1話
「ただいま。。。。」
ドア開け、アパートの1室に入って最初に発した言葉であった。
誰かの言葉が返ってくることはなく、シーンっとした部屋に静寂が訪れる。
時刻は23時になろうとしており、デザイナーとして最後の日を迎えた私には何とも言えない気持ちで立っていた。
立っていても何か起きるわけもなく、靴を脱ぎ捨て、コンビニで買ったお弁当をレンジに入れた。
レンジからブォーんと温める音が響く中、私はこれからのことを考えた。
色々なことがあり、何もかも嫌になり、気持ちの整理が難しい。。。。
一言でまとめるなら会社を辞めたのである。
専門学校を卒業して、2年努めていた会社を辞めた。
ただそれだけのことである。
会社は仕事内容より人間関係のあたりハズレで決まるとよく言われているが、
そう言う意味では私には当てはまらない。
人間関係は良好。しかし仕事内容が合わなかったのである。
小さい頃から漫画やゲームが好きで、イラストやデザインを仕事にしたいと考えて専門学校に行った。
好きなイラストやデザインを勉強しながら、友人と交流を図る。
…。
噓である、友人など出来ず、真面目に授業を聞くだけの1年であった。
社会のレールに乗るべく、学校が斡旋する会社に就職した。
そして今日辞めたのである。
イラストやデザインといっても、十人十色、千差万別。
私が好きな可愛い女の子が書かれてものはそこに存在していなかった。
会社の広告、オシャレなデザイン。。。。
求められているのは、おおよそ私が想像していた仕事とかけ離れていた。
それでも周りの先輩社員は皆優しく、辞めると中々言い出せず今日を迎えた。
辞めると言ったあとも「次も頑張って!」「業務が大変でごめんね」など優しい言葉をたくさん頂いた。
次など考えておらず、優しい言葉をもらう資格など到底あるはずもなかった。
ここより良い職場などあるのだろうか、と考えている内に「チーンっ」という音ともにレンジで温めが終わった。
ソファーに座り、お弁当を食べつつ、日課の動画サイトを開く。
○○してみた!、雑談配信、切り抜き動画など特に決まったものがあるわけではなく、
中途半端に動画を見ていく。
私とは違いキラキラとした配信者さんが、面白い動画を上げている。
見ていて涙が出そうになった。
新しい仕事もなく、これからの未来も見えていない私とは大違いである。
そう思いながらも、スマホをスクロールし動画を変えていく。
…。広告がながれた。
新しくデビューしたvTuberの広告であった。
可愛いイラスト、可愛い声、煌びやかな衣装。。。。
熱くなるものを感じた。
私は可愛いイラストが大好きだ。そして可愛いイラストを描くことができる。
1年の専門学校を真面目に過ごしたおかげで、2Dなどの知識もある。
極めつけに今日までの仕事でオシャレな背景をデザインすることができる。
「これだ!」
思わず口から言葉がこぼれた。
vTuberになることを決心した瞬間である。




