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後編

「リディ、このドレスと、ネックレスあげるわ。学園の入学パーティで着て欲しいの」


「お義姉様、うれしいの~~~~~~」


もう、何年も続けたルーティン、養子になったので、私に令嬢予算がついた。

最後のおねだりだ。

令嬢予算は、使ってなんぼ。ドレスの値段は、お針子の日当×人数×日数+エトセトラなのだ。


「グスン、グスン、ありがとうなの~~~~~」


私は泣いた。

泣きまくった。


「まあ、嬉しいのね。いろいろあったけど、これからは一緒に伯爵家をもり立てて行きましょう」


転生者、罪深い存在だ。お義姉様は16歳、それに、27歳の日本のOLの記憶がある私は、異物だ。ズルイのは私だ。


出て行こう。


私は、このドレスの意味を知っている。

ここまで、お義姉様を追い込んだとは、


私は贈られたドレスとネックレスで、歓迎パーティに行った。


そしたら、案の定、お義姉様の婚約者と友人達に囲まれた。


「何だ!クリスの言っていたことは本当であったか!まさか、私の贈ったドレスとネックレスを、義妹が着ているとは!」


「グスン、グスン、私はやめて、って言ったのに、無理矢理取られました。使用人達もリディの味方で・・・グスン、グスン」


そうだ。このドレスは、お義姉様が婚約者から贈られたドレス、


ああ、歌って見せよう欲しがり義妹の唄!


「リディ、くれるって言ったからもらったの~~~~」


嘘は言っていない。


「庶子の分際で、欲張りな性格だな!そんなに義姉のものが欲しいか!」


「欲しーの。お義姉様のものが欲しいの~~~~嫌なら断ればいいの~~」


「身の程を知れ!」


「分かったの~~~教えて欲しいの~~~~」


「薄汚い愛人の子が!下町に戻れ!!本来なら、追放するところだが・・・」


あれ、この男、かっこよく、追放を宣言するのじゃないの?!ほら、言いなさい。

『追放!』と、

欲しがり義妹は、追放されてナンボ!


奴は、下卑な視線で私をなめ回す。


「しかし、貴族の生活を体験したお前では市井は無理、娼館に行くのがオチだ。それに、リーマン伯爵殿の寵愛がある。近くによれ。お、可愛い顔をしているな。

 どうだ。第二夫人にするのが、相当だ・・・グワッ!」


近づくふりをして、

頭突きを食らわした!


「違うの~~~お前は、お義姉様を守るの~~~~、お前はヒーローなの~~」


婚約者がクズなパターンだった。

ここは、逆ギレで、追放、家を出て行こう。

幸い、貯めたお小遣いは、商業ギルドに、推薦状は貸金庫に預けてある。

身一つで追放された時のプランAだ。


「あら、生徒会主催のパーティで何をしているのかしら」

「ちょっと、ここは殿下が取り仕切っているのだからねっ!」


「「「公爵令嬢イザベラ様!」」」

「「「男爵令嬢サリー様!」」」


何か、釣り目とピンク頭が目立つ上級生がやってきた。

悪役令嬢とピンクブロンドだ。


「あたし、欲しがり義妹なの~~~婚約者から贈られたドレスとネックレス欲しがったから断罪されて、追放されるの~~~」


ここは、強引に行く。

すると、縦ロールのお姉様が、見知った人を呼ぶ。


「ベッキー、いえ、アニー、来なさい」


・・・ベッキーだ。いつもは、オドオドしているのに、ススーと動く。

まさか、


「彼女は、当家のカゲよ。ほら、魔道記録水晶を起動させて」

「御意!」


『リディ、このドレスと、ネックレスあげるわ。学園の入学パーティで着て欲しいの』


まるで、プロジェクターのように、壁に映し出された映像には、あの日のお義姉様が映し出されていた。


「貴女ね。孤児院で、二週間、熱病で寝込んだでしょう。その後、不思議な行動をしたと報告があがっているわ。

 手洗い。うがい。マスク、市場で、空で暗算して、買い物をして、転生者特有の計算方法で6桁の計算問題を解いたとシスター様から報告が上がっているの。だから、カゲをつけておいたのよ」


「そーだからね。転生者は、観察が国是だからね。便利グッズを作るのだからねっ!」

「そうよ。サリーは男爵家で能力を発揮したわ。ソロバンを作ったのよ」

「ピキー、嫌だからね!リディ、追放はダメなのだからねっ!悪役令嬢の元で、私と同じ苦労するのだからねっ」


「え~、嫌なの~~~~」


・・・結局、追放ライフは、ご破算になった。


「さて、リーマン伯爵家クリスチーネ様、貴女、生徒会会計はクビよ」


「そ、そんな。どうして」


「貴女はミスがあったら、それを同級生の自分よりも下位の貴族のせいにする。ミスはあるもの。それをどう処理するかが重要なのよ。リディのやり方がこれからの会計のお手本よ」


「そんな」


殿下も来た。慌てて、光速のカーテシーをする。


「礼儀不要だ。さて、生徒会長として、このような嘘の騒ぎを起こすクリスチーネ嬢と婚約者はどうしたらいいか。退学の勧告か?」


「それは、やめて下さい!」

「ヒィ、殿下、私はこの女に騙されただけです!」


・・・貴族学園、退学、それは、爵位を継げないことを意味する。

貴族本人の同居人も一応、貴族扱いだが、貴族社会から白い目で見られる。

致命的だ。


私は無礼にも殿下の言葉を遮った。


「殿下!ご自身に置き換えて、お考え下さい。

お義姉様のお母様がお亡くなりになって、一月で、こんな父の浮気相手の子が家に来たのですから、その辛さは、想像できないほどでしょう。

私を憎む気持ちは当然です。

対して、私は下から上へ這い上がったのです。三食肉付きの生活を送れました。

天国のような生活を送らせてもらいました。

 こんな茶番なんて、苦でありません。下町なら、茶番の前に、ナイフでグサッですから」


「フフフフフ、アハハハハハ~~~」


殿下は大笑いをして、裁決を下された。


「なら、代わりに生徒会会計をやれ。さすれば、罪一等を減じよう。学園は貴族社会の縮図だ。

 謀略はいいが、公の場で謀略が失敗したのだから、何らかのペナルティーが必要だ!」


「仰せのままに」


「何で、リディの分際で、情けをかけるの!グスン、グスン、貴女なんて、大っ嫌い!グスン、グスン」


お義姉様は嗚咽した。

嫌いと思ったが、心情を知ったら、更に嫌いになったと言うやつだ。

お義姉様の私への態度は変わらない。

仕方ないよね。全ての人に好かれることは出来ない。

たとえ、義理の姉でもね。


結局、

お義姉様は、停学一週間で、生徒会役員から、平学生になった。

意外だったのは、お父様が仕事を一週間休んで、お義姉様のケアをしたことだ。

これで、少し、距離が縮まればいい。


婚約は解消、断罪しただけならいいが、婿に来る分際で私を愛妾にしようとしたことが問題視された。

自主退学をして、二年生なのに、騎士学校の一年からやり直しをするそうだ。

ここは実力がものを言うから、這い上がるしかない。


しかし、女に頭突きでやられたと評判はイマイチらしいと風の噂で聞いた。

どうでもいいわ!


私は、


「あら、リディ様、紅バラの会の招待状ですわ」

「ちょっと、平民の集会に来てほしいのだけどもっ!」


悪役令嬢と、ピンクブロンドに引っ張り凧だ。


何故なら、私は平民の経験がある伯爵令嬢、どちらにも行ける人材だ。

貴族派からも、平民派からも、欲しい人材らしい。


「え~リディ、困るの~~~~」


私は追放されない欲しがり義妹を演じている。

この結末は、まだ、不確定だ。







最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 悪役令嬢さんとピンクブロンドちゃんがなんかいいですね! 最後の好きになれない人はいる、という割り切り方がまた、いいですな…。 普通に簿記能力って凄いですよね。計算大事…
[一言] 面白いでした、他の作品も面白そうなので楽しく読ませていただきます
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