鼓舞してみた
今アリサは地下大迷宮内を移動しながら一人ジョブのレベル上げに励んでいた。
あらかじめシオンにあちこちの通路の壁をぶち抜いて貰ってある。なので今や碁盤の目のようになった地下大迷宮はすでに迷宮でも何でもなくなっていて、部屋になっていた箇所が多かったのもありまるで地下大都市のようだった。
元々出現する魔物も然程強くなかったのもあり、多分地上の惨劇から避難してきただろう人々でダンジョン入り口近くはごった返していた。
奥へと入って来ないのは戦えない人も多く、内部は迷宮となっているという噂から迷うのを避けての事だろう。
そんな事より不思議なのは人でごった返した場所に魔物が湧かない事だった。
アリサはそんな人々を避けまた守るように、ダンジョンのフロアボスとダンジョンボスがダンジョン内をうろつく前にリポップを持ち討伐していた。
そんな中入り口付近で湧かなくなった分とでもいうようにフロアボス近辺で雑魚が密集して湧き始めていて、アリサにとってはモンスターハウスほどではないその湧きは効率の良い熟練度上げの場所となっていた。
この地下大迷宮はすでに踏破を済ませていたが、それが話題になる前にルリとシオンは地上の一斉清掃作戦を開始した。
アリサも手伝いたかったがアリサにできる事など何もなく、寧ろ邪魔にならないようにと考えて地下大迷宮に籠もっている。
地上の一斉清掃作戦が終わったら連絡が入る事になっているので、アリサはそれまで思う存分ジョブのレベル上げに集中する事にしたのだ。
もうすでにルリとシオンのお伴なしでもこの程度のダンジョンなら送り出して貰える程度には強くなったという事で、信頼して貰えているという自信がアリサをさらに強くしていた。
そして魔剣士・魔道士・パラディンとジョブレベルをMAXにし、いよいよ忍者・賢者・バトルマスターの上級職に就けるようになった。
薄暗い地下大迷宮の中に籠もり始めもう何日経っているのかも良く分からない。体力は魔法で回復し、空腹と睡眠はボスのリポップの合間の短時間で済ませている。
しかし精神的な疲労がそろそろ隠せなくなってきていたアリサにとって上級職に就ける事になったのはとても嬉しいもので、久しぶりにテンションが上がり気力と集中力が漲ってくるようだった。
「やっぱり念願の忍者は最後だよな。あと二つ。賢者とバトルマスターをクリアすれば忍者になれる。あと二つだ!」
アリサは久しぶりのソロ活動で話し相手もいなかった事から、何日ぶりかで声を出して自分を鼓舞していた。
別に今すぐ忍者に就いても良かったのだが、ここまで来たらやはりすべてのジョブレベルをカンストさせたかった。
できる事なら魔法やスキルのレベルもカンストさせようと考えてもいた。
「そうと決まったら雑魚どもよ私の経験値の糧になれ!!」
アリサは魔物の気配を探しダンジョン内を勢いよく駆けだしていた。