表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、断罪の席で呪いを食べます。副題:王都厄落とし屋は本日も満席/ざまぁは胃に優しい順で  作者: 妙原奇天


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/13

第9話 支払いの皿——協議の秤と一匙ぶんの告白

 朝。

 看板横の**《御用厄整》小札が淡く光り、カウンタには三本の匙**。

 1. 噛む歯をすくう匙 2. 朝の一匙 3. 列匙(白石頭+微鈴)。

 ククは白い星を胸に丸くなる。


 扉の鐘。黒狼隊長エリアスが入ってきて、短く告げた。

「七時間一分。起き際の薄塩は半量で足りた」

「祝。——朝は薄塩が最高のご馳走ですわ」

 彼は頷き、真鍮小札を一瞥した。「王宮内協議だ。代理店エクラが撤退費請求を出してきた」

「皿を並べ替えに行きましょう。支払いの皿を」



 王宮・南の会議室。

 長机の向こう、王妃レオノール。脇に顧問伯ロジェ。

 左側には**《ルクス工房》——工房長バルドと、若手のミリエル**。

 右側は**《エクラ》の取締役と法務。卓上には請求書**。


『撤退費(香幕・幻灯・香糸施工)

『逸失利益(回遊率低下による)

『演出監修費(“聖女体験パッケージ”)』


 私は三つの器を机に置いた。

 白皿(人)/淡薔薇(祈り)/柑橘皮(光)。

 紙の上に、さらに一枚の紙——**“支払い規程 v1.0(案)”**を滑らせる。


支払い対象は人→祈り→光の順に実費のみ。


“外から足す回路”(香糸・低周波)は対象外、違反時は相殺。


“逸失利益”は支払わない。撤収実費は支払う。


検収は数字(呼吸・滞在・騒音)で行う。


映像配信が混ざる案件は原則不採用/返金=辞退を可とする。


 王妃印の余白。「映さない勇気」の一行。


 エクラ法務が鼻を鳴らす。

「伝統的慣行として“回遊率”は対価だ。逸失利益の補填は当然」

 私は数字板の写しを出す。

「河岸では呼吸−18%/滞在+14%/騒音−16%。救護0/転倒0。あなた方の周域では咳・頭痛訴えが散見。低周波一台は無許可で停止済。——人が先です」

 ロジェが静かに続ける。「王妃陛下は市民の眠りを公共財と見なす。“映える奇跡”ではなく」

 王妃が小さく頷く。「支払いは眠りに沿わせる」


 エクラ取締役が声を荒げかけた瞬間、エリアスの列匙が机脚の下で一拍。

 ちり。

 空気が声量2に落ちる。

 私は淡々と続けた。

「撤収実費はお支払いします。逸失利益は皿違い。低周波・香糸分は相殺、違反金は市条例へ。返金=辞退の朱はこちら」


 エクラ法務は歯噛みし、紙をまとめた。

「……撤退実費のみで受領する。今後、香糸は撤去する」

 朱が一つ、静かに押された。



 次は工房。

 工房長バルドが腕を組む。「香糸は伝統の更新だ。代理店に任せたのは早計だったかもしれんが——」

「外から足す路は閉じ、中から薄塩に直すのが更新ですわ」

 ミリエルが一歩、出る。「“列匙”の共同設計を正式に。白石頭+微鈴、軽さの品位で競いたい」

 工房長は逡巡し、王妃の視線を受けて短く吐いた。「列匙部材の納入契約、外部加護混入禁止で。……“映える飾り”は別事業に回す」

 私は薄薔薇を紙の端に一滴。

「検収は拍で。地に一拍で走りが止まる匙だけ、王都規格に」


 契の印が二つ、軽い音で落ちた。



 協議の締めに、私はCSVの見本を示した。

 “支払いの皿(公開台帳)”——列。


項目(人/祈り/光)


実費


違反(香糸/低周波)


相殺


支払額


備考(返金=辞退/朱)


 映さないが、見える。ざまぁは数字で起きる。


 退席間際、王太子が扉口に立った。

 赤い顔、薄い旗。

「光は民のものだ。公表して——」

 王妃の声が静かに遮る。

「光は仕上げ。人が先。本日の協議は了」

 列匙が一拍。ちり。

 短慮は拍で丸くなる。怒号は入らない。



 店へ戻る。

 エクラから撤退実費の振込通知。工房から列匙部材の見積。

 私は**“支払いの皿”CSVを店の壁に貼り、黒狼隊掲示板にも同じものを出した。

 肩カメラは映えずに去る。

 ざまぁは貼り紙**で起きる。


 そこへ、七時間の男が戻ってきた。

 エリアス。

 鎧を外し、列匙をカウンタに置く。

「……一匙だけ、告白してもいいか」

「薄塩で」

 彼は少し笑い、言葉を選んだ。

「**君の“先に礼儀”**を、守りたい。君を守るより、それを。

 ——それが、俺の好きだ」

 一匙ぶんの告白。過ぎない塩。


 私は朝の一匙を半分、白湯に溶かして彼に渡した。

「明日、七時間にもう一分足しましょう。恋はまだ薄塩で」


 ククが星を胸にくると鳴き、列匙の微鈴が小さく答えた。



 夜、帳面に刻む。


本日の記録


王宮内協議:エクラ撤退実費のみ受領/逸失利益0/香糸・低周波相殺/返金=辞退運用


支払い規程 v1.0:人→祈り→光/検収=数字/映さない勇気明記/CSV公開


ルクス工房:列匙部材正式契約(外部加護混入禁止・拍検収)


指標(協議日):広場 呼吸−15%/滞在+9%/騒音−12%(掲示効果)


黒狼隊:掲示板に支払いの皿貼付/転倒0


王太子:公開要求→王妃にて了


エリアス:睡眠7h01m/一匙ぶんの告白


クク:眠り番/列匙微鈴に同調


<次回予告>

エクラの逆噛み記事と工房内の旧派反発。王都南門に**“奇跡巡業”が来る。——列匙と支払いの皿を携え、市外へ。恋はまだ薄塩**、でも拍は二人で一拍に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ