↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/84

マリーの真意 1

 ドロバ湿原はパラメリア王国の西方にあり、面積は正確では無いがおよそ千平方キロメートルほどといわれている。

 パンドラの箱が眠るとされるピエスコ宮殿は、ドロバ湿原と平野部の境目に建てられていた。

 故にナツメ達は、だだっ広い湿原をひたすら踏破するという難事をせずに済んだ。

 マリーに先導されたナツメ達が、ドロバ湿原に到着した頃には、陽は少し沈みかけていた。

「ここがドロバ湿原か……」

 ナツメがポツリと呟く。来るのは初めてだ。湿原には網の目のように板張りの木道が造られていた。

 おそらくは、ピエスコ宮殿や他の遺跡調査をする際にトレジャーハンター達がこしらえたのだろう。

「なんか変な匂いしない?」

 キャロルが鼻をクンクンと鳴らす。

「確かに……すえた様な、妙な香りがします」

 ミアが湿原を見渡しながらキャロルの意見に同意した。

「言い忘れておったが、この辺りの湿地帯にはオニモグラという異形種が頻繁に出没すると聞く。この匂いはそいつらに食い散らかされた人間の死臭かもしれんのぉ」

 マリーの発言にナツメ達はギョッとする。ドロバ湿原にも異形種が出現することは想定していた。だとすると、戦闘は避けられないだろう。しかし考えていてもしょうがない。

「マリー。ピエスコ宮殿はここから近いんだろ?」

 ナツメの質問にマリーはこくりと頷いた。

「うむ。ここから数キロも無い。では、ついて参れ」

 マリーは湿地に敷かれた木道をすたすたと歩きだした。ナツメ達も彼女の後ろに続く。数百メートル進んだ辺りで最後尾にいたミアが「待ってください!」と声をあげた。

「どうしたの、ミーちゃん?」

 キャロルが振り返ってミアを見つめる。

「さっき、何か水が跳ねる様な音がしました。それに動物の気配も……」

 ミアは険しい表情でナツメに視線を送る。猫の音に対する鋭敏さか。俺やキャロルは気づかなかったが、ミアの聴覚は何かを捉えたのだろう。

 次の瞬間、数メートル離れた湿地の泥炭《でいたん》から黒い物体が飛び出した。

 黒い物体はナツメ達の頭上を飛翔して反対側の泥炭に着地し、すぐに姿を消した。

「なに?いまの奴!」

 キャロルが臨戦態勢を取りながら叫ぶ。マリーは落ち着き払った様子で「おそらく、例のオニモグラじゃな」と呟いた。 

 ——早速、お出ましってわけか。

 ナツメはスティレットを抜き、身構える。異形種との戦いは極力避けたいのが本音だ。しかし、走って逃げ切れる保証もない。

「ナッちゃん、危ない!」

 キャロルがナツメに突進し、突き飛ばした。直後、黒い物体がナツメの立っていた地点をかすめて飛んでいった。その動きはまるで飛び魚のようだ。

「助かった、キャロ」

 ナツメが立ち上がると礼を言う。

「ボーとしてたらダメじゃん!」

 ——いや、別にボーとしてた訳じゃないんだけど……。単純に反応しきれなかった。

「ナツメさん、キャロルさん!今、襲ってきてる異形種は湿地帯の泥に潜んでます。おそらく土の中から獲物の隙を見つけて地上に飛び出し狩りをするタイプです」

 ミアが左手の指輪から糸を引き出している。

「私が異形種を捕縛します。キャロルさん!」

「了解のすけ」

 ミアとキャロルが、互いにアイコンタクトを取る。マリーが感心した様子で眺めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。