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ヒロイン視点
「おかしいわ……なんで会えないの……」
確かこの場所だったはず。
イライラする気持ちが出てしまい、無意識に爪を噛んでしまったことに気付いて手を降ろす。
「聖女はそんな行儀悪いことをしないわね」
気をつけないと。
「でも、確かにここなのに……」
前世何度も攻略本を読んだ。設定集も数えきれないほど読み込んだ。
推しキャラのリュカスは、この地で初恋の少女に会う。
(全属性持ちのリュカスにとって、属性や自分の身分を関係なく、魔力が弱い扱いされている両親を愛していて、その事実を信じられないと忌避の目で見られて、周りの心無い者たちの言葉で家族の間に溝が出来つつあるのを初恋の少女に救われる……)
君こそ僕の光……通称キミヒカの設定集にそう書かれていて、隠しルートに突入するとその初恋の少女がヒロインだと判明するのだ。
他のルートに少しでも入ったら、リュカスは初恋の少女が幸せになれるように協力するだけで終わってしまうが、隠しルートに一度入ればもう他のルートに入らないで隠しキャラのリュカスのシナリオに進める。
他のキャラとの好感度を一切上げずに進めていくのが大変で、何度ロードしたことか。
だからこそ、初恋の少女との出会いイベントは重要なのにリュカスに会えない。
(前世の記憶があるから設定がおかしくなったなんて理由はありえないでしょうし……)
この貴族の屋敷に一泊するのだが、その際貴族の面々に見せ者扱いされた疲労で一人になったリュカスが敷地の外につい出てしまい、ヒロインに出会う。
夜の闇の中なので互いに相手の髪の色を全く気にしないで身分も関係なく話し合う。リュカスにとって衝撃なのは、
「夜の闇なら見た目とか髪の色とか分からないから本音で話せますね」
の一言でリュカスは今までの見た目重視されていたのが嘘みたいにすっきりするのだ。
そのスチル絵が綺麗だったのしっかり覚えているのに。
(もしかして方向逆だったのか)
領主の屋敷は広い。そこから敷地を出てしまって……ならばこことは限らなかった。
だとしたらすぐに戻らないと。
せっかくの出会いのイベントが…………。
「――そこで何をしている?」
誰何の声があげられる。しまったここの警備の者に見つかったらせっかくのイベントが……。
ランプの光に照らされる。とっさに顔を隠してしまう。
「おま……じゃなくて、貴方さまは……!?」
驚いたようにあげられる声。
その声で思い出した。そうだ。ヒロインは、
「わ、私は、光属性を持っています。この屋敷の領主さまなら私の後見人になってくれると光の神のお導きに従って来ましたっ!!」
はったりはしっかり大きな声で告げた方が信頼してもらえる。
キミヒカの設定では、ヒロインは光属性を持つ聖女で、世界を滅ぼす闇属性の魔女と戦う使命を持っている。
そんな聖女を後見するとなれば貴族としての格も上がるだろう。しかも、神に導かれたと言えば……。
(初恋の思い出スチルは手に入らなかったけど、学園で会えるのは決まっているし、そこで好感度を育てれば……)
リュカスと結ばれる。
そう自信ありげに未来を想像する。
――そんな物語が始まると信じて……。




