2話
vTuberになると決心して一夜が明けた。
鏡の前には寝ぐせが付き、無職1日目となった私がいた。
良いデザインは形から。
特に意味があるわけではなく、出来る限りのオシャレな服を着て、バッチりメイクをする。。
鏡の前には、見事な美女がいた。
噓である、どこにでも居そうな21才の女性が立っていた。
陽キャにも陰キャにも属さない普通の女性。
普通が1番と言う言葉が世間一般に浸透しているが、それは持ったものが言える言葉だろ!と心の中で悪態をつきつつパソコン前に座る。
専門学校に通う前に両親より貰った高すぎるスペックのパソコン。
友達が出来れば、ゲームなどで活用できたのであろうが、そんな未来は訪れなかった。
貰って3年、ようやくスペックが生きると思い、私は自分のvTuberのモデルを書き始めた。
…。
デザインに困るかと思ったが、そんなことはなかった。
可愛いイラストを死ぬほど見てきた私である。
タッチペンが止まることはなく、描き続ける。
5時間が経過し、2人の可愛い美少女がパソコン画面に映し出される。
腰まである長い銀髪、青い瞳、薄い水色のワンピースを着た、少し胸が大きい美少女。
もう一人、肩までの黒い髪、黒い瞳、赤が主体の着物を着た、慎ましい美少女。
中々の出来である。
自分のデザイン力を満足しつつ、vTuberとしてどちらのモデルを使用するかを考える。
元々日本の美少女が好きな私としては、黒髪は外せない。
しかし、vTuberとして世間一般的に受けるのはアニメキャラのようなPOPなイラストである。
どちらを私のモデルに使用するかと考えているときに、先週みたロボットアニメをふと思い出した。
そのアニメでは、味方と敵のロボットが合体して、より強大な敵へと挑んでいた。
パソコンに映っている2人の美少女。
この2人の良いとこ取りをしたら?と、私の脳に電流が走る。
1時間後、腰までの艶がある黒髪、サファイアの様な蒼い瞳、銀とも白とも言えるワンピース、、、そして少し胸がある誰もが認める美少女がそこに居た。
完成だ、思わず顔の筋肉が緩む。
この美少女が画面の中で動くことを想像しただけで、ニヤニヤしてしまう。
デザインが完成し、残りは2Dの設定用のデザインと、美少女の設定である。
2Dの設定を今日一日でやるのは難しく、他にも配信するとなれば様々な機材が必要である。
出来ることから始める。
無職となった私には時間はいくらでもあるので、美少女の設定を考えることにした。
年齢は私と同じ21才、身長は158cm、体重は45kg。
アニメとゲームが大好きな大学生という設定。
そして一番大切な名前を考える。
名前は配信では自分の名前と近しい方が良いと言う。
余りにもかけ離れていると本名を言ってしまう、いわゆる配信事故を起こす可能性があるからだ。
どんな名前に使用かと考えているときに、昔からゲームで使用する名前を思い出した。
その名前はもう一人の私と言っていいほど使ってきており、間違えることなどないと思った。
こうして、この日この時、新たなvTuberが1人生まれた。
「水華 桜」としてのスタートを切ったのである。