宿を決めてみた
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日が暮れるまでの予定が、レベルが上がるのも魔法の熟練度が上がるのも楽しくなってしまい、ついキリが良い所までと戦い続けていて気が付けばすっかりと日は暮れていた。
「今日はもう休んだ方が良いと思うわ」
ルリに助言され、私も納得して街へと戻る事にした。
気が付くと所持金も2539Gと驚くほど貯まっていて、ファイアの熟練度も5つある☆の内3つが★になっていた。
きっとここまでは熟練度を上げるのも簡単なんだろうけど、やはりどうせならMAXにしたいと考えていた。
インベントリにはラピックの肉が2種類で合計で500を超えて収納されているのには少しだけ驚いた。
詳しく見るとバラ肉とロース肉となっていてロース肉はレアドロップだった。
(これ全部売ったらいくらになるんだろう? それもこれもMP回復ポーションとあのエリア切り替え場所のお陰だね)
私がニヤリと笑っているのを見てジト目を投げつけるルリとシオン。
「比較的安全なモンスターハウスにでも入ったような気分だよ、しばらく止められないかも」
「それは構いませんがクエストはどうするのです」
「この街のクエストは見つけ次第出来れば全部受けたいと思っているし解決するよ、忘れていないから大丈夫」
暗くなって所々に街灯ランプが灯された仄暗い街中を歩きながら宿屋を探していた。
これだけ所持金があれば少々お高い宿屋でも泊まれるだろうと宿を見つける。
二枚扉で中央で開かれる様になっている少し豪華な扉を開き中へと入ると、すぐにカウンターがありロビーもあった。
「俺に任せておけ」
そう言うとシオンは颯爽と大股で歩きカウンターへと向かい、「3人だ、泊まれるか」と聞く。
「一部屋で宜しければご案内出来ます」
「ああ、それで構わない」
「お一人様25Gですので三名様で75Gとなります。お食事は隣の食堂かその先の居酒屋をご利用くださいませ」
カウンターでそう説明されて私が75Gを払うと2階の203号室へと案内された。
宿泊代金が高いのか安いのかは判断できないが、中世ヨーロッパ風の街の雰囲気からしたらお高いようにも思うし、昭和のゲームが作られた頃と考えたらとてもお安いだろう。
他に比べる対象が武器とポーションじゃ何とも言えない所だった。
私は道具屋でもっと色々と値段の検証をしておけば良かったと少しだけ後悔した。
案内された部屋自体はそう広くは無かったが、ベットは4つあり浴室にはシャワーだけでなくバスタブも置いてあるのに感激した。
「お風呂があるよ」
私は感激を露わに叫んでしまったのだが、そんな私の様子にルリもシオンも呆れる様子を見せる事無くベットへと腰を掛けている。
二人はもう既に自分のベットを決めた様だ。
「私達は食べなくても平気ですが食事はどうするのです」
ルリにそう聞かれ初めて気が付いた、考えてみたら今日一日何も食べていないと言う事実。
さっきまで色々と夢中になっていたからどうにかなっていたが、食事の事を考え出すと途端にお腹が派手な音を立てて鳴りだした。
「食べても良いなら一緒に行ってくれない?」
今まで一人ご飯が普通だと思っていたし食べなくても平気だと先に言われた事が気になったが、食事の為にわざわざ別行動をするのも何となく気が引けると言うか少し寂しく感じ二人に尋ねてみる。
「そうね、私も人間の食事に興味がない訳じゃ無いわ」
「俺は寧ろ色々と食べてみたいぞ」
「それじゃ食堂が閉まる前に行きましょう」
二人の返事を聞いて何故か嬉しくなり、私は急かす様に先に立って歩き出し食堂へと向かうのだった。