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俺の妹が、最近おむつを履き始めたんだが。  作者: 冬野原もがめ
俺と妹のくだらない日々。
17/29

二人

 俺の妹、叶宮蓮子かのみやれんこは才色兼備を誇りながらも全く自慢できない存在だ。

 彼女の真実の姿を知る者は以外と少ないが、世の中には知らなくていいことだってたくさん溢れている。

 これはそんな妹と俺にまつわる、限りなくくだらなくて益体もないエピソードのひとつである。



 ◇



 両親がいとこの結婚式ということで、二泊三日の旅に出た。

 俺と蓮子はその出発を見送り、誰もいない居間へと戻ってきたところ。

 現在は金曜日の夜なので、日曜日まではこいつと二人で家にいなければならないということになるな。


 というか父さんに、物騒な世の中だからという理由で家にいるように言われたのだ。

 蓮子が心配らしい。何か間違いが起こらないように、見ていてくれということだろう。

 既にあいつは思いっきり人生的な意味で間違っているのだが、そのことは伏せておいた。

 父さん、親バカだからな。



 しかし、蓮子と二人きりか……。

 俺の代わりに鈴里でも連れてきたい気分だ。


「二人きり。そう改めて認識すると、途端に俺は蓮子のことを過剰に意識してしまう。実は、俺と蓮子には人に言えない秘密があるのだ。両親にすら隠している、兄妹の本当の関係。それは先日、蓮子が部活から帰ってきた時に端を発するのだが……」

「お前部活やってねーだろ」

「夏も間近に迫ったその日、俺は若い性欲を持て余らせていた。そんな折、運動後で汗と雌の臭いをたぎらせた妹が目の前にいたのである。この時、俺はどうかしていたのかもしれない。ただ無性に妹のことが、いや、妹の身体のことが気になって仕方がなかった」

「どうかしてるのはてめぇだ」

「俺の手は気づけば、妹の健康的に日焼けした身体に触れていた。妹の嫌悪感を滲ませた叫び声が部屋に響く。しかし、俺はもう止まれなかった。『くそっ、生意気にもこんなに育ちやがって!』――悪態をつきながら、俺はその豊満に育った乳房に吸い付く。部屋に広がるけだるげな蒸し暑さが、更に俺の劣情を加速させていった――」

「小麦色の巨乳どこ? 漂白したまな板しかないんだけど」

「さっきからうるせ――――っ! もうお兄ちゃん、細かい男は嫌われるよっ」

「俺ほどおおらかな男を捕まえて、言うに事欠いて細かいとは」

「ケツの穴が小さくてみみっちい男だよねお兄ちゃんは」

「んだとコラ」

「ぐえぇぇええ! ネック・ハンギング・ツリーやめて! 首がもげるもげるマミる!」


 はっ。

 清らかで寛容を売りにしている俺としたことが、ついつい昨日動画で見たプロレス技をかけてしまった。

 蓮子を開放してやると、涎を垂らしながら膝をつき、びくんびくんと震えている。

 なんかはぁはぁ言ってる。

 気持ち悪ぃ。


 しかし妹は、すぐに復活して立ち上がった。

 悪と巨人軍は不滅である。



「なんか、開放感あるよねー。家が広く感じるってゆーか」

「まあ、それはそうかもな。ここにいるっていうことがそもそも、あんまり無いし」


 基本的にここは母さんと父さんのスペースみたいになってるしな。

 蓮子は大体部屋にいるから言わずもがなだが、俺だってリビングにいることは少なかったりする。

 この年頃なので、色々あるのだ。なんとなく、親と一緒にいたり話したりするのが恥ずかしかったりしなくもない。


「よーし! せっかくだし、今しかできないことをしよう!」

「お、前向きだな。何するんだ?」

「コーラがはいったボトルと醤油差しの中身を入れ替えておくとか」

「お巡りさん、俺の妹が殺人を計画してるんですけど」

「わー! 待って待って! 今のは冗談だから!」


 なんだ冗談だったのか。

 俺は手にしたスマホをしまいこむ。

 前にスポーツドリンクと尿を入れ替えられた前科があるからな、全く冗談に聞こえなかったぜ。

 まあ、あれは尿に見せかけた何かだったけれど、それでも十分タチが悪い。

 思い出したら腹が立ってきたが、寛容な俺は湧き上がる怒りをグッとこらえることにした。



「もっとなんか、あるだろ。普段家ではできないこと、みたいな」

「例えば?」

「……大画面、大音量でリビングでゲームする、とか」

「はっ」


 鼻で笑われた。

 見下げ果てたと言わんばかりの視線もプレゼントされる。

 なんで妹にここまでコケにされなければならんのか。


「つまらん男だな、全く。そんな貧困な発想では、到底我を楽しませることなどできんぞ? 生き延びたかったらもっと、我の心を躍らせてみせよ!」

「そう言うお前はどうなんだよ。なんか名案でもあんのか?」

「まずは服を脱ぎます」

「おう」

「程よくイボイボがついたキュウリを用意します」

「おう」

「うちの膣に突っ込んで」

「もしもし、お巡りさん? 家に見知らぬ変態が入り込んでるんですけど」

「わーっ! ちょい待って! 冗談、冗談だから! ついでに兄妹の縁ぶっちぎって他人のフリするのもやめて! うち悲しくて泣いちゃう!」


 俺は再度取り出したスマホをポケットに収納する。

 第一段階の時点で突っ込まなかっただけ感謝してほしい。


 というか、宣言通りマジで脱ぎやがった。

 今の蓮子は半裸である。

 前々から思っていたのだが、こいつは露出癖でもあるのではないだろうか。

 結構前にも、電車の中でブラの紐とかパンツとか見せてた気がするし。

 興奮のこの字も沸かなかったけど……。



 オタクで半引きこもりでネトゲ中毒で露出癖があっておまるにおしっこする女。

 字面にすれば最低だった。

 恥じらいという概念が行方不明である。

 そもそも本当に女子高生という生物なのか、それは?

 誰だよこいつの親類は、身近にいる奴は早く暴走を止めてやれよ。


「お兄ちゃん、実の妹を道端に落ちてる犬のくそを見るような目で見ないでくれますかね?」

「……いや、なんで半裸になってんのかなと思って」

「取り急ぎ、父さんと母さんがいたらできないことをやろうかなって! 暑いしちょうどいいね!」

「あっそう……」

「お兄ちゃんも脱いだら? 開放感あるよ?」

「遠慮しとくわ」


 様々なことを諦めて呟いた俺は、急いで家にある全ての窓とカーテンを閉めたのだった。

 近所の家に住んでる兄妹が、両親がいない隙を見計らっては露出プレイをしているらしい。そんな噂を立てられたら、たまったもんじゃないからな。







 翌日、蓮子が風邪を引いた。

 言うまでもなく一日中半裸でいたからである。

 結局俺は土日の週末を、蓮子の看病をして過ごすことになったのだった。





 そして月曜日に蓮子が全快し、俺が風邪をうつされていた。

 キレてもいいよな、俺。

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