008 招かれざる客
茂みから出てきた男の頭は現実世界のライオンそのものだった。かくいう俺も本物は動画でしか見たことがないが。
ライオン頭の獣人は鎧を着て左右の腰には斧を携えている。明らかに戦士風の出で立ちに俺は嫌な空気を感じた。
隣のヒナを見ると、訝しげな表情で獣人の様子を窺っている。俺は小声でヒナに訊いてみた。
「ヒナ、《隠遁》ってなんだ? スキルなのか?」
「ええ、その名のとおり身を隠すスキルよ。自分よりある程度レベルの低い相手にはほぼ確実に成功するの。もっとも《気配感知》や《看破》というスキルがあれば見破ることができるし、自分のレベル以上の相手には効きが目が薄いわ」
「ヒナはどっちだ?」
「多分、後者のほうね。私は《気配感知》をつけていないし、《看破》を使っていないもの」
今のヒナの言葉から察すると《気配感知》はパッシブスキルで《看破》はアクティブスキルのようだ。
そして、目の前の獣人のレベルはヒナより低いだろうということがわかった。
どおりで俺には見えなかったはずだ。
しかし俺たち相手に《隠遁》を使うということは、どうも友好的とは思えない。見た目からして強そうなこの獣人が初心者向けの<マクイナの森>にいるのは不自然だ。
こいつの目的はなんなんだ……?
「《看破》は使ったようには見えねぇし、《気配感知》持ちか? 俺様よりレベルが上には見えねぇが、まぁ……今回はダイスの目が悪かったってことで諦めるか」
ダイス……? それもスキルなのだろうか。
ヒナが俺の視線に気づいて、補足で説明をしてくれる。
「《隠遁》の成功判定に失敗したって言いたいのよ」
「なるほど。で、どうする? なんかヤバそうなオーラを醸し出しているけど」
「相手にせず森を抜けましょ。タイガくん、できるだけあの獣人から離れて歩いて。万が一のときは私がなんとかするけれど……念のためよ」
「了解」
俺たちが獣人を迂回するように歩き出すと、
「ちょっと待ちな! 無視はねぇだろう。有り金全部置いていけば、命だけは助けてやってもいいんだぜ?」
両腰の斧に腕を交差して手をかけると、一気に引き抜いた。
こいつ、追い剥ぎかッ!
こんな森の中で金銭を要求してくるなんて!
「タイガくん、止まって!」
ヒナが俺を庇うように前に出た。そして戦いの意を示すように抜剣した。
獣人が厭らしく口元を歪める。
途端、獣人の頭の上にステータスウィンドウが現れた。パーティーを組んでいるヒナの頭上と、俺の視界の右上にも見えるのと同じ簡易ステータスだった。
「ヒナ……あれ見えてるか!」
「ええ……ステータスを可視化したんだわ。威嚇のつもりのようね」
今の口ぶりだと、ステータスはわざと見えるようにできるようだ。
しかも、どうやらその行動は威嚇目的みたいで、俺に対しては十分その効果はあったと言えよう。
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【殺戮者】ザックス
獣人
レベル:43
職業: 暗黒騎士
職業レベル:214
HP(生命力):6,742
MP(魔力):433
SP(技力):277
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【殺戮者】ザックス。それがその獣人の名だった。いや、名前はザックスか。その前に付いている【殺戮者】って……称号なのか?
そんなことより!
なんとレベルは43もあり、そのHPはヒナに迫る勢いだ。それと、確か獣人にはSTRに+19%の補正が付いていたはずだ。レベルはヒナより低いがザックスのSTRはヒナを上回っていると予測できた。さすが戦闘特化型と女神イリスが言っていただけはある。
いちおう、ヒナと俺のステータスを確認しておく。ヒナは前と変わらず、俺はつい先ほどレベル7になったところだ。
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ヒナ
エルフ
レベル:50
職業: 精霊騎士
職業レベル:154
HP(生命力):6,930
MP(魔力):950
SP(技力):375
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タイガ
人間
レベル:7
職業: 戦士
職業レベル:6
HP(生命力):183
MP(魔力):17
SP(技力):7
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ザックスに殴られただけで、俺の心許ないHPは一撃で消し飛ぶのは目に見えている。かといって女の子だけに戦わせるのはどうなんだと自問自答する。
「攻撃力は私ほどじゃないと思うけれど、タイガくんはかすりでもしたら即死するレベルだわ」
「ああ、それは俺でもわかる」
「だから私より前に出ないように距離を取って、何かあったらすぐ逃げられるようにしておいて欲しいの」
「……ああ」
とは言ったものの、レベル50のヒナにそこまで言わせる相手に俺を庇いながら戦うのは厳しい気がする。いっそ俺はデスペナ食らって、ヒナに気兼ねなく戦ってもらったほうがいいんじゃないかとも思ったが、この手はあとで怒られそうなので一旦却下とした。
「タイガくん!」
ヒナの叫び声に我に返ると、すぐ目の前までザックスが肉薄していた。
殺られるッ!
と死を覚悟するが、間一髪でヒナがフォローに入った。
ザックスの右手から振り下ろされた斧をヒナが剣で防いでいたのだ。
両者の移動速度はまるで動画の早送りのようで、目で追うのがやっとだ。俺があの速度で移動できるとは到底思えない。俺のAGIが14に対してヒナのAGIは139もあるのだから当然だろう。対して獣人であるザックスにはAGIに+14%という補正が付いていたはずだ。たとえ俺がこの二人と同レベルだったとしても、速度では敵わない。
「ほう、いい武器だ。モンスターからのドロップ品か」
「そうよっ!」
険しい顔で返すヒナとは対照的にザックスは厭らしく笑う。
「俺様のはプレイヤーからの強奪品だ」
ザックスが左手に握った斧でヒナに襲いかかった。ヒナはいとも簡単そうにその攻撃を躱すと突きを繰り出した。
ヒナの剣の切っ先はザックスの鎧には僅かに届かず空を切った。
「まさかPKしてるの!?」
「俺様の称号が見えるだろ? 【殺戮者】。PK千人以上で獲得できる称号だ。輝かしい勲章だ」
ザックスはそれを誇るかのように胸を張った。
「なんて人なの……!」
PKとはプレイヤーキラー、すなわち他のプレイヤーを殺す行為だ。ザックスの言動から、PKによって他のプレイヤーの装備品を奪っていることが容易に想像できる。
PK千人以上ということはゲーム発売日からプレイしていても、一日あたり十人以上PKしている計算だ。ザックスが意図的にそういうプレイをしているのは明らかだった。
ヒナの剣とザックスの両斧がぶつかり合う。互いに一進一退の攻防で、大きなダメージはまだない。
時折、それぞれの武器が光を放っているので、何かしらの攻撃スキルを発動しているのは間違いないだろう。
「《エレメンタルソード・サラマンダー》!」
ヒナの剣が一瞬輝いたかと思うと、その周囲に炎を身に纏った全長二十センチほどのトカゲに似た爬虫類のような生物が三体出現した。
「うおっ! 精霊召喚かッ!? お前、【精霊騎士】か!」
ヒナの攻撃に怯んだザックスだったが、すぐに《サラマンダー》を斧で振り払うと、大きく後退った。
「おっと! デスペナ四度食らってリーチだからよぉ。簡単に死ぬわけにはいかねぇんだわ」
「デスペナを四回!? えっと……デスペナ四度目って経験値減少……レベルが下がるんだったよな?」
「おうよ。おかげでレベル50カンストしてたのに、またレベル1からやり直してやっとここまで来た」
「本当……なのか?」
レベル50の状態で四度目のデスペナに遭い、そしてまたレベル1から43まで上げたってのか!?
「嘘は言ってないと思うわ。職業レベルが私より60も上なのがその証拠よ。一体、どれだけ経験値を稼いだのよ……!」
戦闘経験はレベル50のヒナ以上か。これは厄介な相手に捕まったな。それにしても、デスペナを四度食らってまだPKを続けているこいつの心境が理解できない。次に死んだら<DO>から強制退場なんだぞ……!
「俺様の攻撃を凌いで反撃に転じるなんざぁ、レベル40台……いや、お前もカンストしてるのか? いいねぇ、下手すると俺は死ぬな。このスリルがたまらねぇ」
ザックスはヒナを強敵だと認めた上で楽しんでいるようだった。
「だったら俺も本気で行くぜッ!」
左右の斧を交差してザックスが咆哮をあげる。振り下ろした斧を禍々しい黒い靄が包み込んだ。
スキルなのか……!
ザックスは巨体に見合わない俊敏な動きで、ヒナとの間合いを詰めた。ヒナの体を挟み込むように、左右横方向からザックスの斧が襲いかかる。
「《ギロチンアックス》!」
「くっ……!」
左からの斧を剣で防いだヒナは、無防備な右脇腹に斧の直撃を受けた。
「ヒナァァァァァッ!」
両方は防げないと判断したのだろうヒナは、片側の攻撃を防ぐことに専念したようだ。ヒナの身を守る金属鎧とザックスの斧がぶつかる音が、耳をつんざくように甲高く響いた。
左方向に吹っ飛んだヒナは、近くの大木に体を叩きつけられた。ヒナのHPは今の攻撃で6,930から4,784まで激減した。ザックスの《ギロチンアックス》で2,146ものダメージを受けた計算になる。俺なら十回殺されてもお釣りがくるだろう。しかもそれが片方の威力だけというのが恐ろしい。本来なら左右からの同時攻撃であろうそれは、俺を戦慄させた。
俺は無我夢中でヒナの元に駆けていた。今ザックスから攻撃を受ければ俺は死ぬ。そんなことよりヒナが追撃に晒されれば彼女が危ない。そっちのほうが心配だった。
幸い俺はザックスの攻撃を受けることはなかった。おそらく相手にされていないのだろう。
「ヒナ! 大丈夫かッ!」
俺が駆けつけると、ヒナは剣を地面に突き立てて起き上がった。
「タイガくん、動いちゃ駄目じゃない! 危ないから下がっていて!」
「俺のことより、今の攻撃はヤバかったんじゃないのか!」
「そうね。今のは【暗黒騎士】のスキルだわ」
「ヒナ、俺のことは放って逃げるんだ! 一人ならAGIで勝るヒナなら十分逃げられるはずだろ?」
「……本気で言ってるの?」
ヒナは苦虫を噛みつぶした表情になる。ああ、怒ってる。怒ってるぞ……多分。だけど、俺を庇うためにヒナがデスペナになるのは見過ごせない。これが最良の策なんだ。
「私なら大丈夫よ。続けざまに食らわなければ問題はないわ。このくらい《ヒール》で回復できる範囲よ」
そう言ってヒナが《ヒール》を発動させると、一瞬にして彼女のHPは全快した。
おお、《ヒール》有能。俺も《ヒール》を覚えておきたいな。
それにしても【暗黒騎士】のスキルだという、あの《ギロチンアックス》は厄介だな。あの瞬間だけザックスの動きはヒナを上回ったように見えた。ヒナも続けて食らうとマズいというような発言をしていることから、ザックスを退かせるのは至難の業だと思った。
「やるねぇ! 俺様の《ギロチンアックス》を半減させるとは……完全に決まればレベル50のプレイヤーでも即死する攻撃だぜ? その鎧かなり防御力が高いな。お前を殺して俺様の装備にしちまうかぁ」
「残念ね、あいにく女性用の鎧であなたには装備できないわ。それに私に勝つつもりなのかしら?」
「けっ、口の減らねぇ女だ。今すぐ黙らせてやるぜぇ!」
ザックスが再び動いた。
さっきと同じように両手の斧を黒い靄が包み込む。
来るッ! 《ギロチンアックス》だッ!
それは俺の目で捉えることのできないスピードで迫ってきた。気づくともう目の前に両側から斧を振るうザックスの姿がかろうじて視認できた。
今度はヒナも反応できなかった。
《ギロチンアックス》の直撃を受けたヒナは、腰が砕けたようになる。ヒナのHPは大きく削られてその場に倒れそうになる。しかしかろうじて足を踏ん張った。残りHPは100を切っている。なんて威力だッ!
「終わりだッ!」
ザックスが勝利を確信したかのように吠える。
俺は剣を構えたまま無意識に叫んでいた。
「させるかあああああッ! 《クラッシュ》!」
俺が咄嗟に放った《クラッシュ》はザックスの横っ面を斬った! ……はずだった!
しかしザックスの頬には一辺の傷もつかず、体毛が僅かになびいただけだ。HPは1すら減っていない。これが圧倒的なレベル差。たとえ俺が何百何千回と《クラッシュ》を放ったところで、ザックスにはかすり傷一つつけることもできないのだ。
そして、その獰猛な瞳で俺をギロリと睨みつける。
「あぁ?」
「《クラッシュ》! はあああああッ! 《クラッシュ》!」
それでも俺は止まるわけにはいかなかった。そうしないと無防備なヒナが追撃を受けてしまう。俺は無我夢中でSPの続く限り《クラッシュ》を連発する。
SP切れでスキルを使えなくなった俺は、闇雲に体当たりを敢行した。その瞬間俺の体がまばゆい光を放った。
これは……!? この光には既視感があった。そうだ、これはウルフ戦でトドメを刺した時の……あのときと同じだ!
クリティカル……! 確か野次馬の一人がそう言っていた。
体に衝撃が走り俺の体は、仁王立ちしているザックスに弾かれて尻餅をつく。
今ので俺のHPは3まで減った。ザックスのHPは1減っていた。
嘘だろ……!? クリティカルで攻撃して与えたダメージが1で、逆に俺が瀕死だなんて……!
ザックスは首を左右に傾けて小気味よく鳴らすと、牙を剥き出しにして威嚇してきた。
「《クラッシュ》だと? けっ、雑魚が。クリティカルでそのダメージだと、お前のレベルは20もないだろう。デスペナ味わえや!」
ザックスが右手の斧を振り上げた。
左手に握った斧はだらんと下げている。まるで俺には片手の通常攻撃で充分だと言わんばかりだ。
俺は死を覚悟した。為す術がないとはこういうことだ。
「タイガくんッ! どいてッ!」
そのときすぐ後ろでヒナの声がした。
俺はヒナの指示に従い、よろけながらも体を横にずらした。
「なんだとッ!」
「《エレメンタルソード・シルフ》!」
ヒナが叫んだ瞬間、彼女の剣を包み込むように可愛らしい妖精が三体出現した。
妖精を纏ったヒナの剣が俺の横を通り過ぎる。一陣の風が俺の顔を撫でた。
直後、ヒナの剣はザックスの肩から胸にかけて斬撃を浴びせる。
「ぐおおおおおおおおおおおッ!」
ザックスは猛烈な勢いで吹っ飛んだ。そのHPは大きく減少して5,574まで減っている。ヒナの放った《エレメンタルソード・シルフ》は1,100以上のダメージを与えたことになる。
ザックスは背後にある木々をへし折りながら飛ばされていった。
「ヒナ!」
「タイガくんが隙を作ってくれたおかげで《ヒール》する余裕もできたし、スキルを使うことができたわ。HPが減っていたから本来の威力にはほど遠いけれどね」
万全じゃなくてこれほどとは、完全な状態ならどうなるのだろう。ザックスの《ギロチンアックス》ほどの威力はないにしても、俺なら何回死ねるんだ。
ヒナの簡易ステータスを見るとHPは3,809まで回復していた。そしてザックスがすぐに現れないのを確認してから、すかさず《ヒール》で俺と自身のHPを全快させた。
「やっぱり《ヒール》は有能だな。一回でどのくらいHPを回復できるんだ?」
「今の私だと4,200くらいかしら。術者のレベルに加えてINTやMNDそれにDEXの値に左右されるから、人によって違うんだけれどね。私はアクセで【タリスマン】を装備しているから+500の補正もついているの。詳しくはあとで説明するわ。今は目の前の相手に集中しましょ」
ヒナが言い終えるとほぼ同時に、木々の間からザックスが現れた。その顔は怒りの形相だ。
「今のは痛かったぜぇ……さすがクラス3ジョブの【精霊騎士】だな!」
ザックスは《ヒール》を使わなかったのかHPは減ったままだった。
「あいつHPを回復していないな。この程度のダメージは余裕ってことなのか?」
「《ヒール》を習得していたとしても使えないのよ。魔法やアイテムでの回復無効。【暗黒騎士】のジョブに課せられている制約の一つよ」
「そんな制約が……。《ギロチンアックス》の威力は凄まじかったからな。【暗黒騎士】は攻撃特化のジョブか。そこへ回復手段も制限されてなかったら、手のうちようがないもんな」
「そうね。特定のジョブに有利にならないようになっているのよ」
「なるほど」
ザックスは大きく息を吐くと、両手の斧を腰にしまった。さっきまでの怒りの表情ではなく、少し落ち着いたようだ。
「【暗黒騎士】でお前とやり合うのは、ちと分が悪いみてぇだな。わぁーった。今回は手を引いてやる。だがお前の面は覚えたからなぁ……それと男のほう。お前もだ! 俺様に傷をつけた借りはいずれきっちり返させてもらうぜ?」
いや……たったの1しかダメージを与えられなかったんだが、それで恨まれるのはなんだかな……。
ザックスの言動から一旦休戦になりそうな気配を感じた。
やがて、ザックスは「俺様に狙われてることに震えながらログインしろや」と捨て台詞を残して森の中に消えていった。
その直後、軽快な効果音が頭に響いた。
俺のレベルが上がったようだ。
<マクイナの森>に静寂が戻った。今は木々の上でさえずる小鳥の声しか聞こえない。
「安心して。もうどこかへ去ったみたい」
「はぁ~……。体中から冷や汗が流れっぱなしだよ……」
俺は緊張が解けてその場にへたり込んだ。
そんな俺を見下ろすような格好で、ヒナが腰に手をやっている。
「それよりタイガくん。どうしてあんな無茶をしたのよ。危うくデスペナになるところだったじゃない」
「ごめん。それについては謝るよ。でもヒナを盾にして自分だけ助かろうなんて思っちゃいないし、そんなことできるわけないだろ」
「…………どうして?」
「いくらヒナのレベルが高いって言ったって、その……女の子を傷つけさせるわけにはいかない……から」
ヒナが目を丸くする。
少し間を置いてから、ヒナは顎に手をやった。
「……ありがと。優しいんだね。でも<DO>はMMORPGで老若男女の区別なく戦闘があるゲームなんだから」
「まぁ、そうだけどな。……とにかく、俺はヒナが怪我をするところなんて見たくなかったんだよ」
俺は込み上げた恥ずかしさを紛らわすために、ヒナから顔を背け頭をかいた。だからヒナが今どんな顔をしているのかはわからない。だけど、くすりとヒナが笑った声が聞こえた。
俺たちの会話が騒がしかったのか、木々の間からジャイアントボアが二匹姿を現わした。俺たちはすぐに臨戦態勢に入りあっさりと迎撃する。俺も低レベルのモンスター相手ならかなり手慣れてきたようだ。それにザックスと比べたら緊張感がまるで違うので、余裕を持ち落ち着いて行動できた。
戦闘が終わって<ハオリオの町>に戻ることにする。<マクイナの森>を出る直前、ヒナが立ち止まった。
「どうしたんだ? もうすぐ森を抜けれそうなのに」
「タイガくん、一つお願いがあるんだけれど……」
「えっ、急に改まってどうした?」
「私が<DO>をプレイしていることは学校では秘密にして欲しいの。もちろん私とパーティーを組んでいることは絶対に秘密よ」
ヒナは真剣な表情で告げた。




