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「うむ、絶対に避けては通れん」

 ナツメは頷き、ミアに「いけるか?」と声をかけた。今まで黙って話を聞いていたミアは幼く愛らしい顔をほころばせる。

「はい。私はナツメさんとキャロルさんについて行くだけです」

 ナツメはどんなことがあっても、ミアを、キャロを、そしてマリーを死なせたく無いと、固く心に誓いを立てる。

 ——そう、今度は俺がみんなを守る番だ。


 半壊した建物の群れを抜け、三十分ほど歩くと前方の高台に巨大な建築物が見えた。

 外壁が、コケや植物のつるで覆われている。先ほど通り抜けた村らしき場所にあった建物同様、その巨大な建築物もあちこちの壁が抜け落ち、朽ち果てた姿を晒している。

「あの建物さ……なんとなくパラメリアのお城に似てない?」

 キャロルが思いついたように呟く。

 言われれば確かに似ているな、とナツメは双眼鏡を取り出し、城に向かってレンズを向けた。

 全高八十メートル以上はある建物の丸屋根には鐘楼しょうろうが確認できた。

「あれは城ではない。大聖堂じゃ」

 唐突にマリーは横から声をかけてきた。ナツメは双眼鏡から目を外し、マリーを一瞥した。

「……大聖堂?」

「そう、ポロジェニ大聖堂。かつてスイフトに住んでいた人間が信仰しておった『神』を祀るために建てられたものじゃ」

「随分とお詳しいんですね」

 ミアが嫌みのないロリ声を発した。

「まぁ……の。それくらいは把握しとるわ」

 マリーは少し照れた様子で金糸の髪に手をやる。

「あの大聖堂にパンドラの箱があるのか?」

 ナツメが尋ねると、マリーが首を縦に振った。

「聖堂のちょうど中央付近にある、礼拝の間にパンドラの箱が隠されておる」

 いよいよか。俺とキャロルの故郷を破壊した奴が狙っていた遺物。それを先に確保できれば、後はかたきの方から勝手に寄ってきてくれるだろう。

 だが、望みを実現するには、パンドラを守るキマイラと壮絶な死闘を交えなければならない。誰一人、死なせる事なく、だ。

「大聖堂の周囲、二百メートルから完全にキマエラのテリトリーじゃ。一瞬たりとも気を抜くでないぞ」



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