56 大陸深部 ②
大陸深部での最初の魔物を撃退し、ハルツールの中部に向け進んでいたが、その後は驚異のエンカウント率をたたき出した、次から次へと遭遇し、ここまで魔物との遭遇があると近くに魔物の集落があるのでは? と感じさせるほどに
しかし、深部の魔物達は基本交配以外は互いを餌として認識しているらしく、集落などは作るくことは少ないという、もちろん例外などはあるが‥‥
「「 ぎゃぁぁぁぁぁぁあ! 」」
見た目のグロさに、ソルセリーとオットはもう精神が崩壊しそうになっている、目の前にはムカデ型の魔物、外皮の硬い胴体が数珠の様に繋がっておりそこにに足が何十本もある、正直俺も苦手だ。
今まで遭遇した魔物は、どれも外皮が硬く刀も魔法もほとんど効かなかった、なので関節部分や胴と胴の間を狙って魔法を放つが、あまりの速さにそこに命中しない、なおかつ胴の間は隙間が無いほど密着しており、魔法が当たっても外皮に当たるだけで致命傷にはならない
動きが速すぎる!
土で壁を作り進路を妨害するが、それをたやすく乗り越えてくる、だがその壁の高さは、召喚獣コスモの角でえぐるにはちょうどいい高さになる
壁を乗り越える瞬間を狙って呼び出す
来い、コスモ!
魔物の前方に飛び出したコスモは、そのままムカデの胴に下から角を突き上げる
よし! これで胴ごと木っ端微塵に‥‥
長い胴が真っ二つ分かれるはずだったが、ドン! と弾かれそのまま着地する、もぞもぞと動いたあと再び向かってきた。
「嘘だろ!」
「ハヤト! 逃げろ!」
恐ろしいほどの速さで接近される
「コスモ、助けろ!」
『身体強化』で横に飛び、『風』魔法でムカデを押し出し避けるが、ムカデは風など物ともせずそれ以上に早く迫ってきた。
「ヒヒーン!」
ユニコーンからペガサス形態になったコスモが、ムカデの頭を踏みつけそのまま俺の方に飛んでくる、飛んでくるコスモの後ろ足を俺が掴むと、コスモはそのまま空中に飛んだ。
ギチギチギチ!!
空に飛んだが、ムカデはその長い胴を伸ばして空に飛んだ俺を追ってくる
「わっ! あ、危ない!」
ガチン!!
「ひぃっ!」
ギリギリの所で足を引っ込め、噛みついて来ようとしたムカデの攻撃をかわす
「べフル、胴と胴の間を狙って切りつけろ!」
「間を狙えって言っても隙間が無いぞ!」
「隙間は俺が開ける! そのままそいつの横に付けていてくれ!」
何故か俺だけを集中して狙ってくる魔物、刀で切りつけたいが、正面から向き合う度胸は無い横に回り込もうとしても、動きが速すぎすぐに体の向きを変えられてしまう、なら、おれが囮になってべフルにやってもらうことにする。
飛んでいるコスモから手を離し、帰還させると同時に、地面に向かって直径2メートル程の『土』魔法を使って作り上げた玉を投げつける、硬い玉が柔らかい地面に直撃した瞬間、地面の土が舞い上がる
『幻惑』
ムカデは土煙が上がろうがお構いなしに、俺が落ちた場所に向かって突進し俺の姿を発見、そして俺の体めがけ強靭な顎で噛みつく
ガチン!
とらえたはずの顎は空を切る様に空振りする、『幻惑』で姿を誤認したムカデは、すぐに来た横からの衝撃、再召喚されたコスモの一撃でで吹っ飛んだ。
「ベルフ!」
「おうさ!」
衝撃で体を曲げるように横に飛ばされるムカデ、その硬い外皮で覆われた胴と胴の間に、少しだけ隙間が出来る、そのわずかな隙間にベルフがキレイに刀で切りつける
ヒュッ!
ギチギチ!
痛みで顎を震わせ、切られた箇所を守るよう反射的に体を横に捻る
「うおっ!」
危うくベルフがそれに巻き込まれそうになる
「すまん! 浅かった!」
べフルがそう言うが上出来すぎる、切られた痛みでその場所を庇うように、体を思いっきり丸めたムカデの胴と胴の間には、大きな隙間が出来ており、『身体強化』を使いムカデに急接近し、俺の愛刀、雷雲・改で切りつけた。
そしてすぐさま飛びのく、真っ二つにはならなかったものの、体の半分近くを斬られたムカデはのた打ち回り暴れる。
斬った場所に連続で雷撃を放つと『探知』魔法からの反応は消えた
・・・・
・・・・
「危なかった、切ったあと体を曲げられた時に巻き込まれる所だったよ」
ベルフがギリギリ躱していたが、アレを見ていたから俺も切った後すぐに引いた、見ていなかったら俺は巻き込まれていたかもしれない
雷雲・改でムカデの胴を突いてみる、少しだけ外皮が切れるだけで体内までは届きそうがない、正面から切りつけなくてよかった、やってたらこの刀自体駄目になっていただろう。
「もうヤダ、帰りたい・・・・」
今帰っている途中ですよ
気の強い女の人だと思っていたけど、そうでもなかったようだ、ソルセリーが涙目でへたり込んでいる
「もう陸は嫌ですね‥‥、空に戻りたい」
最初の威勢はどこへやら、オットも顔が真っ青だ
それにしてもこのムカデ結構硬いな、ちょっとだけ持っていこうかな
ムカデの胴と胴の間を切り解体する、流石に全部は持っていけないから、何個もある胴の内2つだけにしようか。
「ちょっと、何してるのよ」
「いやね、鍛冶で使えるかなーと思って持っていく」
べフルが「鍛冶か‥‥」とつぶやいている
胴の中をほじると内蔵などがドロリと出て来た
「「 うわぁ… 」」
「ん? うわっ! くっさ」
鼻がもげるほど臭い、急いで中を取り出し『洗浄』を掛け匂いも取る、匂いも消してコレを‥‥
「ねえオット、ん? 何で皆離れてるの?」
「臭いからに決まっているでしょ!」
「もう大丈夫だよ臭いも消したし、それでオットこれを『収納』にしまってもらえない? 俺のはもう一杯で入らないんだ」
「自分のやつにですか‥‥何となく嫌ですけど‥‥分かりました」
渋々というか嫌々だが『収納』に入れてくれた
「さて、また来ないうちに先を急ごうか」
べフルがそのまま先頭に立ち先を急ぐ、さっきからソルセリーの足取りが重い、「もう嫌‥‥」なんて独り言ばかりだけど、俺に突っかかることが無くなってきたので逆にそれもいいかもしれない。
「さっきの魔物の殻を使うとか言っていたけれど、ハヤトは鍛冶も出来るのか?」
「うん、一応『抽出』『分離』『合成』をもっているから、一通りの事は出来るよ」
「へぇ~、‥‥なら、金は払うから作ってくれと言ったら作ってくれるのか?」
べフルは自分の刀を取り出し刃先を眺めている
「これも支給品じゃなくて、いい所に頼んでいた物なんだけどな、さっきの魔物で一本駄目にしてしまったよ、ハヤトの刀は中々切れ味もいいし、もしよかったらでいいんだが」
先ほどからの戦闘で、ベルフの攻撃よりも俺の攻撃の方が魔物に対し致命傷になる率が高い、確かに武器の切れ味の違いによるものだろう、でも‥‥
「対価が貰えるなら別にいいんだけど」
「ホントか!」
俺の刀を取り出す、見た目は普通の日本刀だけど、魔力を流すと刃先から紫色に輝く魔力が飛び出し、その見た目は日本刀というよりも、でっかい反りの入った和包丁のようだ、コレを持って戦っていると何となく料理人になった気分になる。
「ただね、魔力量の高い召喚者でしか使いこなせないと思うよ、ちなみにこれが攻撃時の姿ね」
はい使って見てとベルフに持たせる、べフルは少しだけ嬉しそうに刀を受け取ると魔力を流しだした
しかし、少しだけ魔力を流した所で止めた
「‥‥これは、無理だな俺には扱いきれない」
少し流しただけでも分かったんだろう、一度に使う魔力量と、それを維持できるだけの魔力が自分にあるかどうか。
「でしょ? 召喚者でなければ短時間しか扱えないと思うよ、その形になったのも、他の鍛冶屋の人よりも俺の作る物が劣っているから誤魔化すためにそうしているだけだから、普通に切れ味・耐久性を考えたら、軍の支給品の方が優れていると思うよ」
「‥‥そうか残念だよ、所で槍のような武器もあったはずだけど、あれは持ち手の所しかなかったな、あれも同じ仕様だろう? 魔力の消費量ってどのくらいなんだ?」
ランスのことだろうな
「その刀の10倍くらいかな」
「10倍‥‥よく扱えるものだな」
「ちょっといいかしら? 私にも少し触らせてほしいんだけれど」
少し興味があったのか、俺が頷くとソルセリーはベルフから刀を受け取り、刀に魔力を通すと俺と同等の魔力の刃が刃先に出現した。
「おお~やるな~」
「当然よ、ソルセリー家は代々魔力量が高いから、このくらいなら何ともないわ」
「凄いですねぇ」
ふふん、と胸を張るソルセリー、さっきまで暗い顔をしていたが、他の2人に褒められて嬉しそうにしている、その3人でワイワイはしゃいでいるが、ふと思った
「ソルセリーの場合、それを普段から使っていたら『消滅』の魔法を使う時に魔力量が足りなくなるんじゃないの?」
『消滅』の魔法を使うと、その後は暫く動くことも出来なくなると聞いている
ほんの少しだけ目が考えるように左右に動く
「‥‥‥‥そう‥‥ね、言われて見れば、私にはこんなの必要ないわ」
作るともあげるとも言ってないんだけど‥‥
「私にもちょっと触らせてもらえませんか?」
オットも使っては見たが、静電気でも伝わったかのようにビクッ! とした後、そっと俺に返して来た。
◇◆◇◆
びょ~ん びょ~ん
もう見ただけで分かる、バッタだ、こっちに俺達がいるのが分かっているかの如く、一直線に向かってくる。
「何でまた来るのよ! 貴方さっさと殺っちゃってよ」
ソルセリーのストレスがマッハだ
大陸深部に入りもう10日目になる、移動中魔物達が次々と現れその都度戦闘になる、ただ唯一の救いが、夜になると魔物達も寝ているのかほぼ出現しない、野営をする時は、俺が高床式の砦を作りそこで交代で休んでいる、高床式にした理由は、ワームと呼ばれる魔物がいるから直接地面にはいない方がいい、とオットに言われたから、しかしながら未だにそのワームと呼ばれる魔物には遭遇はしていない
ソルセリーにこれ以上当たり散らされるのは嫌なので、素直にバッタに向けて攻撃をする、深部で遭遇する魔物の中でもバッタだけは俺に取って雑魚になる、腹に魔法を当てるだけの簡単なお仕事だ、いつも通り氷の槍を放とうとした時
びょ~ん びょ~ん
と跳ねているバッタが着地した瞬間を狙って
グバァァァァ!
地面から肌色の土管の様な物がせり出し、バッタを一飲みにした
「あれがワームです! 気をつけて奴は音を頼りに襲ってきますから!」
バッタを丸呑みに出来ることから、その口は直径3メートルほどはあると思われる、そしてバッタを飲み込んだワームは、海面から飛び跳ねるクジラのように地面から飛び出し、その全長を俺達に見せつける。
10メートル以上はあるだろうか? 空中にまで飛び上がったワームは、そのまま地面に口の部分から落ち、大量の土煙を巻き上げそのまま地中に潜っていく、地面がやたらと耕されているのは、間違いなくこのワームのせいだろう
あぁ‥‥あれは駄目だ、この世界に来て一番駄目な魔物だ
人はどうしても苦手な物がある、俺はそれが2つ、小学校低学年の時テレビで再放送していた映画がそれにあたる。
一つは『おばちゃリアン』
ゾンビになったおばちゃん達が
「あら! あなた良い脳みそを持ってるわね、おばちゃんに頂戴よ」
と、生きている人間の脳みそを求めて人を襲うおばちゃんゾンビ、怖いと思うと同時に見たいと思う心が葛藤し、結局は見てしまったが、暫く夜中にトイレに行けなくなってしまった、行くときは家中の電気を全て付けていた。
それ以来ゾンビが苦手になった
そしてもう一つはこのワームとそっくりな生き物が出てくる映画、タイトルは忘れたが、舞台はアメリカだった気がする、突然襲われたその土地の住民は家の屋根に乗って、その化け物が通り過ぎるのを待つが、その内その化け物はその家を破壊しだし、住民を地面に落とそうとする、そして落ちた住民を喰らうのだ。
それ以降、暫くアスファルトの上しか歩けなくなった、土の上だとどうしても恐怖にかられる。
その映画を見てから俺はミミズと芋虫が苦手になった。
ワームに気付かれないよう、音を出さないようにその場にとどまる、地中に隠れている分攻撃が出来ない、攻撃を加えるなら地上に出ている時だろう、しかし、あの巨体が空中に勢いよく飛び出した時を狙い攻撃をするのはいいが、どうやって地上に誘い出す?
それにあの巨体が落下した時の衝撃を受けるのはかなり危険だ、もちろん一番危険なのは地中から一気に襲い掛かられることだが
ズルリ ズルリ
と地中を這いずる音が足の裏から伝わってくる、バッタを飲み込む前に俺達の場所も特定していたのか、真っすぐに向かってくるようだ、他の3人はその場で音を出さないように停止しているが、俺はそうはいかなかった。
最も苦手な物の一つが近づいてきており、自分でも足が震えているのが分かる、この震えも振動で伝わっているのだろうか?
あの映画はどうやって倒していたっけ?‥‥駄目だ思い出せない
参考になればと思ってあの映画の最後を思い出してみるが、どうしても思い出せない
ズルリ ズルリ ズル‥‥
音が俺の真下で止まった
・・・・
どのくらいだろうか? 1分? 2分? それ以上か?
時間的には少しの間だったと思う、しかし俺にとっては1時間、2時間、それ以上に感じた、額に浮かんだ汗がすーっと頬を伝い顎先に到達する、この汗が落ちた音でも気づかれるのだろうか? 汗を拭きとりたいが、恐怖で腕を動かすことも出来ない
腕を動かした時に軽鎧に当たってしまわないか? もしその音で‥‥そう考えていると地面が少しだけ陥没したような気がした、足元に視線を落とすと‥‥‥‥
俺の周りをを囲むようにワームの口そして歯が、既に地面の上に出ていた、本当に囲んでいるかは分からないが、目を動かし視界の端を見ると俺を中心に円を描くようにワームの口がある
心臓の鼓動が速くなり、体中の肌の表面がビリビリとしそれに伴って呼吸も早くなる
マズイマズイ! 鼓動の音が伝わってしまう、押さえろ! 押さえろ!落ち着け!!
そして‥‥ほんの少しだけワームの口が地面にせり出した気がした、その時、顎まで垂れていた俺の汗が地面に向けて落ちた
『土よ!』
何とか冷静になろうとしたが、耐えきれずついに緊張の糸が切れてしまった、体を丸め、土で卵のように体を覆う
『硬化!』『耐壁!』
体を覆った土に魔法を唱えた瞬間、上空に打ち上げられるような感覚を味わった、それと同時に
パリン
『耐壁』が突破される音が響く、「ハヤト!」と名を呼ばれた気がしたが誰の声なのか分からない
あぁ‥‥食われた
ピシッ!
『硬化』を掛けた土にも亀裂が入る音がする
このまま消化されるのか‥‥もう諦めに入っていた時、以前見たトラウマ映画のタイトルを思い出した
あの映画のタイトルは‥‥『ドレマッズ』だったか‥‥最後は確か‥‥
◆◇
「ハヤト!」
ソルセリーが叫ぶ、彼を飲み込んだワームは、そのまま空中に体をうねらせながら勢いよく飛び出し、その後落下準備に入る
「ソルセリ―下がれ落ちてくるぞ!!」
あの巨体が落ちた時の衝撃は尋常ではない、巻き込まれると無事ではすまないだろう、しかし落ちた瞬間、地中に潜り込まれもうハヤトは助からない、ハヤトだけで腹一杯になればまだましな方で、そのあと自分達にも襲い掛かってこられる危険がある
ベルフはソルセリーを下がらせようと‥‥
バァァァァァン!!
地中から飛び出しジャンプの頂点に達したワームは、物凄い音を上げ爆発した、辺りにワームの肉片と、緑色の体液が降り注ぐ
その中にあった土の塊から
「とぉ!」
ハヤトが殻を破る様に飛び出した、着地する瞬間に自身のブーツに『重力』を掛けフワリと着地する
「いやぁ危なかった‥‥ワームの体内で爆発させたら上手くいったみたいだね、死ぬかと思ったよハハハ‥‥うわっ!」
ハヤトが周りを見渡すとそこら中緑の汚物だらけだった、それは地面だけではなく近くにいた他の3人も一緒だった
「あ‥‥貴方は‥‥」
フルフルと震えハヤトに近寄ったソルセリーは
「やられたと思ったじゃないの! バカ!!」
目に涙を溜めてハヤトの胸を叩いた
べちゃっ!
ソルセリーの腕についていた緑の汚物が、ハヤトの胸を叩いた時にハヤトの顔に掛かる
「あっ! ちょっ! 顔に」
「ハヤトもう駄目かと思ったぞ!」
「良かった! 良かったですね!」
男二人もハヤトに近寄り抱きついてきた
「まっ、待って! 汚れが! よご 臭っ!」
◇◆◇◆◇
キ・・・・・タ・・・・・・
数千年の間、地中奥深くで眠りについていたソレはゆっくりと体を起こす
地下に出来た空洞にソレはいた、二本の足でゆっくりと立ちあがり、地上に向けて歩き出した。




