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王家の崩壊  作者: 千歳
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エッジワース伯妃はどうしてあの冷酷な夫にさっさと愛想をつかさないのか。

彼女をよく知る人々も知らない人々も首をかしげた。


確かに彼女もさっさと見切りをつけるべきだとはわかっているのだ。


それでもそれが出来ないのは、他人が思うほど彼女の悩みは簡単に解決しないからだ。


可哀想に、諦めなさい、覚悟して嫁いだんでしょう、私ならさっさと新しい人生を生きるわ。

あんな優柔不断で湿っぽい方が王族の一員なんてねぇ、そんな言葉を彼女は山ほど聞いた。


人は、自分も同じような悩みを抱えていたとしても、他人の悩みの方が軽く解決出来るかのように思えてしまうことがある。


エッジワース伯妃に厳しい言葉を投げかけた人たちもそうだったのかもしれないし、彼女があまりに陰鬱な雰囲気を漂わせていたので、黙っていられなかったのかもしれない。


「クロエルド、貴方って私の気持ちなんかこれっぽっちも考えてくれないのね。こんなことをされて私がどうなるか分かっているくせに」


「お前に罪滅ぼしをしたいから」


エッジワース伯妃は夫の言葉を言葉通りに受け取ってやるべきか、それともその裏の意味を汲み取ってやるか迷った。


「私に憎んでほしいの?それとも必要として欲しいの?」


そう尋ねると、エッジワース伯は妻の耳に囁いた。


「そう、私をいつかは逃がしてくださいませね」


夫の囁きに耳を傾けたエッジワース伯妃は弱々しく指を差し出し、誓いの印に縛られた。


「私、やっぱり疲れていたみたいね。夕食は要らないわ。眠りたいから」


そう言って彼女はまた寝台に戻った。


「メイディ、また戻ってきてもいいか?」


エッジワース伯の問いかけに、彼女は返事をしなかった。


彼は妻に呼び止められても気がつくようにゆっくりと階下の食堂に降りた。しかしやはり彼女は言葉を発さなかった。

あんなことを言われれば口を利きたくなくなるのも当然であろう。


エッジワース伯も、妻をもう少し気にかけて優しくしてやるべきだとわかってはいた。しかし妻と向き合うと彼の脳裏にはいつもウィステリアがちらついて、彼女を辛い立場に追い込んでしまう。


せめて別荘では仲睦まじい夫婦として振舞おうと約束したのに、ここでもこんな目に合わせるのは契約違反だ。

そう考えた彼は食堂に入ると持っていけそうなものを詰めてくれ、残りはお前達で分けて欲しいと告げた。


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