新たな武器
〈次はどこに行くの?〉
〈冒険者組合いつ行くんだよ〉
〈ギフトボックスは!?〉
「うるさい、ギフトボックスは後で。次は鍛冶屋だな」
路地裏にあるボロボロの鍛冶屋に入る。
ここは俺が初日に世話になったところだ。
半日働いて修復を覚えた。
「よお、じいさん」
声をかけると作業中だった爺さんがちらりとこちらを一瞥。
「……お前か」
「この間は世話になったな。スキル使わせてもらってるぜ」
爺さんはふん、と息を吐く。
相変わらず愛想が悪いな。
だが俺の腕を見てキランと目が光った。
「おい、お前、その腕装備……」
「さっき異常個体からドロップしたんだよ」
「よく見せてくれ」
腕装備を外して渡すと爺さんは食い入るように見る。
鍛冶師ってのは珍しい装備品に目がない生き物だからな。
コメントと会話をして待つ。
満足したのか五分ほどで返ってきた。
「で、何の用だ」
俺は若葉の短剣を作業机の上に置く。
「この短剣を進化させてくれ」
「……わかった」
なんか少しガッカリしてるな。
腕装備の強化や異常個体の素材を扱いたかったのかもしれない。
「素材は?」
「レアエネミーのを使ってくれ」
ポーチからじゃらじゃらゴロゴロと素材を出す。
「おお! これは!? 初めて見たぞ……!」
「嘘かホントか知らんが、初めて狩られたらしいぞ」
「なんてエネミーだ?」
「花の潜伏者」
これもレアエネミーの素材だからか機嫌が直ったらしい。
何ともまあ現金で扱いやすい爺さんだ。
〈わかりやすw〉
〈この爺さん可愛いな〉
〈でも鍛冶師ってみんなこんな感じよね〉
だが爺さんは素材を吟味した後、残念そうに言った。
「この素材だと短剣の進化はまだやらないほうがいい。元になる短剣の質が悪い。せめて先に三度ほど強化、欲を言えば一度進化を挟まねば、このレアエネミーの素材が本来持っている性能を完全に引き出せない」
「いやいい。このまま進化させてくれ」
「確実に性能は落ちるがいいんだな?」
「構わない」
爺さんは「はあ」溜息を着くと燃え盛る炉に向かった。
彼には悪いが、どのみちすぐにレジェンダリーの短剣を手に入れてみせる。この短剣はそれまでの繋ぎだと考えている。
ガィン! ガィン! ガィン!
迫力のある鍛冶の音が聞こえてくる。
刃が一瞬で赤熱したり、シュウウウウと冷やされたり、一叩きで汚れが全落ちしたり、素材が粘土みたいな融合したりと、ゲームならではの様々な鍛冶スキルを併用しているのだろう。
あれらを会得するには弟子入りするしかない。
が、割に合わないし、戦闘中に使うイメージも湧かない。
俺は基礎中の基礎‘’修復‘’を極めていくつもりだ。
ゲームなのもあるだろうが、作業自体はすぐに終わった。
「できたぞ」
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レアアイテム【花蜘蛛の痺剣】
性能:攻撃21 麻痺10
効果:潜伏+10%
スキル:花影潜伏
潜伏中の初撃ダメージ+15%
要素1:器用+5%
要素2:器用+5%
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素材はエピックだか、武器のレアリティはレアになったな。
まあ元になった短剣が街に売ってるコモンの量産品でかつ無強化無進化だったからな。飛び級の弊害だ。仕方がない。
〈序盤の武器にしては強すぎるだろ〉
〈でも少しもったいないわ〉
〈素材が良いだけにね〉
性能が落ちてこれか。
なかなか良い出来だ。
要素も悪くない。
「いくらだ?」
「50万」
たけーな。
「余った花の潜伏者の素材は全部やるからまけてくれ」
「ふむ……それなら25万、いや20万でいいぞ」
「オーケー」
請求用のウィンドウがポップアップする。
支払うを選択すれば勝手に引き落とされる。
「まいどあり」
スキル登録で稼いだ金で払える範疇に収まってよかった。
あとはそうだな。
「この爆破属性の大槌を短剣に打ち直しできるか? その時にこの異常個体の素材も使ってくれると尚いいんだが……」
そう言って花守装甲蜂からドロップした花守蜂の大槌と花攻獣性蜂の素材を出す。
爺さんは異常個体の素材を見て目を輝かせたが、すぐに唸った。名残惜しそうに手で撫でながら言う。
「エピック……いやレジェンダリークラスの打ち直しか。悔しいが俺には無理だな。というか普通の鍛冶師には無理だ」
「じゃあその普通じゃない鍛冶師を知らないか?」
爺さんは少し考える素振りを見せた。
「そうだな……名工ダグラスなら可能だろうよ」
「ダグラスはどこにいるんだ?」
「さあ知らんな」
爺さんの目は異常個体の素材に固定されている。
だが事実だ。適当を言ってる訳ではない。
ダグラスはこの国の表にはいない。
「紹介状をもらえるか」
「いいぞ。その代わりうちでなにか買っていけ」
「助かる。じゃあ投げナイフを十本もらえるか」
「あいよ。一本一万円だから、合計で十万円だ」
再びのポップアップに支払いを選択。
投げナイフと紹介状を受け取って俺は背を向けた。
鍛冶屋を出る俺の背中に声がかかった。
「ダグラスは神出鬼没のダークエルフだ。会えるといいな」
会えるさ。
きっとな。




