約束
そのまま解放された俺達は詰所を後にした。
時刻は十九時を回っており既に真っ暗だ。
精霊の淡い光が飛び交って幻想的である。
〈なんかいい雰囲気〉
〈浮気者〉
〈羨ましい……〉
少し並んで歩いた。
他愛もない話をする。
「じゃあ……」
別れを切り出そうとしたその時。
ユーナが真剣な顔をして俺を見ていた。
「烏我くん」
「なんだ」
「ボクとパーティを組んでくれない?」
「すまん、無理だ」
俺は即答した。
何となくそんな気はしていたから答えは用意しておいた。
「えっ」
ユーナは目をぱちぱちさせている。
そして数秒後。
「そ、そんなぁ……」
見るからに落ち込んだ。
犬だったら耳が垂れている。
尻尾がしゅんと下がる姿を幻視した。
〈ユーナちゃん可哀想〉
〈辛辣で草〉
〈まあ役職ちょっと被ってるしなあ〉
コメント欄が哀れんでいる。
少し素っ気な過ぎたか?
一応、付け加える。
「今は……な」
「今は?」
そう。
「ソロでしか手に入らないスキルがあってな。それをゲットするまでは誰ともパーティ組みたくないんだよ」
「じゃあその後でなら……?」
ユーナがおずおずと聞いてくる。
俺は頷く。
「ああいいぞ。とは言え俺と役割が似てるからな。バランスを考えるとクランの違うパーティに、となるかもしれないが」
これも前のアカウント消失を受けて感じた課題の一つ。
ソロの限界。
一人でできることには限界がある。
だから何れは仲間を集めるつもりだった。
パーティを組み、あわよくばクラン創設まで。
今回のアカウントではそこまで視野に入れている。
「クラン作るんだ!?」
「ああ、そのつもりだ」
「やった! 約束だよ!」
喜ぶユーナ。
表情がコロコロ変わる。
見ていて面白いし分かりやすいやつだ。
〈いいな〜〉
〈うちも入りたい!〉
〈いつクランメンバー募集しますか!?〉
そうだ、とユーナが思い出したように手を叩く。
「烏我くんは配信でステータス晒してるんだよね」
「うん……? まあ、そうだな」
本当に隠したいものは隠してるけどな。
「じゃあフェアにボクのステータスも見せておくね」
言うなりメニューを操作する。
直後、共有ウィンドウが視界に表示された。
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【ステータス】
清瀬 夕奈
Lv:28
体力:74/74(C)
魔力:101/101(B)
筋力:113(A)
知力:86(B)
器用:113(A)
敏捷:113(A)
耐久:59(C)
精神:59(C)
幸運:86(B)
【スキル】
双剣術/急所攻撃/回避/連撃強化/投擲/軽業/忍足/潜伏/気配察知/気配遮断/暗視/解錠/毒物知識/応急処置/逃走/クロススラッシュ/ラピットエッジ/ステップブレイド/ガードブレイク/ツインファング
【称号】
追跡者
【装備】
武器:黒牙の双短剣
頭:影織りのフード(アンコモン)
胴:夜行革鎧
腕:瞬撃の手甲
腰:怪盗のユーティリティベルト(レア)
足:疾風のブーツ(アンコモン)
装飾:宙の耳飾り(エピック)
装飾:紅狼の牙飾り(レア)
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別にそんなことを気にする必要は無いのだが……
だがこれがLv.30程度のプレイヤーのステータスか。
「どうかな?」
「悪くはないな」
正直な感想だった。
評価Aが三項目というのは結構上澄みの方だ。
俺のように頭がおかしくないとSはいかない。
スキル構成もシーフとしては最適かもしれないな。
〈ユーナたんって結構強いよな〉
〈これが一般的なプレイヤーのステータスか〉
〈比較対象があれだからなんか低く感じるな〉
というか耳飾りはエピックか。
意匠的にレジェンダリーでもおかしくないと思ったがな。
「えへへ」
ユーナが照れたように笑う。
「でも烏我くんって変だよね」
「変って何だ」
「Lv.6で異常進化したボスエネミーを倒す人は変だから」
「それは否定できん」
自分でもそう思う。
たぶん普通じゃない。
運が良かっただけとも言い切れない。
〈その通りで草〉
ユーナがくすくす笑った。
まあいいや、と言って後ろに数歩下がる。
「じゃあまた」
「ああ、またな」
手を振って別れる。
やがてユーナは夜の街に消えていった。
「さて」
俺は賑わう夜の大通りへ足を向けた。
「街中を色々寄っていこうか」
やることは山積みだ。
※
ピコン、と通知が来た。
メールにビックリマークが着いている。
新着メールが届いたようだ。開いてみる。
フランリッテ:さっきはすまなかった
フランリッテ:そろそろ仕事が終わるんだが……
フランリッテ:今夜待っていてくれないか?
烏山 科戸:すまん、やることある
フランリッテ:えっ
フランリッテ:貴様! 後でって言ってた!
フランリッテ:逃げないって言ってた!!
フランリッテ:あの言葉は嘘だったのか!?
フランリッテ:おい!返信しろ!既読無視するな!
フランリッテ:(不在着信)
烏我 科戸:また今度な
フランリッテ:貴様……
フランリッテ:約束だからな!?
フランリッテ:おい!わかったら返事しろ!
フランリッテ:(不在着信)
フランリッテ:おーーーーーーーい!!!




