屁理屈をこねてみた
「でもこのドラゴン素材ってすぐにはお金にならないでしょう?」
インベントリにまた多数収まったドラゴンの素材を確認しながら、ルアルコー国での事を思いだしアリサはシオンに尋ねた。
あの国ではいまだに小分けにしてオークションへ出品している。このドラゴン素材も別の国へ持って行ったとしてもきっと同じ扱いになるのだろう。
復興資金ってどのくらいの金額が必要か分からないが、多分かなりの現金がすぐに必要なのじゃないかとアリサは考えていた。
「その辺は大丈夫だ。すでにドラゴン素材を取引材料に復興支援を各国に根回ししている。それに他の大陸の聖獣や神獣にも手助けを頼んだから素材を渡しさえすれば世界規模で売りに出される事になる」
「えっ、そんな大がかりなの?」
他にも聖獣や神獣がいるとは聞いていたが、なんだか世界規模で話が進んでいるようなシオンの口ぶりにアリサは思わず驚いた。
「あの宗教は世界規模で広まりつつある。孤児院や病院を宗教から切り離そうとしたら世界規模になるのは仕方ないだろう」
アリサはシオンの説明になるほどと納得するとともにふと別の疑問を抱く。
「そんなに大きな宗教を完全に潰す事って可能なの?」
アリサは特定の宗教を信仰してはいないが、例えばキリスト教や仏教がなくなるなどまったく想像できなかった。
新年には神社仏閣へお参りに行くし、困ったときには神様にお願いもするし、ハロウィンだってクリスマスだって何も考えず普通に楽しんでいる。
それが突然なくなったら無宗教のアリサでさえちょっと困る気がするのに、信心していた信者の思いはいったいどうなるのだろう?
「信仰する対象は一つなのに派閥のように広がった宗教が多すぎるのです。一つにまとめると考えれば良いのではないですか。潰すのではなく新しく作り直すのです。信仰心を止める訳ではありません」
「信仰されるには理由がある。奇跡を目の当たりにすれば信仰する宗教など簡単に変えるぞ。そして奇跡は語り継がれ新たな宗教となるんだ」
ルリもシオンも何か熱く語り出した分アリサの心は冷めていくようだった。
「ごめん、私にはまだ分からない分野だったよ」
実際ルリの話もシオンの話も全部を本当に理解できていないだろうと感じていた。
そしてなんにしてもアリサにできる事はもうないだろうと思っていた。
「それよりさ、他の聖獣や神獣も当然人間化しているんでしょう? 私も会えたりするのかな?」
「会いたいのか?」
「今さらチェンジもないでしょうし、会いたいなら会うのも可能ですよ」
何か知らないがルリもシオンも警戒しているような口ぶりに変わった気がして、アリサも少しだけ緊張し慎重に答える。
「う~ん・・・。会いたいって言うより興味があるって感じかな。それに協力して貰うなら当然お礼も必要なんじゃないかって思うんだよね」
「お礼ですか?」
「だって自分の都合でタダ働きを強いたらそれはただの搾取でしょう?」
実際ルリもシオンもアリサの護衛がてらお伴をしてくれているが、ルリやシオンの抱える問題解決を少なからずアリサも手伝ったのだから一方的だった訳じゃないと思う。
ともに冒険をする仲間なら当然なのだと言われたとしても、今回の協力要請はアリサにはちょっと納得がいかないところがあった。
「奴らの守護する大陸も潤うという理由だけではダメだというのか?」
「そうですよ。少なくとも経済がまわり文化も発展するのです。それ以上の事が必要だと?」
「それは結果論でしょう。困っているときに助けて貰ったらお礼をするのとは話は別だと思うよ」
アリサは自分でも何をムキになっているのだろうと思いながら屁理屈をこねるように話していた。
「分かりました。私も彼らが困っているときには必ず手助けをします」
「ああ、俺もそうすると誓う」
「って・・・、今までは無関心だったって事!?」
「そうね。お互い自分の守護する大陸にしか興味がなかったのは確かね」
「そうだな。他の奴らが何をしているかなど考えた事もなかったな」
アリサはこの世界に聖獣や神獣がどれだけいるか知らないが、お互いに無関心だったと聞きかなり驚いた。
同じ神様(?)の元で大陸を守護しこの世界を守ってきた同士なのだから兄弟みたいなものなのじゃないかと思っていたが、聖獣や神獣にはそんな考えはなかったようだ。
アリサは聖獣や神獣ってソロ思考なのだと知りちょっとだけ呆れたが、自分自身にもそういう所があるから気をつけようと思うのだった。




