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夜空に見えるのは青い地球  作者: 妃 大和


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12.王都の市

 広場をグルッと取り囲むように店が並び、その内側に屋台は二重に立ち並んでいた。広場の中心には何だか解らない像が建っていて、そのまわりだけ屋台は避けるように空いていた。

 広場からさらに奥に向かって細い路地が放射状につながっている。

 屋台のイメージとしてはフランスのマルシェな感じ。台の上に品物が並べられている。エプロンを着けている人がお店の人だろう。

 カラフルな品物が目を引いて、はじから見て歩きたいと女の子なら誰でも思うんじゃないかな。


 私達を引き寄せる甘いにおいの元はドーナツだった。

 形はおなじみ丸い輪っか。ココナッツの香りもする。外側にはピンク色の砂糖がコーティングされているチープだけどラブリーな外観だ。

 早速買って食べようかとも思ったが、まずは(いち)全体を見ることにする。


 二重に立ち並ぶ屋台のまずは外側をゆっくりと見て歩く。続いて内側。

 観光客のような人よりも地元の人が生活のために買い物する場所のようだ。

 食べ物の店が多い。八百屋とか魚屋のように幾種類もの品物を扱っているのではなく、屋台はほぼ単品。リンゴならリンゴだけ。オレンジならオレンジだけ。

 果物は地球と似たようなものが多い。魚はカラフルなのが多くて本当にあれを食べていると思うと何とも言えない気がしてくる。肉に至っては論外。考えたくないかも。

 ここが王都のせいか土産物のような雑貨も多く見かける。絵皿には風景やら人物が描かれている。王族か? 柔らかい金属のオブジェは飾るのか?

 あ、あのツルで編んであるカゴかわいい。手作りかな。手編みのカバンも良い感じ。

 カラフルな丈の短いマントは単なるおしゃれのために着るのか? 巻き付けて身に付ける布はカラフルで目を引きつける。 


 色々と見て歩けば、見慣れないものを見ている私は自然と商品をじっと見定めていたようで、そこかしこから声をかけられた。

 始めは聞き取るのもかなり意識して感じないと意味が伝わってこなかったが、うなずいて会話を促せばだんだん要領が分かってきた。


「霧島さん、これがここのお金。好きなものを買って会話してみて。」


 シュア君が私にお金を渡してくれた。紙幣には数字の5000と一緒に5本の剣のような図柄が入っているものと1000と1本の剣のもの。数字は地球と一緒みたい。アラビア数字が一緒なら10進法も一緒かな。


 (いち)をまわって目をつけていた一件の店に向かう。

 刺繍細工の小物を扱う店だ。

「これください。」

「○○※2,500▲※※、●××○※※」

 ちょっとふくよかな体つきで犬耳をもつ人間に近い感じのおばさん獣人に声をかけたら、予想どおり聞き取れない裏月語で返事が返ってきた。

 私が指さしたのは細かな刺繍がされたハンカチのような布。金額は聞き取れた。うーん、赤って言った? 今見ているのは青が多い柄だから赤もあるってことかな?


「私、裏月語が苦手なのでゆっくり話してください。」


「※※○※●××※」《ああ、ゆっくりね。》

 相手に真摯に伝える意思と理解しようとする意思、その両方がないと会話は成立できない。

 今まで無意識に会話してきていたけど、すごいことしていたんだなあ。

 ハンカチ屋のおばさんは右手に青いもの、左手に赤いものを持ち身振りを交えて話しかけてくれる。ははは、言葉だけでは私との会話は難しいと判断されたみたい。

 私も『こっち』と青いものを指さし、代金を払う。

 おー、ミッションクリアです!


 おつりのコインを持って例のドーナツを買うことにした。

 昼食を後で食べるので1個をシュア君と半分こすることにする。

 屋台の邪魔にならないように、広場中央の像の足下に行って、ドーナツを食べることにした。

 両手でドーナツを持って一口食べれば、幸せな気分になれた。ちょっと甘さが歯に染みるような強烈さだけど。

 …甘いものって人を幸せにするよね。立ち食いしていると、学校帰りにコンビニに寄ったことが思い出される。


 ちょっと遠くを見るような状態の私の耳にその音は突然聞こえてきた!!


 =BooooWn,BooooWn,BOOWWWWWWWWWWWWWWBOWWWWWWWWWWW・・・・・・・・!!!!!!!!

 =GasYaaaaN,DoKKKaaaaNN・・・・・DooooooNNN・・・・・・・

 《《《きゃあ!》》》

「※※×◇※」「●●○×××」「※※ーー※」


 バイクのエンジンの重低音と人々の悲鳴、バイクが屋台にぶつかって店が壊れる音、物が落ちる音。いろいろな音が混じり合っている。

 何事かとそちらに目をやれば、こちらの世界には不釣り合いな大きなバイクが屋台にぶつかりながら、空中を飛び跳ねている。幸い身体能力の高い獣人ばかりのせいかバイクに跳ねられている人はいないようだ。


 と、スローモーションの映画を見ているような錯覚がした。

 安心したのもつかの間、その飛び跳ねているバイクに乗っている令嬢らしき人が違う人に抱きかかえられて下ろされたと思ったら、あろうことか無人のバイクが幼い子供に向かってダイブして行くではないか!


 目を見開く子供。

 ああ、猫が車見て動けなくなって轢かれるのと一緒だ…


 気が付けば、私の身体は動いていた。



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