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創造魔法で異世界クラフト無双!~猫耳と聖女と鋼鉄の宴~  作者: Ciga-R


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第21話 封印都市アストリア ― 眠れる創造塔と獣王の系譜

 

 夜明けの風が、砂をさらうように吹き抜けていた。


 廃都を思わせる灰白の街並み――しかし、塔の中央だけはまだ光を放っていた。


 ルーンディナス帝国を目指す一行が封印区画エル・アーク”の次に辿り着いたのは崩れた街門の前だった。


 門の上には古代語の碑文。


 イヴが静かに読み上げる。


《――ここは、“封印都市アストリア”。かつて創造者たちが最後に築いた、祈りと技術の塔です》


「祈りと……技術ね。まるで“宗教系メカニカルシティ”だな。信仰と兵器の悪魔合体ってやつか」


 彼の隣で、リオナが尻尾をふりふりさせながら鼻をひくつかせた。


「うわぁ……空気が甘いにゃ。なんか“古代のごはんの匂い”がするにゃ!」


「リオナ、それは多分……ただのエネルギー粒子だ」


「食べられないのにゃ!? ずるいのにゃ!」


 そんな会話を交わしながらも、街の奥には確かな気配があった。


 静寂と機械音が混ざり合う、不思議な“鼓動”のような振動。


《……感知領域内に、反応複数。人ではありません。――魔導兵です》


 瞬間、遠くの瓦礫が弾け飛んだ。


 銀灰の機兵――古代アストリアの残骸が、青白い光を宿して動き出す。


「来たな、古代RPG名物、“遺跡ガーディアン”か!」


 タイガは嬉しそうに拳を鳴らした。


「アーク・ゴーレム、右腕ユニット、展開ッ!」


 光が爆ぜ、彼の背から黄金の回路が走る。


 同時に、巨大な祈りのゴーレムが姿を現した。


 その背面には、十字架のような紋章と、祈祷文が光の文字で浮かんでいる。


 ――まさしく“神に仕える兵器”。


《制御権、完全同期。タイガ、システムはあなたの意志に応じます》


「了解、イヴ。……行くぞ、“信仰式・クラフトアーツモード”!」


 ゴーレムの腕が祈るように組まれ、光弾が展開される。


 タイガがその動きをなぞると、魔導兵たちの体が光の刃で切り裂かれた。


「よっしゃ、シンクロ率上々――」


 その瞬間。


 リオナが不意に胸を押さえた。


「……あ、あれ、体が……熱いにゃ……!」


 尻尾が逆立ち、耳の根元にある小さな刻印から金色の文様が浮かび上がる。


 それは――虎と獅子の紋章。


《……反応検知。リオナの体内魔力が“獣王波形”と一致しています》


「獣王……?」


《はい。伝承によれば、アストリアの守護者は“獣王の加護”を受けた者――その血を継ぐ者だけが、創造塔を開く鍵を持つと》


 光の奔流が、リオナを中心に広がる。


 その灰銀色の髪が白金色に輝き、瞳が純金に染まっていく。


「……なんだろ。誰かが、わたしの中で――泣いてる気がするのにゃ」


《それは、記憶。あなたの祖......この塔を護り続けたその時代の獣人王国リュカオンその中でも最も偉大なる“獣王シルヴァリオン”のものです》


「にゃ……じゃあ、わたし……王族?」


「お、お兄にゃんの妹にして王族とか、設定過多じゃない? どこのRPGの隠れ設定キャラだよ……!」


 タイガの軽口にも、リオナはただ顔をひきつらせていた。


 光の粒が彼女の周囲に集まり、アーク・ゴーレムの胸部紋章と共鳴する。


同調率(シンクロ)上昇――“獣王リンクモード”へ移行します》


「了解、イヴ! “獣王機構”、解放ッ!」


 轟音が響き、ゴーレムの装甲が変形。


 頭部に獅子の紋章が浮かび、腕部から黄金の炎が吹き出す。


「お兄にゃん、いっくにゃああああッ!」


「よっしゃ、連携スキル発動――“タイガ&リオナ・コンボルート”ッ!」


 光と炎が交錯し、敵群を一掃。


 爆煙の向こうで、古代塔の最上部が静かに光を放つ。


《……塔が、応答しています。封印層解除――“創造者の記録”へのアクセスを許可》


「いよいよ、核心ってやつか」


 タイガが前を見据えた。


 リオナは少し寂しげに尻尾を揺らし、彼の手を握った。


「ねぇ、お兄にゃん。もしこの塔の奥で、“過去の真実”がわかっちゃっても……わたし、今のままがいいのにゃ。お兄にゃんと、イヴと、ごはん食べて、笑ってたいだけにゃ」


「……ああ。俺も同じだ。真実がどんなバッドエンド仕様でも、俺たちで上書きすりゃいい」


 イヴの声が、やわらかく響く。


《――それが、“創造”の意味。過去に縛られず、新しい形を描くこと。……わたしも、あなたたちと見てみたい。未来を》


 そして二人+AIと一機は、光の塔の内部へと足を踏み入れた。


 祈りの声が、どこからともなく響いていた。


『――創造者たちよ。新たなる門を、再び開け』


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