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「なんだよ?」

 ナツメは槍状の突起物を、切り裂きながら訊き返す。突起物はすぐに再生し、また攻撃を繰り出してくるので、キリがない。

「——お前の能力を引き上げるのは、あと五分が限界だ。それ以上は、お前の身体が保たない」

「ちょっ。そういうのは、早く言え!」

 ナツメは、無数の槍を巧みにかわしつつ、ボスとの距離を縮めはじめる。

「ミアは大丈夫なのか?スザクって野郎と戦ってるみたいだったけど」

「——案ずるな。お前と同様に、強制的に能力を上げる術を施しておいた。簡単にはやられんだろう」

「そうか……」

 だが悠長にしている暇はない。能力向上のタイムリミットが迫っている。それが過ぎれば、間違いなくジ・エンド。確実に、波動砲を当てるしかない。

 しかし、スザクの時のように、かわされたら意味がない。近距離で撃つ。ナツメは、宙を舞い、ボスの背後を捉える。

「喰らえ!」エリュシオンの刃が消え、代わりに巨大な波動砲が撃ち出される。

 死角から撃ち込んだ波動が、化け物の右半身を飲み込み、ナツメは一旦、距離をとった。

「やった!」

「——いや、まだだ」ナツメの歓喜を、マリーが遮る。

 ボスが苦しげに、叫び声を轟かす。消滅した右半身が、再生を始めた。

「嘘……だろ。あいつ、不死身かよ」

 一体、あの生物はなんなんだ。異業種でもなく、異人種でもなく人間とも、到底思えない。未知の化け物。

「——身をよじって、直撃を防ぎおったな」

 頭の中で、マリーが忌々しげに呟いた。

「——もう時間がないぞ」

「わかってる!」

 その時、再生を終えた化け物が、口を大きく広げた。

「ボクちん、怒ったモンねえぇぇぇぇ」

 口の中から眩い光が放たれる。

「——あれは!?いかん。避けろナツメ!」

 マリーが叫ぶが、ナツメは動けなかった。背後に治療中のキャロルがいたからだ。あの化け物が、ヤバイ攻撃を繰り出すのは、ナツメにも感知できた。当たれば間違いなく死ぬ。だが避ければキャロルが——。

 ナツメは銃口を、化け物に向ける。

「——なにをしている!」

「俺が避けたら、キャロが死ぬ。波動砲であいつの攻撃を打ち返す」

 エリュシオンの銃身から、黒々とした光球が浮かび上がる。

「——いかん。そんなことをしたら」

「悪い、マリー。だけど、キャロは……あいつは、俺が絶対に守る!!」

 化け物が口から、青白く輝く、光波を撃ち出す。

「死んでたまるかあぁぁぁ!!」

 ナツメの放った、渾身の波動砲が、化け物の光波とぶつかり合う。

 凄まじい閃光と、激しい不協和音が、聖堂内の時空を歪める。

「うおあぁぁぁぁぁぁぁ!!」ありったけの、渾身の力を振り絞るナツメ。

「——まずい、このままだと、異世界に亀裂が……」

 異世界?なんだよ、それ。

 マリーの声が響いたあと、ナツメの意識は途切れ、後には暗黒の闇が広がっていた。



「宗介《そうすけ》、早く起きなさい!」

 母の声に、俺は目を開ける。

「いつまで寝てるの。学校、遅刻するわよ」

 母がカーテンを開けると、眩しい朝陽が顔面にブチ当たる。

 しぶしぶ、ベッドから起き出し、洗面所で顔を洗い、テーブルに置かれた、ハムエッグとお味噌汁を食べた後、制服に着替え、俺は夏目家をでた。

 高校は、単純に嫌いだった。そのまま就職しようと思い、進路希望に書いたが、親と、担任は大学に行くべきだと言った。

「夏目。お前はそこそこ頭良いんだし、教養のつもりで大学に行くべきだと先生は思うぞ」

 別に大学に行って、勉強したい事など何も無かったが、進学したら、したらで、モラトリアムのうちに、したいことが見つかるかもしれないと考え直す。

 高校の出席日数はギリギリだった。だから、サボってゲームセンターにいく余裕はない。自分にとって学校とは、ある種、牢獄のように感じられる。他の高校生達はどうか知らないが、少なくとも俺にとっては牢獄だった。

 なんとかその日の授業を終え、帰り道、本屋で好きなラノベやら、文芸本を二〜三冊買った。自他共に認める、オタクな俺のささやかな楽しみ。帰り際、自動ドアの脇に置かれた、ワゴンセールに目をやる。何故か、吸い寄せられるように一本のゲームを手に取った。パッケージのタイトルは『異世界セカイでお宝探ししませんか?』。あらすじを見て、何故か無性にプレイしてみたくなった。

 結局、なけなしの小遣いを使い果たし、ゲームを買った俺は、家に帰るとさっそく、ゲームをプレイし始めた。


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