考えてみた2
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またもドラゴン素材の売上金がシオンの眷属によって届けられた。
アリサがこのお金をこれからもこうしてすべて受け取り自分のものとして自由に使ったとして、一生かかっても使いきれないだろうとそんな風に呆然と考えていた。
(還元させるための使い道を考えようと思ってたの忘れてた、いったいどうしたら良いの)
「今から考えれば良いでしょう」
「俺をあてにされても困るがな」
ルリとシオンの冷めた視線を感じながら何となく何処かに寄付しようかと考えて、ふと前世での福祉財団の活動を思い出した。
この世界にそんな財団などある訳も無く、かと言って似た様な財団を作る為の知識などアリサは持ち合わせてもいない。
(でもそうだな私が誰かのためにお金を使うのだとしたら、やっぱり子供達の笑顔のために使いたい)
そう考えていて思い出したのが学校給食の話だった。
何処かの発展途上国で小学校を作ったが、生徒が家事や仕事の手伝いがあってなかなか集まらなかったらしい。
しかし無料で給食を配布する様になってから、その一食の為に学校にくる子が増えたと言う話をどこかのテレビ番組で見た事を思い出していた。
そう言えば昭和の戦後の話を当時の経験者から聞く中で、買い出しの話の次に多かったのが小学校での弁当の話だった事も思い出していた。
実際アリサも学校給食が始まるまでは弁当には苦労させられていた。
「学校で給食を提供するってのはどうかな」
「簡単な話ではなさそうですね」
「そうだよね、言うのは簡単だけど実際どうしたら良いかなんて分からないし、お金は出すから後はお願いって訳にはいかないよね」
「そうですね、お願いするとなるとかなり確かな人でないといけません。それにその為の制度や施設も必要となると学校を運営している国に提案するのが一番簡単なのでしょうか」
「それならば王都へ行って宰相に話をすると良いだろう。会うなら予定をつけてやれるぞ」
あてにされても困ると黙って話を聞いていた筈のシオンが、突然国の偉い人と会わせてくれると言い出した事にアリサは唖然としていた。
「知り合いなの?」
何をどう聞いて良いのかも思いつかず、咄嗟にアリサの口から出た言葉だった。
「俺は直接会った事は無いが今俺の眷属を二人付けている。それにモンゾールとも付き合いがあるぞ、そう考えれば会うのも簡単だろう」
シオンが眷属を使って活動をしているのは知っていたけれど、オークション関連だけじゃ無かったのかと改めて驚いた。
そして宰相と会う事を実に簡単そうに話すシオンに少し呆れてもいた。
「いったいどんな活動をしてるの?」
「おまえに話すほどの事でも無いが、知りたいなら詳しく話してもいいぞ」
「別にいいよ、必用だったら話してくれれば」
面倒臭そうに言うシオンにアリサも面倒になってそう答えていた。
「では取り合えずこの後は王都へ急ぐと言う事で良いのでしょうか」
ルリに最終的な予定の確認をされ、アリサ達は王都近くまでルリに乗って移動する事に決めて準備を整えたのだった。