ケガは大丈夫か?」
「・・・あ、ああ」
「なら、良い」
村人たちが騒ぎだす。
「なぜ、村を襲ったヤツが勇者を庇うんだ!?」
「まさか、アンタたち、グルだったの!?」
勇者は焦った声を出す。
「ち、違う! 私たちはグルでは無い!」
「どうだか!」
「信じられないね!」
村人たちは、勇者を信じようとしない。
俺は素朴な疑問を感じた。
「こんなヤツら、救う価値あるの?」
「当たり前だッ!!!」
勇者は俺の前に出て、大きな声を出して、村人たちを説得しようとしている。
でも、村人たちは、勇者の話しを聞こうとしない。
みんな、俺のことはいない存在として、ガミガミ言い合っている。
村人たちは、どんどんヒートアップしてきて、また、手に持った凶器で勇者を攻撃しようとしている。
「・・・はあ」
俺は勇者を除く広範囲に、傷つかずに気を失うスキルを発動した!
村人たちが、バッタバッタと倒れていく。
「いったい何が起こっているんだ!?」
「俺のスキルだ。死んではいない」
俺は去ろうとする。
「待てッ!!!」
俺は勇者に背中を向けたまま、立ち止まった。
「なぜ私を助けた?」
あ、忘れていた。
「え?」
俺は振り返り、勇者の頭に触れ、スキルで勇者の傷を治した。
「あ、え!? なに!?」
「俺を倒せるのは、勇者だけだ」
「ど、どういう意味だ!?」
そのまんまの意味だ。
けど、俺は何も言わず、その場を去った。
「・・・クッ、なんなのよ! アイツ!!!」
勇者は顔を真っ赤にし、下を向く。
胸がドキドキ鳴って、大きな音がなかなか収まらなかった。




