タダより高いものはないという訳
『社交辞令』───人間関係を円滑にして、その場の雰囲気を無難に保つための儀礼的な挨拶やお世辞のこと。日本では何かと悪い意味で捉えられがち
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朝起きた。仕事の習慣───職業病もあるが1番は寝汗の性で起きるしかなかった。服が張りつき最悪の目覚めになった
「服、買うか」
気が進まないものの寝巻きを買うべく、外に出る準備を始め、あることに気がつく、ここ風呂あんのかな?と
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「(それより風呂場用品買わないとな)」
一人暮らしの初日を思い出しつつ、一階に降る最中、双子とすれ違った
『あれ?』
「(げっ)」
その内のひとりが俺を凝視していたが気のせいだろうと思いたい、相手の視線が自分に向いてる錯覚なんていつものことだし
『何?知り合い?』
『昨日助けてくれた人だよお姉ちゃん』
なんか話してるけど、無視だ無視。見てたのは事実だが、そんな意図は全くないし、いざこざに巻き込まれるのだけはごめんだ
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食堂に下りて食事を取る。朝食はパンにハムエッグ、野菜スープにトマトサラダと何か、いきなり親近感のわくメニューが出てきた。美味いし、別にいいけど
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食べ終わり、スマホを片手に町を練り歩く、被服屋か服屋があればいいなと『検索』を始めると見知った名前に目が留まった
「ザナックさん、服屋だったんだ」
『ファッションキングザナック』の文字列が表示されていた。店名から自信がありありと感じられた
「(行ってみるか)」
俺は彼の冗談の様な発言と寝巻きや日用品の買い出しを兼ねて店を訪れることにした。ハイブランドなら縁がなかったということで
◆
『やあ、久しぶりだ
元気にしていましたか?』
「その節はお世話になりました」
店に入ってすぐにザナックさんとバッタリ合うや否や俺に気付き、声をかけてきた。いや、なんか勘繰った俺が馬鹿だった
◆
店の奥に通され何気ない会話をした。昨日の出来事や番組の撮影が始まる前の話をした
『それはフレアスカートですね
ウエストから裾に向かって朝顔の花のように
ふんわりと広がるシルエットの
スカートのことです』
「流石ファッションキングですね」
出されたお茶を飲みながらふと、ここに来た目的を思い出し、話を変えた
「そう言えば男性用の
下着や靴のおすすめはありますか?」
『それでしたら』
◆
「(おぉ、流石だ)」
お店を紹介されるかと思いきや現物を支給された。靴というより革のブーツであり、足首周りがやや不安ながらかなりしっかりとした物をあてがわれた
「ありがとうございますザナックさん」
『お安いご用意です
ところでひとつ頼みを聞いてくれますか?』
「…」
畜生そういう魂胆かよ。まぁ、命の恩人だから聞くけどさ。別にね!
俺の苦虫を潰した様な顔を見てザナックさんは笑いながら、短い筒に入った手紙をテーブルの上に置いた。蝋印による印章が押されている───未開封であることの証明だろうか
『王都にいる
ソードレック子爵へ手紙を届けて下さい
私の名前を出せば理解してくれるます
子爵からの返事も貰って来て下さい』
「急ぎの手紙でしょうか?」
下着入れ様にと受け取った麻袋に件の筒を仕舞った。強かな人だぜ、ザナックさん
『急ぎではありません
しかし、ゆっくりし過ぎるのには
困惑しかねません』
「出発の準備に取り掛かります」
ディレクターの罠にまんまとハマった感じがして中々腹立つな、相手の方が何枚も上手なのは明らかだけども
◆
帰り際、従業員の方がやってくると何かを手渡してきた
「これは何ですか?」
『交通費です
少し多めに入れているとのことです
王都見物でもしてきて下さい』
飴と鞭が上手いことで
「ありがとうございます」
さっそく旅の支度に取り掛かった。馬車の手配に旅の間の食糧の買い出し、必要な道具の補充、すべての準備が整い次第王都へ向けて出発を始めるべく動き出した




