ちびっこ勇者人助けをする
「そう言えば二人は何でこんな山奥に居るのさ?」
トゥエルが魚を食べながら聞いてきた。
「あー…実は…」チラリとユキミヤ君を見ると「お姉ちゃんに判断は任せる!」と言わんばかりのアイコンタクトを送ってきた。まぁ多分教えても大丈夫だろうと思い殺傷の件は伏せて事の事情を大雑把に説明した。
「ふーん…そんな子供が勇者になるなんて世も末だねぇ…」
「私もそう思う……」
うんうん、と二人でうなずく。
「でも…残念だけどこの山には魔王なんていないよ?だってこの山からそんな禍々しいオーラとか感じないし?」
「なっ…?!」
ガセ情報…?!オヤジめぇ……タダで色々譲ってもらったから怒るに怒れない…
「中枢まで登ってきた意味ってなんだったんでしょう…」
「ホントそれね……あー…1から情報探さないといけないのか―…ってそういえば…」
今更だがひとつ疑問に思ったことがあったせっかくだしちょっとトゥエルに話を聞いてみようかね。
「トゥエルは…どうして川から流れてきたの…?」
ピタリとトゥエルの動きが止まる、少し困惑した表情になる。
「…実は…この山に住むヌシにやられたんだ…」
「ヌシ・・・・?」
「アタシはちょっとした目的があってこの山にある祠に行っていたんだけど…そこに住んでいるヌシ様にボッコボコにされちゃってねー…気が付いたら川に流されてキミに釣り上げられてた…ってわけなのさ」
「…それだけ聞くと勝手に不法侵入して家主にボコられた…ってだけにしか聞こえないんだけど」
「いやいや、確かにそうなんだけれども…本来だったらヌシ様は温厚な方なんだよ~?最近では問答無用で入ってきたらぼこぼこにするようになっちゃったわけなんだけど…」
「ふーん…これも魔王復活の影響…?」
「どういう事…?」ユキミヤ君が魚をモグモグ食べながら聞いてきた。
「魔王が復活すると偶に生き物の精神を汚染して凶暴性を上げる事があるのよ…多分…ヌシ様も精神汚染の影響を受けてるんじゃないかしら…?」
そもそもヌシ様というのがどういったやつなのか知らないからもともと凶暴な人なんじゃないかという線も捨てられないけど…
「…ここでお二人に相談があるわけなんだけど」
「「?」」
トゥエルが少し期待した目でこっちを見ていた。…これはもしかすると……
「勇者なら困ってる人を見捨てたりしないよね!というわけでアタシの目的を達成するのを手伝ってくれない?!」
「やっぱりねー…」
正直こう来るとは思ってた、魔王封印とは関係ない事だし断った方がいいわよね…そう思い私は「残念だけど私達にそんな時間は…」そう言いきろうとした瞬間ユキミヤ君が
「良し…良いよ!困ってる人は助けないとね!」と言い出した
「えっ…?!」
「本当かい!ありがとう!流石勇者だ~!」
トゥエルは握ったユキミヤ君の手を思い切りぶんぶん振って勢いがすごい握手を交わした。
「いやいやユキミヤ君?!私達は魔王を封印しなきゃいけないんだよ?!こんな所で道草をくってるわけには…」
ユキミヤ君はいつものおどおどした感じの表情ではなく、きりっとした表情でしっかりと私の目を見さも当たり前のことのように
「困っている人が目の前に居たら助けないと。それが自分にできることの範囲ならなおさらね。」
「なっ…」
この子…本当に子供か…?!人間が出来過ぎてる…到底私にはまねできないわ…この真剣な眼差し…ダメとは言えそうにないわね……
「ハァ…分かったわ…そのヌシ様とか言う人から何か魔王に関する情報貰えるかもしれないし…協力してあげるわ」
「本当かい!ありがとう~!」
「お姉ちゃん…!」
ハァ…私って甘いなぁ……そう思い祠のある山頂へと目指すことになった。