その後
最終話です。
敏兄ぃが消えてしまってから数十年の時が過ぎ、私は天寿を全うした。
もちろん、生涯で『彼氏いない歴=年齢』を貫き通したし、死因も病死。約束はしっかり守った。
私の死後、幽体になって天からバインダーに挟まったアンケートを見た時は驚いた。
質問1の、未練の有無には(いいえ)。質問3の、転生先の希望には(人間)で返した。
そして49日後、私より数日早くに転生したらしい敏兄ぃの後を追い、私は転生した。
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「今世も女子で本当に良かった!」
夏休み1週間前に夏風邪を拗らせて寝込んだ翌朝、私は前世である太田美香の記憶を取り戻した。
今世の私の名前は生田 美結。花の高校一年生。顔は、前世より可愛い系になっているけど、そこまで変わらない、平凡そのもの。別に、極端に不細工なわけでもないから割と気に入っている。
敏兄ぃの方も、同い年の幼馴染として記憶のない内から交流を持っているし、まさに理想的なポジションで生まれ変わっている。
性別だって、前世と同じ。私は女で敏兄ぃは男。
それに、なんということでしょう!偶然にも私が記憶を取り戻したのは、美結が敏兄ぃの転生先である幼馴染に、恋心を自覚した翌日でもあるのです!!
さすが私。前世の宣言通り、また彼に恋に落ちるとは。
時間を確認する時に窓の外を見て気づいたが、記憶と共に霊が見える体質まで蘇ってしまったらしい。それでも、敏兄ぃにもう一度会えるだけで十二分に嬉しい。
神様に、この溢れんばかりの感謝を伝えたくてたまらない。
今年の夏祭りでは、お賽銭を弾まないと!
布団の上で喜びからバタバタ暴れていると、ドアがノックされた。
「美結?起きてるのか?見舞いに来たんだけど」
私の部屋を訪れたのは、近所に住んでいる幼馴染兼前世想い人こと敏兄ぃの転生先、久山 敏志。
「あ、はい!起きてます!」
びっくりしたから、思わず敬語を使ってしまう。それに、美香の記憶が戻ったばかりで美結の記憶が薄く、距離感が掴みにくかったのも理由の一つ。
「何で敬語?…まあ良いや。おばさんから頼まれて、お粥持ってきた。入って良いか?」
「入って良い?」と聞かれた時には既にドアは開けられていて、寝込んでいてボサボサになった髪やヨレっとしたパジャマを見られてしまい、慌てて布団に潜り込む。
「ちょ、ちょっと!なんで返事してないのに入ってきちゃうの!?そんなんだから、敏志には彼女できないんだよ!!」
そして、誤魔化すように敏志を詰る。いつも、基本はこんな感じだったはず。甘酸っぱさの欠片もない、気心の知れた相手特有の理不尽なセリフが飛び交う、そんな関係。
だからこそ、恋心を自覚した私はすぐにこの感情を封じ込めた。兄妹と言っても過言ではないこの関係が、無くなってしまうのが怖かったから。
でも、今の私は違う。
諦めてばかりではいずれ、自分の心が負荷に耐えられなくなると知っている。
怖気付いて逃げた結果、一番後悔するのは自分だと知っている。
行動を起こせば、その労力と覚悟の分の見返りがあると知っている。
だから、私は積極的に行く。体調が万全じゃない今は無理だけど、この夏風邪が完治したら、どんなに鈍いギャルゲー主人公でも気づけるくらいにアピールしまくる。
グダグダと色々考えている内にお粥完食。その後、風邪で弱ってる体で敏志に甘えて皮を剥いてもらった林檎を齧りながら、心の中で宣言する。
覚悟してね、敏兄ぃ。
「……なんか、寒くなったような?」
ブルっと背筋を震わせ、腕を摩りながら敏志はそう呟いたが、私は、
「気のせいでしょ」
とバッサリ切り捨てた。
この後はご想像にお任せします。
私はここで力尽きました。
その内、美結ちゃんの奮闘をあげるかも知れませんが、あまり期待しないでいてください。年単位かかりかねないので。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。m(_ _)mペコリ




