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22品目

「あーん」

「や、止めろ!? ごふっ!?」


 やる気になったメビウスの料理の破壊力は想像を絶する物であり、すでにメビウスの料理を強制的に食べさせられ騎士の3人が泡を吹いて気を失ってしまう。

 何が起きたかわからなくても原因は食べさせられた料理にある事は理解でき、次のターゲットになった騎士は顔を青くしながら声を上げる。

 しかし、この場所で彼らの命令に従うものなど居るわけはなく、ターニアは笑顔で料理を口元に運ぶ。食べてはならない物と認識している騎士ではあるが常連客はその口を無理やり開き、メビウスの料理は無理やり、口の中に運ばれてしまう。

 強制的にそしゃくさせられ、そしゃくされるたびに騎士の顔からは血の気が引いて行く。


「あれ? 今回はしぶといわね」

「……やる気になったメビウスの料理を強制的にとは言え、ここまで食えるなんて騎士も侮れないな」

「お、お前達、何をしているのかわかっているのか!!」

「何って、ただ騎士様に料理をごちそうしているだけよ。メビウス、料理追加」


 4人目が簡単に意識を失わない事に常連客達からは彼をたたえる声がぽつぽつと上がるが誰も騎士を助けようとはしない。

 目の前で起こっている惨劇が次に向けられるのは自分だと理解している騎士の1人が真っ青な表情で声を上げはするのだがわかっていないのは彼の方である。

 ターニアはにっこりと笑うと適当に料理を追加注文する。本来なら、自分の料理を毒扱いされて怒るべきの彼は久しぶりの望まれて作る料理に感覚がマヒしてしまっているようで良い返事をして料理を続けて行く。


「メ、メビウスさん、落ち着いてください」

「や、役に立たない女だ。なぜ、このような出来の悪い女を貰ってやらなければならないのだ」

「へえ。そのお話、詳しく聞かせて貰おうかしら」


 セフィーリアは彼に冷静になって欲しいと声をかけるのだが客達に邪魔をされて厨房の中に入る事は出来ない。

 邪魔も出来ない彼女を見て、最後にされている騎士は舌打ちをする。その声に常連客達は彼を鋭い視線で睨みつけた。

 集まる視線には敵意が込められているのだが騎士はそれを理解できないようでセフィーリアを責めるように怒鳴り続けている。

 その時、4人目の騎士を沈め終えたターニアはにっこりと笑った。


「な、何だ?」

「きっちりと教えてくれるなら、これは勘弁してあげるわ」


 質問の意味がわからない騎士は怪訝そうな表情をする。

 ターニアは騎士から聞き出したい事があるようで手を止めるとメビウスの料理をテーブルに置く。

 それは彼女だけではなく常連客達も聞きたい事だったようであり、騎士の次の言葉を待つ。


「貴様らには関係のない事だ!!」

「そう」

「ごふっ!?」


 騎士は見下したように言うとターニアは素早い動きでメビウスの料理を彼の口の中に放り込んだ。

 その瞬間に彼は意識を刈り取られたのか白目を剥いて床に倒れ込んでしまう。

 騎士が全員気を失った事にターニアは興味を失ったようでカウンター席に座ると先ほどまで手から放していた酒瓶を抱え込む。

 ただ、騎士達が気を失ってしまってもやる気を出しているメビウスは料理を止める事はなく、過剰供給されそうな彼の料理の山に常連客達はどうするべきか考え始める。


「フィーちゃん、ロイック君、ここに座る」

「は、はい」

「あ、あの」


 ターニアは酒をカップに注ぐと2人を自分の近くの席に呼び寄せる。

 その口調はいつも通り緩い物なのだが命令に近い物があり、ロイックは逆らった場合の結末が床に転がっているため、逆らってはいけないと素直に頷く。

 しかし、セフィーリアはこれから何をするつもりか心当たりがあるようで素直に命令には従いないようで表情を暗くしてしまう。


「別に取って食べるような事はしないわよ。ただ、気になるのよね。私が知るオーミット家当主はこんなバカに愛娘を嫁がせるような事はしないでしょ」

「そ、それは……」

「あ、あの、ターニアさんはオーミット家当主とお知り合いなんですか?」


 ターニアはセフィーリアの父親の事を知っていたようで先ほど騎士の1人の言葉に疑問を抱いたようである。

 表情を曇らせる彼女は何かを伝えようとするのだが言葉が続いてこないようであり、その様子にロイックは少し間を空けようと考えたようでターニアとセフィーリアの父親の関係について聞く。

 その質問にターニアは小さく頷いた後、カップに注いだ酒を飲み干してすぐに酒を注ぎ直す。


「だから、フィーちゃんやロイック君がこのお店に顔を出す事を許しているのよ。本当だったら、あれと一緒よ。まあ、私が嫌いだからってメビウスの人間関係をとやかく言う気は無いけどね」

「……そ、そうですか?」

「うちは男女差別しないから、フィーちゃんにも間違いなく食べさせるからね」


 普段は気にしていないように見えるターニアにも騎士への嫌悪感はあったようでセフィーリアと彼女と友好的な人間は別だと笑う。

 その言葉にロイックはセフィーリアを仲介として竜の焔亭を訪れた事で危険を回避していたと理解して胸をなで下ろした。

 ターニアはロイックを見て小さく表情を緩ませた後、セフィーリアにメビウスと知り合っていて良かったねと笑う。彼女はその言葉に頷きはする物の自分とこの騎士の事を話すべきか判断できないようで表情は晴れない。


「まあ、良いわ。別にフィーちゃんに聞かなくても勝手に調べるし」

「……あの、今まで気になっていたんですけど、ターニアさんは何のお仕事をされているのですか?」

「ただの酔っぱらいだ」


 彼女の様子にターニアは詳しい話を聞き出すのは止めた方が良いと判断したのか小さくため息を漏らす。

 追及がない事にセフィーリアはほっと胸をなで下ろすがロイックは騎士隊の内情を知っている彼女の事が気になったようである。

 ロイックが首を傾げるとタイミング悪くメビウスの料理が終わったようで彼は大きなため息を吐いて出来上がったばかりで湯気を上げた見た目だけは美味しそうな料理を運んでくる。

 それを見た瞬間にロイックの表情からは血の気が引いて行き、ターニアはすっかり追加注文の事を忘れていたようでどうしようかと言いたげにため息を漏らした。


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