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気が付けば、俺は真っ白な空間に浮かんでいた。
足場はない。重力もない。
なのになぜか普通に立っているような感覚だけがある。
脳が現実に追いつかない。
四方八方から、無数の視線が俺に注がれている。
やがて空間の各所に、ぼんやりと光の粒が灯り始めた。
それが段々と輪郭を持ち始め、動物や人の形を象っていく。
狼、鷹、蛇、竜。人の形をしたもの、そして名前もつけられないような何か。
大きなもの、小さなもの。
崇高な光を纏うもの、底知れぬ闇を抱くもの。
それらは皆、ひどく静かに、ひどく熱く冷たく俺を見ていた。
やがて幻影達は音もなく俺の周囲をぐるぐると飛び回り、時折ぐっと顔を近づけては離れていく。
まるでスーパーの鮮魚コーナーで魚を品定めするような、そんな目つきで。
これが精霊の世界とやらか。
様々な男女の声音が耳や、あるいは脳に直接響いてくる。
「不細工」
「ちょっと生理的に無理」
「なんかカッコ悪い」
「変な匂いがするわ・・・・・・」
「ひん曲がった性根のオス。美しくない」
「無しね」
「パス」
「チェンジ!」
なんだこの誹謗中傷の嵐は。
ふざけんなよ。
中年だからって何言っても許されると思ってんのか?あぁ?
どいつもこいつも開示請求して訴えてやろうか。
「このクソ精霊共がッ!!」
気が付けば塔の屋上結晶の前に立っていた。
周囲がシンと静まり返っている。
気まずい空気。
それまで皆がきゃっきゃしていただけに落差が激しい。
誰もしゃべらんから俺から口を開くことにした。
「なぁ、この場合はどうするんだ・・・・・・?」
「・・・・・・こちらへおいで下さい」
俺の困惑に応えたのは聖女だ。
「え?失敗したの・・・・・・?」
「駄目なパターンもあるんだな」
「かわいそー」
少し憐れみを含んだ召喚者共の声が俺の心に刺さる。




