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20 1勝1敗

「いつもすまないねぇ」


「え? 今日が初めてでしょ?」


「うん」

 

 それは言いっこなしだよおとっつあん、とは続かなかった、


 第二キャンプ地に来て1月半が過ぎたあたりで、前髪が目に刺さる位に伸びた。ハサミを借り切ろうとしたが、どうやって切ったらいいのか悩んでいたところ、ミラが切ってくれているというのでお願いしている所だ。

 

 今ここに長く滞在している人たちは皆、髪を後ろで結っていたり、ざんばらカットの人が多い。それでも女性は一応気を使っているのか、自分でやったり同じ女性に切ってもらったりしているので、ミラもなかなか髪を切るのがうまい。


 チョキチョキ


 髪を切られてる音を聞いていると気持ちよくなるのは何でだろう? 目を閉じたらそのまま寝てしまいそうだ。


「はい、おしまい」


 もっとこの時間が続けばいいんだけど、続くと髪の毛が無くなってしまうので仕方がない


「ありがとうお姉ちゃん」


「どういたしまして」

 そう言ってミラはニッコリとほほ笑んだ。 



 洞窟探索の任務が終了した後、カナル隊はキャンプ地へ帰還した、予定よりも1日早い帰還だった。その後はキャンプ地周辺の魔物殲滅任務に入り、周辺の魔物を殲滅していった、そして、今日は第二キャンプ地に来てからの4度目の休日の日にあたる、


 休日と言ってもやることは限られている、本を読んだり武器の手入れをしたり、人によっては鍛錬に励む者もいる、ただし、俺がいることによってこの休暇の日に別の楽しみが出来ている。


 カナル隊と休暇が被った他の隊の人たちは今、俺の出した召喚獣と戯れている最中だ、まるで奪い合うようにオル、そしてトロスを可愛がる


 オル&トロスの可愛さは天井知らず、まさに武人という雰囲気の、あまり近寄りがたい人に自分から撫でられるために寄って行く、その人は最初睨みつけるように見ていたが、やがて「フッ」っと口元が緩み、オル&トロスの頭を優しく撫でる、怖そうな人でも虜にするその魅力、スバラシイ


 そして、そんなのを見ていると何だかほっこりする


 夜になると今度はブライとニーアが二匹を独占する、一緒になって寝ているのだ、二匹は元が召喚獣なので犬独特の匂いもないし、毛が抜けることもないので寝るのにはピッタリ

 でも俺の召喚獣なので正直言うと返してほしい。



「ねえハヤト、この任務が終わったら予定とかあるの?」

 

 髪を切った後の心地よい余韻に浸っていると、ミラがそう言って訪ねてきた


「予定?」


 この2か月の任務が終わったら、学校の方に戻って10日ほど休みがあるけど、特にやることは無いな、軽く鍛錬するか、もしくはダラダラしているか。


「特にはないかな」


「じゃあさ、もしよかったら私と出かけない?」


「どこかに行く用事でも?」


「うん、ハヤトは同行者がいないと今は移転門とか使えないでしょ?」


「そうだね」

 今現在の俺は移転門を使う許可は出ている、しかし必ず同行者がいないと使えないことになっている」


「魔法の契約とかにかなり興味があるみたいだから、私と一緒に契約しに行かないかなーと思って」


「行きます!」


 そう即答するとミラはとても嬉しそうな顔をした。




 ◇




 仮入隊ではあったが、2か月という期間を無事に終了した、今はハルツールの首都サーナタルエの移転門に到着したところだ。


「くぁーっ! やっと休暇だぜ! これから1ヵ月どう過ごすかなー」


 カナル隊はこのあと、1ヵ月の休暇を貰えることになっている、そしてそのあとまた2~3カ月の任務に当たるのだ。


「ホントだよ! 今までため込んでいた鬱憤を発散させなきゃね! そーだ! ハヤト、もしよかったらさー、あたし達と一緒にあそ━━」


「あー! あー! あー! ごめんごめん! ハヤトはちょっと忙しいから!!」


 慌ててミラが、ニーアの話を捲し立てるような感じで遮る


 ガチャ、ドサッドサッ

 ミラは自分の収納から、今回使わなかった軍の支給品を取り出し


「悪いんだけど、これからハヤトを学校まで送ってあげなきゃいけないから! ブライこれ返品しておいてくれる? ハヤトもほら出して!」

 

「えぇ? あ、はい」

 かなり切羽詰まった感のミラに驚きながらも、使わなかった支給品を出す

 ドサッ、ドサッ


「ほら、いくわよ!」

 ミラは俺の手をむんずと掴み足早に歩きだす


「あ、うん‥‥ ブライ荷物お願いしますね」


「お、おお」

 

 半ば引きずられるような感じでそこから立ち去った、残された5人は呆然と俺とミラを見送っていた。



 ◇


「危なかったー」


 ミラの所有する小型の車で学校に送ってもらっている最中だ。


「何が危なかったの?」


「だってほら、このままだと皆でどこかに行こう、ってなってたでしょ? そうなったらこの前の約束した場所に行けなるなるし‥‥せっかく楽しみにしていたんだから」


 楽しみにしていた、と言われるとなんだかうれしい


「俺もお姉ちゃんと行けるのを楽しみにしてるよ」


「ホント! それじゃ予定どおり明日からね、10時には迎えに来るから」

 嬉しそうに話すミラはとても可愛く魅力的に感じた




 ◇




 仮入隊で一時的に学校を出て行っていた者達も皆、一応の期限を迎えほとんどの生徒は今日戻ってくることになる、校舎のある軍施設の門付近では帰ってくる先輩たちのお出迎えのため、1年から3年までの生徒たちが待っていてくれることもある。


 ミラの運転する車が門の前で止まり、車から降りる


「ありがとうお姉ちゃん」


「うん、明日10時だから忘れないでね、今日はちゃんと早く寝るのよ」


「分かったよ」


 ミラが窓から手を振り、俺もミラに向かって手を振った。車が遠ざかっていくのを確認し施設内に入る、そこには我が後輩の『欧米ズ』が口をあんぐり開けこちらを見ていた。


「よっ! 久ぶり、元気してたか?」


 放心状態の三人組は俺の声で我に返り、殴られるかと思うぐらいに掴みかかってきた


「「「 どうゆうことっすかー!! 」」」


 事の一部始終を見ていたんだろう? 何を聴きたいか分かってるけどココはシラを切ろう


「何のことかな?」 ニッコリ


「何ってさっきの女の人っすよ」

「お姉ちゃんってなんすか!? どこで拾われたんすか!」

「どこまで行ったんすか!」


 予想通りのリアクションで嬉しい、俺を以上ににヨイショしてくれる3人組と一緒にいると、なんだか社長になったような気分に浸れる、君たちは多分かなり出世できるよ、俺が社長だった場合に限るけど。


「あれあれ、さっきの事見てたのかー、まいったなーハハハ」


「見てましたよ2か月で何があったんすか! 教えてくださいよ」

 ものすごく必至だ、というか本気で聞いてきている


「あの女性はね、縁があって俺のお姉ちゃんになったんだよ」


「血が繋がってないんっすよね、てことは、てことはっすよ!」


 彼らはとても興奮しているね、ならばとどめの一言を・・


「まぁ、一応彼女は俺の姉的存在ではあるけど、向こうから求められたら‥‥断る理由なんてないよね」


「「「 いいなぁーあ! 」」」


 実際の所、ミラの勘違いで始まった兄弟ごっこであって、この3人が期待するような関係では無いのだけど、やっぱり男という生き物は、見栄を張りたがる生き物なのだ。


 ここは少しばかり見栄を張ってもいいだろう、それに後輩に夢を与えて上げるのも先輩の役割だからね。




 ◇



 欧米ズに、今持てる全ての力で自慢した後、帰ったらやることの一つであった事を果たすため校舎内に移動する、今の時間は大体この部屋にいるのは分かっている、俺は力強く扉を開けた


「たのもぉー!!」


「おわっ! ‥‥ビックリした-普通に入れ!」


「お久しぶりです先生」


「おう、無事に帰ってきたようだな」

 驚きながらも一瞬で冷静になれる先生は流石元兵士と思えた、でもその表情は優しい


「今日は、先生に挑戦しに来ました」


「ほぉ‥」

 ニヤリと笑い

「毎年、毎年‥‥お前らときたら懲りない奴らだなぁ、ちょっと実戦を経験しただけで強くなった気でいる、そのデカくなった鼻っ柱へし折ってやるから、今すぐ外に出ろ!」


「ういっす!」


 俺は練習用の刀を出し、いつもの訓練場に移動する。


・・・・・・・・・・・


 結果


 駄目でした、コテンパンでした。


 一撃も与えることが出来ず、ボロボロにされ転がされた。


「もっと精進しろよ」


 そう言って、今日もいい仕事をしたという顔で去っていった、追いつけていたつもりだったが、まだまだ遠かった。




 ◇



 翌日、軍学校の外に出るときは、学校の制服着用義務があったので、制服姿で門の前に立つ。

 

 ほぼ時間通りにミラが迎えに来てくれた、流石軍人職


「おはよーハヤト、まったかな?」


「いーや、時間ピッタリだったよ」

 

 昨日のうちに整えたのか、ミラは胸元まであった髪が、肩口ぐらいで切りそろえており、初めて見るであろう膝上のスカートを履いていた、そりゃそうだ、スカートを履いて戦闘なんかできるはずがない、そんなことが出来るのはファンタジーの世界だけだ。


「じゃ、行こうか」


「う、うん」


 車に乗る前はそうでもなかったが、助手席に乗った瞬間から何故だかやたらと、緊張してしまっている、


 鼻歌交じりで運転するミラと、チラッチラッと、スカートから出ている足をチラ見している俺を乗せて車は出発した。

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