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セリルはセリルでどうしたものかと途方に暮れていた。
現実的に考えれば、ソレイユ夫人の故国を頼るしか道はない。
それからは、自分の伯母がソレイユ夫人よりも遠い国に嫁いでいるから、一旦はそこで厄介になるしかあるまい。
妹はともかく、自分たちがソレイユ夫人の実家にいつまでも頼るのは気が引ける。それならば伯母の家で何か自立の算段をつけた方がまだ良い。
そもそも、自分たちは亡命を認められるのだろうか?
これだけあの女に国を目茶目茶にさせておいて、自分たちだけは助かりたいという考えこそが、民の怒りをかき立てるのだろう。
貴族の誇りにかけて潔く死を受け入れるか?いや、自分はまだ死の恐怖を克服できていない。
病に臥して亡くなった両親との別れさえ今だ心に暗い影を落としているというのに、妻や妹との最後の別れなぞ考えただけで恐ろしい。
もし自分が死んだら妻はどうなる?自分たちの間に子はいない。
せめて妻だけでも親戚筋に逃れられたならばまだ縋るものはあるだろう。しかし、許されずただ一人で孤独の中に生きることを強いられたならば、それは何という苦しみであろうか。
やはり世間の言う通り、呪いだったのかもしれない。
王太子夫妻の子供が夭折したのも、自分たちに子が生まれなかったのも、この苦杯を飲み干させるために天が仕組んだことなのだろうか?
それとも、自分は妻との子を望みながら、王とあの女の元には希望が運ばれぬよう願った罰であろうか。
セリルはがっくりと項垂れた。