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85 平穏 ①


「もらったー!」

 相手の隙を突き、渾身の一撃を放つ


 カン コン!


「あ痛ーっ!」

 突いたはずだったが軽く弾かれ、何故か逆に突かれる形になった。


「先ほどから思ったんですが、隊長は声を出さないと攻撃出来ないんですか?」

 少し呆れながらも真顔で聞いてくるライカ、その顔でそう言われると何だか俺が怒られている様な気分になる


「声を出す必要が無いのは知ってるよ、でもなぜかこの練習用の刀を持つと声が出ちゃうんだよ、不思議だね」


「はあ‥」



 ・・・・


 ・・・・





 俺の全ての準備が完了した事で、ハヤト隊には集合がかかった。

 それぞれ休暇や他の部隊へ一時的に編入されていた隊員達は、またハヤト隊として任務を受ける事となる

 

 今回の任務は大陸中部にある緩衝地帯の一番近い村への駐留、大陸中部といっても東よりで、出没する魔物自体も大して強い物もない、楽な任務になる


 しかし、魔物が強くないと言ってもこの村の人達からすれば脅威になり、普段の生活にもかなりの支障が出る

 2年程前からこの村への軍の駐留が打ち切られ、自分達で村を守るしかなかったが、今回我が隊が駐留することが決まり、村からは歓迎を受けかなり喜ばれた。

 俺としては初めての経験にちょっとだけ戸惑う


 村のまとめ役達との挨拶を終え、任務を開始してから今日で1週間

 いつも? のように、櫓や柵を『土』魔法で作り上げ、中々に立派な砦を作り上げた。


 そして、現在ライカに剣技の稽古をつけてもらっている所である、一度皆でどのくらいの実力があるか打ち合ったことがあったが、その時ライカに部隊の誰一人勝てなかった。

 前回の作戦でライカの剣技の実力はずば抜けており、それを再確認した俺は暇を見つけてはライカに稽古をつけてもらっていた。


 俺とライカが手にしている練習用の武器は、俺が休暇中に隊の皆が愛用している武器と同じ形の物を木製で作り、新しく契約した『保護』を付与し、練習用の武器としてこしらえた。

 

 皆が愛用している武器の形は、一度見ただけで、物のサイズが分かる特技を持つデュラ子が、完全に把握しており、見た目そっくりの物が出来た。

 そして村に到着してから実際に本人たちの武器を見せてもらい、その武器の重さも再現するため『重力』魔法を付与し、重さも同じに整えた。

 そうする事により普段使用している武器とほとんど大差ない、隊員個々の、専用の練習用武器が完成した。

 普段使い慣れている武器と同じ形、重さの練習用武器とあって皆かなり喜んでもらえた。


「てかさ、ライカもあんまり本気を出さないでよ、もうちょっとさ、こう‥‥カンカン! って打ち合いとかしたいじゃん?」

 

 そう、さっきからライカは大体3手目ぐらいで勝負をつけてしまう、ライカが強いのは分かっているけどもうちょっと手を抜いて欲しい


「最初から本気は出していないんです」


「そうなんだ‥‥そっか」

 本気では無かったようだ


「でもさ、もうちょっと打ち合いとかしたいんだよね、だからもうちょっとだけ手を抜いて欲しいんだけど」

 

「隊長の刀‥‥雷雲て名前でしたよね? あの細身の刀で打ち合ったら、一発で刃こぼれすると以前聞いたのですが、練習用の刀とはいえ、打ち合ったらダメなのでは? 変な癖がついてしまいますよ?」


「‥‥そー言われると、そうだったね」

 今手にしている練習用の武器は雷雲を模った物、となるとこの練習用の武器ではダメだってことだね、練習用のランスでも作るかな?



 駐留しているこの村は、自分達以外の部隊がおらず、夜もこの部隊で魔物の侵入などの警戒に当たる。

 実際の所は召喚獣のノームだけでも十分だと思うが、万が一の為に部隊から1週間交代で一人、夜の番する事になっている

 なので、夜は隊員の誰か一人と、ノーム3体体制でこの村を守る


 当初は俺とベルフ、ライカ、エクレール4人で交代で夜の監視をすることになっていたが、ソルセリーがそれに反対、理由としては


「いい? 部隊の隊長は常に全ての事を把握してなければいけないの、隊長が夜に回ってしまったらそこで情報の伝達が出来なくし、部隊の事を把握出来なくなってしまうのよ、だから隊長は夜番などせず、私や、タクティアと一緒に昼だけにしたほうがいいわ」


 だそうだ


「そうですか? 前に所属していた部隊のフレックス隊長は夜番を結構してま‥‥あ、いえ、何でも無いです」


 ソルセリーに睨まれ、反対意見を言おうとしていたライカが沈黙


 俺も、別に引継ぎとかタクティアにやらせておけばいいじゃない? と思ったけど


「ふむ、それもそうかもしれませんね、ならハヤト隊長は夜番無しにしましょうか、夜番の朝方にハヤト隊長が眠い時に話を聞くのも悪いですし‥‥‥‥」


 タクティアもソルセリーの意見に乗っかってきてしまった。

 どうやら俺が夜番で疲れていても『今日のお話』をするつもりだったようだ。



「ピィィィィィイ!」

 召喚していたポッポが甲高い声で鳴く

 この村でも、朝昼夕と村の北側、緩衝地帯にむけて広域探知をしている、ポッポには時間になったら教えてくれと言っておいていた。


「時間か、ライカ続きは後でお願いね、『探知』の時間になったからちょっと仕事をしてくるよ、昼食とか各自でとってて、俺はいつもどおりあそこで取ってるから」


 ライカにそう告げ、『探知』専用の櫓に移動する

 この櫓、はしごを登って上まで来ると、人ひとりがやっと入れる位のとても狭い空間になっており、昇ってきたはしごの上に、櫓と同じ土で出来た座席をスライドさせて座る、そうするとはしごの登り口が完全に塞がれ、他の者が昇ってこれなくなる

 

 

 何故そうするか?

 以前タクティアと二人で行動していた時

「これから広域探知をするから何かあったらよろしくね」

 とお願いし、目と耳を使った『探知』を開始した。


 召喚獣のポッポを通じ、ポッポの目で見た物、耳で聞いたものを実際に自分の目で確かめるためだ。

 ただしそうすると、五感の内「見る」と「聞く」二つがポッポの方に集中してしまうため、自分の周りで起こっている事が全く分からなくなる、だからタクティアにお願いしたのだが‥‥


 意外とあっさり確認したいことが終わったため、意識をポッポから自分の方に戻した時、タクティアがそーっと俺に近づいている最中だった。


「何をしようとしているの?」


「えっ! も、モドッテ来たのですか? は、早かったですねぇ、ははは‥‥」

 右手に持っていた「何か」をサッと後ろに隠し、多分その後自分の『収納』に直ぐに隠したのだろう


 間違いなくあれは俺に悪戯をしようとしていたに違いない、それ以来俺は仲間も信じられなくなった。

 とは言っても、信じられないのはタクティア一人だけだが‥‥

 そんな訳で作った『探知』専用の櫓だが、もし何かあった場合は、俺が座っている椅子目掛けて棒で突っついてくれと言ってある、椅子からお尻に振動が伝わり気づくからと


 ただ、目と耳を使った『探知』をするのは正直自分でも危険だと分かっている、いくら仲間が周りに居ようとも、完全に意識をポッポの方に向けるのは危ない、今日はタクティアが砦の方に残ってくれるみたいだが‥‥うん、危ないな、魔物よりもタクティアの方が危ない


 という訳で、以前から片方の目と耳だけ、ポッポの見た物聞いたものを捉えられる様に訓練している、そうすればもう一方の目と耳で自分の周りを確認する事が出来るからだ。

 最初の頃、頭の中に二つの映像と音が頭の中に入って来て、それだけで気持ち悪くなったが、最近は5分ほどは持つようになってきた。

 しかし、二つの映像と音があるとどちらかに集中することが出来なくなり、見落としなど安定しない、まだまだ練習が必要なようだ。


 櫓の上空でポッポが旋回し命令を待っている

「よし、ポッポ行っておいで」

 その言葉でポッポは村の北側、緩衝地帯に向けて飛び立った。



 ◇◆◇


 ライカは昼食を取るため、この村に用意されている軍の宿舎に戻る、宿舎と言っても普通の民家を少し改造しただけで立派と言える物ではない

 普通の民家に少しだけ増築を加え、部屋数を増やしただけのものだ。


 今この宿舎にいない者はハヤトとタクティア、隊長のハヤトはこの宿舎で一度しか食事を取ったことが無い、朝昼夕の食事は全てあの『探知』専用の櫓で取り、『探知』をしながら食事を取っている


 タクティアは万が一何かあった時の為、今日は砦の方で食事を取る、これはハヤトが目と耳を使った『探知』を始めた場合、周りの状況が分からなくなるためであり、この砦に残る役割は交代で行っている


 そして昼食を取る為にテーブルに着いたライカ、同じテーブルにはベルフがもう席に着いていた。

 今週夜番のエクレールは、自分の部屋で夜に備え、今頃はぐっすりと眠っているだろう


「おう、どうだハヤトはちょっとは成長したか?」


「いえ全く、1週間程では成長なんかはしませんよ、それに止めた方がいいと言ってもあの掛け声を止めないんですよね、隊長は自分ではどうしようもないと言っているんですが」

 ライカは苦笑いを浮かべ、話を続ける


「ただ、戦い方自体は面白いやり方をしますね、何というか‥‥あくまでも自己流というか」


「そうだな、あれでも剣技では召喚者の中では上の方に入ると思う、大陸深部を通過した時に何度も見ているからな、魔物にも怯まず刀を振るっていたし‥‥ただ、対人となるとまだ少し弱いか」

 ベルフは顎に手を当て少しだけ目線を上に上げる


「そうですね、経験がまだ浅いのか、一生懸命に刀を振るっているのは分かるのですが、刀を振るった後の事がまだ考えられないようです」

 実際にハヤトは隙を見つけると突っ込んでくるが、それを躱された事の後をあまり考えてないようだった。


「まあ、でもハヤトは一応召喚者だからな」

 ライカは「一応」の所でフッと笑い、言ったベルフも同じく少し笑う

「召喚者にしてはいい線をいってると思うぞ? それにアイツには魔法があるしな」


「ええ、今日も『水』魔法を使ってましたよ、ちょくちょく水玉を飛ばしてきてましたね、剣技の訓練なので使用する回数は少なめでしたが、あれが結構邪魔になるんですよね、ただ、自分は攻撃範囲に入ってしまえば対処できますからね、でもマシェルモビアの兵士と戦う時は、極力後ろに下がってもらった方がいいです、ある程度経験を積んだものが相手であれば、隊長には荷が重いでしょうから、まぁ‥‥隊長に近づければの話ですが」


「ライカなら接近することが出来るか?」


「無理でしょうね、あれだけ次から次へと魔法を撃ってくる隊長に、近づく勇気なんてありませんよ、もしやるなら集団で一気に攻めないと駄目でしょうね」


「そうだな、そのうえハヤトには召喚獣もいるしな」


「前の部隊に召喚者がいたんですが、隊長の様な使い方はしていませんでしたからね、一瞬で召喚出来たり、他の召喚者とは違った召喚獣を持っていたり‥‥、隊長を攻めるとなるとその召喚獣の事も考えないといけませんからね‥‥‥‥」


 ベルフとライカが、ハヤトをどう倒そうかと議論している時、とてつもなく不機嫌な声が聞こえてくる


「あなた達は隊長に何か思う事でもあるのかしら?」

 鍋に調理したスープを持って来たソルセリーだ


「い、いや、俺達はあくまでも戦術的な事を話し合っているんだ」

 うんうんと、ライカも慌てて頷く


 ソルセリーは目を細めて二人を見た後

 ドン!

 と、スープの入った鍋をテーブルの真ん中に置いた。その音にその場にいた男二人はビクッと震える

 

 意外と料理の得意なソルセリーが、いつもの食事の準備をする担当になっており、今日も作ってはくれた、くれたのだが‥‥‥


 鍋の中には少量の肉と1種類の野菜しか入ってはいない、ソルセリーが作ってくれる食事は美味いのだが、明らかに手抜きになっている、鍋を置いたソルセリーはそのまま席に着いた。

 

 スープしかないという事は、後は保存食用のパナンでも食べていろという事なのだろう、ベルフとライカはお互いに顔を見合わせ、嘆息しつつ鍋からスープをすくい、自分の皿に入れる


 ソルセリーはどうやらハヤトの事を心なしか思っている所があるらしく、それを他の隊員達も何となくだが気づいていた。

 ソルセリー本人は分かっているかどうかは知らないが、ハヤトといる時とその他の時では顔の表情が少し違っているし、普段でもタクティア程では無いがハヤトの近くにいる事が多い


 この村に駐留してから1度だけ、ハヤトが朝早く起き過ぎたと言って朝の『探知』を早々に済ませ、朝食の為に食卓に着いた事がある

 その日の朝食では保存食のパナンではなく、蒸かしたばかりのパナンとサラダにスープ、肉やデザートまで付いた。

 しかも座る場所も、いち早くハヤトの左側の席を確保し、何となく穏やかな顔でいた事をその場にいた者達が覚えている、ちなみに右側にはタクティア


「ハヤトの事が好きなのか?」

 と聞いてみたい気もするが、そんな無粋な事はしない、それこそそんな事を言ったら次の食事からは、スープでは無くお湯しか出してもらえなくなるかもしれない

 何より、ソルセリーはこの部隊の中では一番の年上だし、階級もタクティアよりも上だ、それに‥‥‥怖い

 

 以前、部隊の皆で飲みに行った時、ソルセリーは物凄い恰好で店に来た。

 それを見た者達は「これからパーティですか?」と言いかけたが、何とか飲み込む事に成功

 

 席に座る時、真っ先にハヤトの横に座ろうとするソルセリーを見てもしかして‥‥‥とは皆感じていたが、結果としてハヤトの召喚獣に邪魔をされて座れなかった。

 その時のソルセリーの顔はとても恐ろしい物だったと皆感じていた。


 ハヤトが早々に酔いつぶれ、召喚獣が連れて帰ると言った時のソルセリーの発狂具合は物凄い物で、エクレールが何とかソルセリーをなだめるも、ソルセリーは無理やり召喚獣を帰還させ、ベルフ、ライカ、タクティアに


「貴方たち3人が責任をもって連れて帰りなさい!」

「いいこと!? ちゃんと隊長を家に送り届けるのよ!」


 何で俺達が? と理不尽に思いながらも怒り狂ったソルセリーに逆らう事も出来ず、男3人はハヤトを肩に担いで送って行った。


 途中


「す、すみません胴体の方は重いので変わって貰えませんか?」

 タクティアがヘタレる場面もあったが、まだ人道りが多く賑わっている街を

「えっほ!えっほ!」

 と担いで進むのは、酒のせいでもあったのか何となく楽しかったと男3人組は覚えている


 


 スープを飲みながら保存用のパナンを食べるベルフとライカは


「全く‥‥‥隊長も食事の時ぐらいは戻ってきて、隊員達と一緒に食べるべきだと思うのよね、ベルフとライカもそう思うでしょ?」

 若干怒り口調で聞いてくるソルセリーに


「全くだ(ですね)」

 と答えるベルフとライカ、そうすればもうちょっとまともな物が食えるのだろうにと、心の中で肩を落とす





 ◇◆◇



 バサバサと翼を羽ばたかせながら俺の腕に『探知』を終えたポッポが帰ってきた、帰ってきたポッポをそのまま魔法陣の中に帰還させる


「ハヤト隊長! 終わりましたか?」

 タクティアが櫓の下から話しかけてくる


「うん、終わったよー、ここはいいからタクティアも昼食行ってきなよ」


「いえ、今はまだやめときます、ソルセリーの機嫌も悪いでしょうから」


 今日も悪いのかと思いつつ椅子から立ち上がる、ぽろぽろと保存食用のパナンの食べかすが膝から落ちていく、探知をしなが食べるとどうしてもそっちの方に意識が向かない

 

 パンパンとまだついている食べかすを払い、櫓の下へと降りる。


「今日も問題なしだったよ」

 

 この村に来てからは毎日がバカンスのようだった。

 これまで村に入ってきたした魔物はゼロ、ポッポを使った広域探知では見かけるものの、近づいて来ようとする魔物は皆無

 魔物といったら、ライカから聞いたのだけど最近コンセの村に魔物が来たらしい、ただライカの言い方が‥‥


「最近になってようやく、コンセの村にも魔物が来るようになったんです」

 まるで「川に魚が戻ってきました」みたいな言い方をしていた。

 

 魔物が来たら駄目だろうと思ったけど、あそこは魔物の皮を加工して商品にしているからな‥‥変種の魔物よりは価値が下がるとは思うけど、普通の魔物でもある程度、一定の需要はあるらしい


 

「それはそれはお疲れ様です、それで話は変わりますが先ほど連絡がありまして、ここへの駐留は後半年になりました。半年後に他の部隊が代わりに来てくれるそうです」


「へぇー、ならここが終わったら前線に送られるのかな?」


「いえ、ここが終わったら別の村への駐留になりますね、ただし長い期間は駐留しませんね、他の村に駐留している部隊への休暇を取らせたいらしくて、その部隊が休暇をしている間、その村に入る事になっています、結構場所を転々としますよ」


「なら結構移動とか面倒だねえ」


「そうですね、でも部隊宿舎の中ではなく、この部隊の専用の軍用車の中に、荷物を普段から入れて置く様にすれば移動も楽になるでしょう、ハヤト隊長が来て早々事故った我が隊専用の軍用車も、修理が終わってあと1週間ほどで戻ってくるそうですし」


「またそれを蒸し返すのかよ」


「本当の事ですから」



 ・・・・


 ・・・・


 この村に来る前、この部隊には専用の軍用車が支給された。

 どこの部隊にでも支給されるという事ではなく、ある程度実績のある部隊でないと支給されない、ソルセリーとベルフは破壊の一族の部隊に所属していたので当然の事ながら軍用車があてがわれていた。

 しかし、エクレールは初めての事だったので、専用の軍用車と聞いてかなり興奮していた。


 そして出発当日、何故だか当然の事のようにタクティアが俺にカギを渡して来た。

 運転しろという事らしい、そして当然の事のように助手席に乗り込んだ。

 まあいいかと思いつつ、カギを回しアクセルを踏んだのだが‥‥‥


 バイクと車は違う、当然知っていた


 しかし、バギーに慣れてしまった俺は、バギーと同じように運転をしてしまった。バギーのハンドルはバイクのハンドルをそのままつけている、それに伴いハンドルの調整も行った、ハンドルを傾けるとそれと同じようにタイヤも曲がる、俺のバギーはバイクと同じ様な動作をするようになっている


 しかし、一般の車は違う、車のハンドルには「遊び」の部分があり、ちょっと回しただけではタイヤは動かない


 知っていたのだが‥‥‥


 ドガン!


 出発早々、目の前にあった別の車両にぶつかった。

 そんなにスピードは出してなかったにも関わらず、双方の車ともべっこりと凹んでしまった。


「ハヤト、車はハンドルを回さないと曲がれないぞ」

 とベルフに笑いながら言われ、エクレールは初めての軍用車が一瞬で凹んでしまい、物凄く悲しそうな顔になっていた。


 それが軍本部の敷地内であったため、その事故を見ている者も多数いて

「真っすぐ目の前の車に突っ込んで行った」

 と証言され

「ちゃんと免許を持っている者が運転していたのか?」

「ハンドルはちゃんと握っていたのか?」

「飲酒はしてないか?」

 と散々取り調べを受け


 タクティアに一緒に付いてきてもらい

「すみません」

「すみません」

 と各所に頭を下げて回った。タクティアがどうにかしてくれて処分は免れたけど、新車をぶつけてしまった俺には注意が下る


 その後、代車を用意してもらい、荷物を乗せ換えこの村まで来たわけだが、代車の運転を俺がする事になったのは納得がいかない、普通はこうなった場合変わってくれると思うんだけど‥‥‥‥


 後ろの座席で

「ハヤト次はカーブがきついからな、思いっきりハンドルを回すんだぞ」

 と茶化すベルフがウザかった。

 タクティアは助手席ではなく後ろの座席に座っていたし、ルームミラーで車内をチラリと見たところ、エクレールがカーブに入ると足を踏ん張っていたのが何だか悲しくなった。


 忘れていただけなのに‥‥‥‥




 



 結局の所この村では大した事も起きることは無く、平穏に任務を終了していった





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