第4話 再び剣を手に
子育て同盟を彼女と結ぶかは保留にしてとりあえず彼女とお茶をすることに。
聞いたところによると彼女の夫は商人でありコランチェとストローンの間にある『ウーンソケット』という街に拠点があるらしい。
だから彼女の家もそちらにある。
今日はたまたま実家に戻って来ていたらしい。
確かそこってリーゼ商会の支部がある所だなぁって思ってたらやっぱりリーゼ商会の支部長さんだった。
「驚いたなぁ。アリスさんがリーゼ商会の会長さんの娘さんだったとは……」
最初はかなり遠慮した喋り方だったクックだが1時間も話すと少しずつ慣れてきたのか砕けた喋り方に変わってきていた。
「まあ、そうは言ってもあんまり実感無いけどね」
「もっとびっくりしたのはあのエミールお兄ちゃんが結婚出来た事だけどね」
「え?もしかしてエミールってあんまりもてない人だったの?」
どちらかというとイケメンではあると思う。
それに結構気も効くし……
「何ていうかお兄ちゃんは女性好きでね。色々な人に声をかける落ち着かない人だったの」
「あー……何かわかる気がするな」
そもそも彼は初対面で食事に誘ってきた男だ。
ナダ女性的にはあまり好ましくない系統。
ただ、チャラついているかと言えばそうではない。
付き合ってみたらわかるが彼自身は自分に自信が無くそれをごまかすために明るく振舞っているのだ。空回りはしているけど……
それにしても、こんなに同性の人と話をしたのは久々だな。
ルイス猟団は男性ばかりだったから物騒な話が多かった。
学生時代の友人との関りは全て切れていた。
ボクは姉を暴行した男を探して殺すつもりだったから家族以外、最低限の関りしか残さなかった。
結局、敵討ちは果たせないままあの男は死んでしまったけどね……
「あの、それでやっぱり将来はその、子どもとか……」
「まあ、多分そうなると思う。ただ、不安もあるかな。この通り、ボクは片腕がこれだからね」
この不自由な右腕も今は十分カバーできている。
それでもこの先、子育てとなると不安は残る。
それに、乗り越えたつもりだけど時々思い出してしまう。
自分が斬ってきた人達の事を。
本当に自分はこれでいいのだろうかと時々考えてしまう。
「あの、さっきの子育て同盟の事だけど住んでいる街も近いし、どうかな?」
「……でもボクなんかじゃあんまり役に立たないかもしれないよ」
「そんな事無いよ。わたしはアリスさんとならいい同盟が結べるって思ってるし、だから……」
その時、キャスリーンさんが部屋に飛び込んで来た。
「大変だ、クック。森に大型モンスターが現れて商人の荷馬車が襲われているらしい」
「!もしかしてあの人の!?」
「わからん。とりあえず商人たちは森の奥へと逃げ込んだようだが……」
クックは顔面蒼白になっている。
モンスターか……ああ、もしかしてこの状況、ボクなら……
「すいませんキャスリーンさん、何か武器はありますか?出来れば軽めの剣とかあればいいんですけど」
「一応あるけど……まさか君、助けに行くつもりか?」
「引退はしたし利き腕はダメだけど左側は生きてます。それに、これでも元は剣聖のひとりだから!!」
ボクに出来る事。それは……困っている人に手を伸ばすこと。
それがレム家のモットー。剣を捨てて数節だけど、やらないと!!
□
キャスリーンさんから剣を借りてモンスターが出たという森へと奔る。
やっぱり長い事戦いから離れていたから以前よりスピードも出ないし体力も落ちているのを感じたけどそうも言ってられない。
壊された荷馬車を発見し追跡を開始する。
目撃情報によるとモンスターは『ベニオウガ』
金棒の様な尻尾が特徴的な二足歩行の獣だ。
肉食性で人も襲って食べるというので迅速な対応が必要だ。
間違いなく商人たちを追跡しているだろう。
傷ついた木の幹や踏み荒らされた植物などひとつひとつ痕跡を見つけていき辿っていく。
そうして5分もしない内に商人たちを追い詰めているベニオウガを発見する。
ベニオウガの階級は中級の危険度2。
かつてのボクなら問題なく一人で狩れた相手。
ただ今は……どれほど力は落ちているかわからない。
「それでも、ボクがやらなきゃ!!」




