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空中逃避

ハーネスを外し、僕達四人は空中へ逃げた。


リヒトと僕が周囲を警戒し、ソフィアをエレナさんがおぶる。


「救急ユルトまではあの方角をまっすぐよ!あの赤い光が目印ね!」


かなり遠い…光というか…点だ


「僕達が周りを見てます!エレナさんはまっすぐにソフィアさんを!」

「わかった、アキラ君は右、リヒト君は左方向を注意して!」


…しかしこうも、そのまま飛ぶにしては目立ちすぎる。何か手はないか…擬態とか…

擬態…ふと上を見る…これだ!


「エレナさん、闇魔法を下へ薄ーく広げてくれませんか?」

「えぇ、」


エレナさんが四人の下へ闇魔法を広げる。


「ありがとうございます。では…《星屑散らし》」


薄いカーテンのように広がる闇魔法を飾りつけるように、粉状の光魔法を散らす。


「綺麗ですが…アキラさん、これは一体」

「下から見ると星空に紛れるようにしました。…まぁどこまでうまくいくかはわかりませんが、何もないよりマシです」


その後僕たちは夜間視用の魔道具を付けたり外したりしながら周囲を確認した。


「エレナさん…2時の方向に魔物っぽい影が…」

「…ちょっと光量下げれる?」


エレナさんが夜間視用の魔道具を付けて魔物らしきものを凝視する。そこにはコウモリのような翼を持った魔物の姿が。

遠目から見てもわかる、僕達を取って食べるには充分な大きさ。


さらによく見ると、その魔物の翼や全身からは蜘蛛の巣やボロ雑巾のようなものが靡いている。


「…フライングウェブよ、みんな左へ寄って!兎に角距離取るよ!」

「了解、」

よりによってアイツかよ!


「エレナさん、アキラさん、フライングウェブってなんですか!?」

「別名コロモリュウ!蜘蛛糸みたいなのを自分の翼に纏う習性があります!」

「そ、そいつは人食べるんですか!?」

「死亡事例はある!」


エレナさんの指示に従い、コロモリュウを軸に旋回するように方向を変える。

コロモリュウはそのまま前方へ飛翔してるが…急に動きを止めた。


空中で静止…ホバリング出来るのか?

でも、翼は一切動かしてない…僕達みたいに飛行魔法だけで空中に浮いてる。

そっちの方が効率いいのか?


いや、そもそも何をするつもり?

…よく見ると翼を大きく広げてそれをそれぞれ別々の方向へ向けている。

まるで風向きか何かを探ってるような…


「…ん?」


と思いきや、突然両翼を僕達の方向へ向け始めた。

翼端からは蜘蛛の巣のような布が広がっている。


「エレナさん…もしかしたら…」

「えぇ…バレてるかもね…」


「えっ…」

リヒトが青ざめる。

「ちょっ…ちょっと待って…」


リヒトはそのままエレナさんの方に駆け寄り。ぐったりとしているソフィアの手を握った。

本当にこの子が大事だということがよく伝わる。


「フライングウェブって、あの翼にまとった糸や布で何かを感知してると言われてるの。風なのか、魔力なのか、具体的に何に反応してるかはまだわかってないけど」

「…ただ、今こうして感覚器官を向けてるってことは…すでに僕達に照準を合わせてるかもしれないってわけ。…エレナさん」

「いいえ、まだ擬装は解除しないで。他の捕食者が視覚頼りに襲ってくるかもしれない」

「わかりました…」


しかし、コロモリュウがいつ、どのように襲ってくるか判らない…

「確実に僕達の動き読んでますよね?」

「えぇ、この一定の速度で飛行すると…恐らくあの子は私達の動きを先読みして襲ってくるわ」


「あの…二手に分かれてあの魔物を惹きつけてる間にソフィアを運ぶのはどうでしょうか?」


そう提案したのはリヒトだった。

彼の手は恐怖に震えていた。


「動きを…先読みするなら…僕がその一定の動きで行きます。だから…」

「リヒト君、二手に分かれるのは禁物よ。三人だと、片方が一人になるわ。そしてあの子は必ず一人の方を選ぶ。捕食者はそういうものなの」

「…だったら!僕にやらせてください!必ず生きて帰ります、だから…ソフィアを…助けてください…!」


リヒトは深く頭を下げた。


「僕だって冒険者です…危険は覚悟したます…でも…ソフィアが死ぬのは嫌なんです。自分の死より辛い人なんです!お二人にもそんな人居ますよね!?」


…!!

「エレナさん!リヒト君!」


瞬間、既に姿勢を整えたコロモリュウがこちらへ急接近した。


「ごめんなさい…2人とも!必ず生きて帰りますから!」

「あ、ちょっと!」


リヒトはコロモリュウに攻撃魔法を撃ちながらさらに上昇、完全に囮役になるつもりだ。

止めようと手を伸ばしたが、彼の風圧に押されてつい体勢を崩してしまう


「アキラ君!!どうして一緒に止めてくれなかったの!?」

「すみません…しかし代替案無しに止めるのは…」

「とにかく行くよ!…最低の判断だけど、最悪の事態は避けたい」


リヒトを置いて僕達は救急ユルトへ向かう。小さくなっていく彼の影にコロモリュウが迫っていく。


「アキラ君…さっきアキラ君が止めなかった理由だけど、本当はちょっと同情したでしょ」

「…はい」

「こういうのは無理を言ってでも止めるものよ。…もしそれで彼が死んだらどうするのって話。…今はソフィアの容態に注意して」

「はい…」

「…ユルトが近くなったら、私の指示で離脱して、そのままリヒト君のところへ行って」

「…!」


「可能性は低くなった、でもゼロじゃないわ。…アキラ君、ソフィアの容態は?」

「さっきよりは安定してます…」

「わかった…そろそろね…アキラ君、今!」


急旋回し、直ぐにリヒトの元へ急ぐ。

既に追いつかれそうになっているが、攻撃魔法を展開して何とか抵抗していた。


「戦う必要はない…リヒトを確保しエレナさんと合流すれば…!!」


間に合え…!!

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